2018年に登場したさまざまな家電製品の中で、特に注目されたジャンルの1つが軽快に使える「スティック掃除機」だ。
小型で強力なモーターの採用による吸引力の向上や、バッテリーでの駆動時間が延びたことにより、使い勝手が大幅向上したことが人気の理由。従来主流だったキャニスター型掃除機を抑えて、家庭用掃除機のメインになりはじめている。
今回は3万円未満と、3万〜5万円未満そして5万円以上の3つの価格帯で、家電ライター目線でオススメのスティック掃除機を選んだ。2018年末〜2019年始の買い物に合わせて、費用対効果の高いモデルは、あえて販売中の旧型を選んだりもしている。
「使いやすさ」を中心におすすめのモデルを予算別で紹介していこう。
※実売価格表記は原稿執筆時点のアマゾン価格を参考にしています。
手頃さ抜群 2万円以下クラス
「エルゴラピード・リチウム ZB3101」(エレクトロラックス)
実売価格1万6000円前後
「エルゴラピード・リチウム ZB3101」。実機は設置時に自立するように設計してある。
世界的に見てもいち早くスティック掃除機を本格展開していたのがエレクトロラックスだ。エルゴラピードシリーズは、デザイン性の高さから、インテリアショップなどを中心に展開されてきた。
構造上の特徴は、スティック掃除機から、コア機能の「ハンディ掃除機だけを取り外せる」こと。普段はスティック掃除機として使い、ポイント掃除をしたい時にハンディ部分だけを取り外して使える。スティック本体は自立できる構造で、掃除の途中でも気軽に止められるのは使いやすい。
ハンディ掃除機部分を取り外したところ。奥まった部分の掃除や、クルマの車内清掃などに使う際に便利だ。
ヘッド部分が180度水平に動く点、またLEDライトを装備し、床面を明るく照らせるため、床掃除は非常にしやすい。ヘッドのブラシに絡まった毛などを、スイッチを踏むだけで手軽にカットできる便利な機能も搭載する。
使用時はLEDが点灯。部屋の影の部分などを掃除する際に見やすくサポートする。
ウィークポイントをあげると、構造上重心が先端にあるため、本体を持ち上げると実際の重さ以上に重く感じる(重量は約2.4kg)。ワンフロアのマンションなら問題ないが、階段がある戸建てやメゾネットの人は、この点は気にしておいたほうが良さそうだ。
今回紹介した「ZB3101」は2016年発売モデルなので非常にお得に購入できるのがポイント。2017年モデルも2万円台で購入できるが、主な変更点はフィルター周りとデザインなどそれほど多くはない。今のタイミングで買うなら、「ZB3101」のコストパフォーマンスの高さが光る。
「極細スティッククリーナー KIC-SLDCP5」(アイリスオーヤマ)
実売価格 1万9000円前後
「極細スティッククリーナー KIC-SLDCP5」も撮影の都合上こういうアングルにしているが、自立する設計。
スティッククリーナーに静電モップが付属したモデル。約1.4kgの軽量ボディーを採用し、非常に軽く取り回しやすい。
本体がスリムなので、使っていない時も部屋の隅などにサッと立てかけておける。専用の充電台が付属し、置いておくだけで充電できるのも便利だ。
集塵方式としては紙パック式を採用。DCブラシレスモーターにより強力にゴミを吸引し、小型の紙パックにゴミを集められる。サイクロン式と異なりゴミを見たり、触ることなく捨てられるのは、この方式の利点だ。
本体下部に吸い取ったゴミを集める紙パックを内蔵。
「極細スティッククリーナー」の一番の特徴は付属の静電モップだ。棚の上などのほこりを静電モップで集めた後、充電スタンドの下部にモップを差し込むことで、静電気を除電し、吸着していたホコリを吸い取ることができる。静電モップは付属のモップ帯電ケースに入れることで、ホコリを吸着しやすくできる。
静電モップはこのようにケースにしまっておき、サッと取り出して使える。
ホコリを取ったあとは、スタンド下部に差し込んで静電気を除電。そのまま吸い取れば静電モップもキレイになる。
スティック掃除機としてはそれほど高性能なモデルではないが、独自開発の自走式「サイクロンパワーヘッド」を搭載しており、カーペットなどに絡まった糸くずなどもしっかりと掻き出し、砂などの比較的重たいゴミも強力に吸引できる。
低価格ながら、アイデアの光る使い勝手に優れたスティック掃除機だと言える。
性能の個性が光る3万円〜5万円未満クラス
「RACTIVE Air EC-AR2S」(シャープ)
実売価格 3万4000円前後
「RACTIVE Air EC-AR2S 」の実機。
延長パイプやバッテリーなどを装着した状態で約1.5kgと、非常に軽いのが特徴。延長パイプにも軽くて丈夫なドライカーボンを採用するなど徹底した軽量化を施している。背の高い棚の上やエアコンの上など、高所の掃除も腕に負担なく行える。
集じん方式として、遠心分離サイクロンを採用。別売のバッテリーを追加すれば、付け替えることで最長連続約60分の運転ができる。バッテリーは着脱式で、本体の保存場所とは別に充電器にセットして充電する仕組み。スタンドでの自動充電はできないので注意が必要だ。
パイプ部分はドライカーボン製。RACTIVE Airを最初に手に持つと「軽い!」というのがまず強烈な第一印象。
使っていて便利なのが、本体側面にあるラバー製のちょい掛けフックだ。机のかどや椅子の背などに本体を引っ掛けられるので、掃除の最中に家具を動かしたり、床に落ちているものを拾うときなどに役立つ。
また、ヘッドを足で軽く押さえてレバーを引くだけで、ヘッドの取り外しができ、そのまま延長パイプに配置する「スグトルブラシ」でスキマの掃除ができる仕組みも便利。いちいちヘッドを取りはずのにしゃがんだり、本体を持ち替える必要がない。圧倒的な軽さと、細かな使い勝手の良さが魅力のモデルだ。
右上の飛び出たラバーの部分がちょい掛けフック。ちょっと立てかけておく時に使う。
「TORNEO V cordless VC-CL1500」(東芝)
実売価格4万3000円前後
「TORNEO V cordless VC-CL1500」。本体部分はダイソンほどではないが、この中では比較的大きめの部類。
吸い込んだゴミを簡単に捨てられるようにダストビンの中で圧縮する「トルネードプレス」機能を搭載するスティック掃除機。集じん方式として、独自の「バーティカルトルネードシステム」を採用しており、高い吸引力がある。
ハンドルを本体上部後方に配置。好きな姿勢で持てる「らくわざフリーグリップ」は、床掃除の時だけでなく、高い場所を掃除するときなども持ちやすかった。
最大のおすすめポイントは自走式のラクトルパワーヘッドの搭載だ。吸い込み幅が広いため、一度に広い範囲が掃除できる。また、抗菌ブラシを採用しており床に付着する菌の除去にも対応する。ヘッドを簡単に開けて、ブラシを取り外してメンテナンスできるのも便利だった。
持ちやすいグリップの部分。バッテリーは東芝ロゴがある位置に内蔵している。
また、ゴミを吸引するだけではなく排気を利用したエアブロー機能を搭載するのも魅力の一つ。玄関やベランダなどの落ち葉などを簡単に吹き飛ばすことが可能だ。
ただし、最長連続運転時間は約20~25分と短め。まとめて掃除するという使い方にはあまり向かないが、気になった時に気になった部分を掃除すると言った「その都度掃除」のスタイルなら問題は無さそうだ。
まとめると、最新のスティック掃除機と比べると連続運転時間が短め。吸引力は高く、使い勝手は優秀だ。短時間でのお掃除スタイルなら、問題なく活用できるだろう。
ホースとブラシを取り付けると、カーテンレールなどの高い場所の掃除にも使いやすい。
この中で唯一の機能はこのエアブロー機能(下型のノズル)。角度が上下に90度程度変えられるほか、かなり風圧があり、思いの外パワフルな風が出てくる。
「良いモノにこだわる人」向けの5万円以上クラス
「パワーブーストサイクロン PV-BFH900」(日立)
実売価格5万3000円前後
「パワーブーストサイクロン PV-BFH900」。
非常に多彩なアタッチメントが付属し、宅内を「立体おそうじ」できるモデル。集塵(しゅうじん)方式は独自のパワーブーストサイクロンを採用。自社開発の「小型ハイパワーファンモーター X4」により、静音性を確保しながらも高い吸引力を実現している。
「パワーブーストサイクロン」の魅力の一つは、効率的な掃除ができることだ。掃除機の中にはブラシを押しているときや引いているときなど、どちらかしかゴミをしっかり吸引できないモデルもある。この機種の場合は、搭載する「パワフルスマートヘッド」は内部に配置したダブルシンクロフラップが可動することで、ヘッドを進めているときも引いたときもしっかりとゴミを吸い込むことができる。
暗い場所の掃除に便利なライトを装備。
ブラシのヘッドの裏面。長辺に沿って2本あるブルーの部分が「ダブルシンクロフラップ」。これによって、押し引きどちらでもゴミを吸い取ることができる。
そしてもう一つの魅力が豊富なアタッチメントが付属すること。普段はスティックスタイルで充電台に設置できるが、延長パイプを取り外してスマートホースを取り付けることで、キャニスター型掃除機のようなスタイルで掃除ができるようになる。布団やソファ、車のシートなどの掃除に最適なミニパワーヘッドや、引き出しの中の文具などは吸わず、ホコリだけを吸い込めるほうきブラシなど、便利なツールが用意されている。
床だけでなく、部屋中のいろいろな場所をこれ一台で掃除したいというときにおすすめしたいモデルだ。
スマートホースを取り付けるとこんな形に。この状態でもブラシヘッドは回転するので、キャニスター型掃除機的に使うこともできる。
「Dyson cyclone V10 Fluffy」(ダイソン)
実売価格 5万7000円前後
「Dyson cyclone V10 Fluffy」。独特のデザインは個性的で、ファンも多い。
サイクロン式の集じん方法を発明し、世界的にも支持されているダイソンのスティック掃除機。「Dyson cyclone V10」は2018年春に発売された最新のスティック掃除機だ。ダイソンはすでにコード付きのキャニスター掃除機の終焉宣言をしているため、Dyson cyclone V10が事実上の主力だといえる。
新開発の「ダイソンデジタルモーターV10」の実力は十分で、集じん性能は折り紙付き。特にナイロンフェルトの「ソフトローラークリーナーヘッド」はフローリングにしっかり密着し、威力を発揮する。
「ソフトローラークリーナーヘッド」 。ブラシ型のものが多い中で、フェルトのようなローラーで捉える仕組みは珍しい。髪の毛がからみづらいというメリットもある。
従来モデルとはダストビンの向きが変わったことで、吸気がストレートになり、吸引性能も向上。また、サイクロン式ならではの風切り音も小さくなった。標準モードではそれほど気にならず、夜でも使いやすくなっている。V8以降、最長運転時間が最大約60分になったのもうれしい。
発表直後はやや割高感が否めなかったが、2018年末から、6万円を切る価格で販売するショップも出てきた。こうなるとコストパフォーマンスの高さも光る。しかも「ダイソンを使っている」という満足感は他の掃除機では得られないブランドならではだ。
ホース部分を差し替えるとハンディタイプにも変身する。
ただし、「Flufffy」は付属品が少ないため、同価格帯の国産モデルと比べるとややもの足りなさを感じるかもしれない。部屋の高い場所を掃除したい場合や、布団掃除もしたいなら、延長ホースやふとんツールが付属する「Fluffy+」を選ぶといいだろう。
そのデザイン性の高さ故、リビングなど見える場所に出しっぱなしにしていても気にならない。普段過ごしている空間に置けるからこそ、気になったときにさっと掃除ができるのだ。高い掃除性能にくわえて「自慢できる」要素も兼ね備えた掃除機といえる。
(文・コヤマタカヒロ、写真・伊藤有)
コヤマタカヒロ:デジタル&家電ジャーナリスト。デジタル関連やシロモノ家電を対象に、製品、サービス、ビジネスまで幅広いジャンルで執筆活動を展開。モノ雑誌やWebメディアでの連載も多数。
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