ハーレー初の電動バイクの市販版「LiveWire」。価格は2万9799ドル。2019年冬に北米で発売開始。事前予約がすでに始まっている。
116年の歴史をもつアメリカの二輪メーカー、ハーレーダビッドソンは1月7日(現地時間)、ハーレー初の電動バイクの市販版「LiveWire」をCES2019で正式披露、事前予約の開始をアナウンスした。注目の価格は2万9799ドル(約323万7000円)。北米での出荷開始は2019年冬で、そのほか一部のグローバルマーケット向けの発売予定も後日アナウンスされる。
この発表が驚きなのは、現地時間7日朝に開催されたパナソニックのプレスカンファレンスで公表されたことだ。これには、LiveWireがハーレー初の電動バイクであるだけでなく、コネクテッドバイク(携帯の通信機能を内蔵したバイク)としての機能も持っていることが関係している。
コネクテッドバイクの通信技術をハーレーに提供
左はハーレーダビッドソンの副社長で、コンシューマーポートフォリオマネージメント担当のマーク・マカリスター氏。右はパナソニック ノースアメリカのチェアマン&CEOのトーマス・ゲッパート氏。
パナソニックは、LiveWireをPanasonic Automotiveとしてサポートし、自社のコネクテッドサービスプラットフォーム「One Connectシステム」を提供する。
LiveWireはこれによって、以下のようなネットワーク機能を実現する。
ハーレーのH-DアプリのH-D Connectサービスを通じて、バッテリーの充電レベルや走行可能距離、または充電完了までの時間を表示。ライダーはこれらの情報を、スマホアプリを通じてどこにいてもチェックできる。
・不正利用の警告と、盗難時の車両位置の通知
LiveWireを駐車した場所を知らせるほか、駐車中のイタズラ(振動や、不正な移動など)も知らせる。またGPS機能によって、盗難時には車両の移動状況も追跡できる。
・車両のメンテナンス情報の通知
H-Dアプリを通じて、メンテナンス時期を知らせたり、車両のケア情報の通知も行う。
ハーレーの公式発表によると、LiveWireは満充電での航続距離110マイル(約177km)、0-60マイル加速(0-96.5km/h)を3.5秒以内で完了する俊敏な加速性能を持っているという。
盗難警告。二輪は盗難の対象になりやすいものでもあるため、こうした機能がほしいというユーザーは多いはず。エンジン車に比べて桁違いに容量の大きいバッテリーを積むEVなら、通信機能を常時オンさせておいても現実的に使える。
充電完了間近になるとこのような通知も。ピュアEVなどでは標準的な機能の1つ。
こういった発表がCES2019の場で行われたのは、複数の意味で象徴的だ。
1つは、独特のサウンドとフィーリングを持つVツイン型エンジンを大切にしてきたハーレーのような趣味性の強い伝統的なメーカーも、世の中のEV化の流れを受けて、EV車のポートフォリオを持たざるを得なくなってきたこと。
もう1つはその市販版お披露目を、自動車ショーではなくテクノロジーの祭典であるCES2019の場で行ったこと。タイヤの数こそ2つだが、コネクテッドバイクとして実現しようとしている世界観は、テスラなどの自動車のピュアEV勢に近いものだ。
LiveWireの特徴的なライトまわり。重厚でマッスルな既存のスポーツ系のハーレーとは路線の違うイメージだが、走行音以外に「電動らしさ」をまったく感じさせないところにはデザインの巧みさを感じる。
背後から。パワートレインが右側で、チェーンではなくベルトドライブなのはハーレーらしい。通常はエンジンが収まるフレーム内には、エンジンの空冷フィンのようなデザインのボックスが収まる。ここにバッテリーを詰め込んでいるのだろうか。エンジン下部にマフラーのような意匠を採用しているのも二輪メーカーのこだわりを感じる。
(文、写真・伊藤有)