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- イギリスでは、食料の80%を輸入に頼っている。これには、にんじんや紅茶といった基本的な食料も含まれている。
- 合意なきEU離脱の下では、「いかなる景気低迷も、トラックやドライバー、食料の不足につながるだろう」とHSBCはクライアントにアドバイスしている。
- イギリスの冷凍食品の貯蔵施設の使用率はすでに100%に達している。
"合意なきEU離脱"に向けて、イギリスは準備が整っていないかもしれないが、HSBCのリテール・アナリストたちは準備万端のようだ。そして、彼らは大半の人が思っている以上に状況は悪くなるだろうと指摘する。
1月3日付の顧客向けの調査メモの中で、HSBCのアナリスト、デビッド・マッカーシー(David McCarthy)氏と同氏のチームは「イギリスでは、食料の50%を輸入に頼っていると広く考えられている」と書いている。そして、YouGovの最新の世論調査によると、保守党員の76%が、合意なきEU離脱に関する警告は「誇張された話もしくは作り話で、合意なきEU離脱となっても実際には大した混乱は生じない」と考えていることが分かった。
50%という数字は、実際よりも低いとマッカーシー氏は言う。実際は「食料の80%が輸入されたものだ」と、同氏は書いている。これは「原材料が輸入されている可能性があるにもかかわらず、イギリスで加工した食料はイギリスで生産されたものだと認識しているからだ。例えば、紅茶はイギリスで製造されているが、イギリスで茶葉は育てられていない —— 全て輸入されたものだ。原材料を輸入食品とカウントすれば、実際の数字は80%以上になる」という。
イギリスの現在の関税をめぐる取り決めが機能しなくなれば、食料不足は数日中に起こるだろう。「11月に開催した我々のチェアマンズ・カンファレンスで、ある元CEOが述べたように『木曜日に(イギリスの)スーパーで売られているにんじんは、スペインで月曜日に収穫されたもの』なのだ」とHSBCは書いている。
もちろん、にんじんは冷やしておけば新鮮なままだ。だが、複数の報道によると、イギリスの冷凍食品の貯蔵施設の使用率はすでに100%に達している。「最悪のケースに備えて、イギリスでは小売業者や卸売業者たちが在庫を蓄積していて、冷凍食品の貯蔵施設で使われていないところはないと報じられている」とHSBCは述べた。
ドライバーもおらず、食料もない
状況はさらに悪化しそうだ。「食品業界の多くが外国人労働者を雇っていて、労働力不足が業界に深刻なダメージを与える可能性がある。例えば、イギリスで不足している重量物運搬車(HGV)のドライバーの多くは、中央ヨーロッパから来ている。2017年の我々のCEOフォーラムで、あるCEOが述べたように、『自由な労働の移動が止まり、トラックのドライバーが母国へ帰ってしまえば、イギリスの流通は半分に減るだろう』」と、マッカーシー氏のチームは書いている(Business Insiderでは、HSBCにさらにコメントを求めたが、回答は得られなかった)。
「サプライチェーンは細かいバランスで成り立っている中、いかなる景気低迷もトラックやドライバー、食料の不足につながるだろう」
もちろん、HSBCのチームは明るい兆候も見出している。チームは、イギリスの主要な食料品店の中でも、テスコ(Tesco)がこのカオスに最もうまく対処できるだろうと見ていて、同社の株を「買い」としている。
(翻訳、編集:山口佳美)