「決してあきらめないのが、沖縄人の生き方。平和的に、民主主義的に、というのも沖縄のやり方。(辺野古の新基地建設反対を)引き続き、訴えていく」
ハワイ在住日系4世のミュージシャン、ロバート梶原氏(32)は1月7日、寒空の下、米ワシントンDCのホワイトハウス前で、淡々と語った。
ローラもりゅうちぇるもブライアンも
辺野古土砂投入反対の署名活動を始めたロバート梶原氏(左)。署名の進捗や辺野古の現状を毎日YouTubeで発信している。
「アメリカ人に引き続き、辺野古の問題を理解してもらうこと、そして沖縄の人には、世界中に新基地反対をサポートする人々がいることも知ってもらいたい」
梶原氏は2018年12月8日に、防衛省による沖縄・辺野古の海への土砂投入停止を訴え、ホワイトハウスが設ける請願サイト「We The People」を利用し、新基地の是非を問う2月24日の県民投票まで、工事停止をトランプ米大統領に求める署名を始めた。同サイトは、30日以内に10万署名を集めれば、ホワイトハウス内で検討され、60日以内に回答が来るという仕組みだ。
署名の訴えはソーシャルメディアであっという間に広まり、10日間で10万人を達成。
日本ではタレントのりゅうちぇるやローラが署名を呼びかけ、1月6日には、Queenの伝説的ギタリスト、ブライアン・メイが梶原氏の訴えをリツイート。1万5000回以上リツイートされている。
署名は1月7日午後4時(米東部時間)現在、19万5700人超に到達し、引き続き受け付けている。
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「民主的に自分たちの意思を示そう」
10万を超えれば署名が届けられる期限の30日を迎えた1月7日、トランプ大統領により近いところで訴えようと、梶原氏と市民運動団体はホワイトハウス前で集会を計画し、約30人のサポーターが集合した。
参加者らは「トランプ大統領、私たちに答えてください!請願署名は19万以上集まりました!沖縄・辺野古の新米軍基地建設にNO!」「#StandWithOkinawa」などという垂れ幕を掲げ、梶原氏は集会の様子をライブストリーミングした。
てい子・トゥーシーさん(中央)は、アメリカ人にも当事者として考えてほしい、と訴えた。
梶原氏は集会後の会見で、トランプ大統領、国務長官などの閣僚、上院議員や、ナンシー・ペロシ下院議長などに、署名の結果を伝える書簡とeメールを送ったことも明らかにした。
「この署名が達成したことをとにかく伝えたくて、100通以上の書簡を送りました」
ホワイトハウスからは、受信の確認メールが来たという。
2月24日に行われる新基地の是非を問う沖縄県民投票に向けても、梶原氏はソーシャルメディアなどを通して投票を呼びかけていく。
「民主的に自分たちの意思を示すことを促していきたい。多くの沖縄県民が基地に反対している。基地に反対しているということを、投票によってみせる時だ」
集会に参加した「平和を求める元軍人の会」ワシントン支部のフランク・デラ−ペーニャ氏(77)は若い頃、辺野古にある海兵隊基地キャンプ・シュワブに1年間駐屯していた。
「兵舎を出るとすぐに大浦湾があり、裸足で海に入っていくと、美しい海藻が海底を埋めていた。私たちの訓練エリアは、それは美しく、毎日ナショナル・ジオグラフィックの写真を見ているみたいだった。
私の懸念は、新しい基地によってその海が、サンゴ礁が破壊されていくこと、そして基地からの毒で汚染されていくことです。さらに、美しい海がなくなった時に、地元の人にもたらされる混乱や喪失感が心配です。もはや平和や静けさがなくなるということです」
ニューヨーク沖縄県人会顧問のてい子・トゥーシーさん(77)も、集会でマイクをとり、こう訴えた。
「沖縄からアメリカに移住したとき、基本的人権と自由が空気のように存在していたことに感謝した。何か問題があれば、それが明白にされ、公開されるという、アメリカの尊厳に感謝しています。
そうであれば沖縄の問題は、日本国内だけの問題ではありません。日本全体にある米軍基地のうち73%が、沖縄に集中している限り、アメリカも当事者なのだから、署名を通して、ウチナンチュ(沖縄人)の声を聞くときが来た。それこそが自由を求めるというものです」
梶原氏は、母方が沖縄県中城(なかぐすく)村出身の日系4世。子どもの頃から、祖父母から沖縄の文化と歴史を聞き、自らを「オキナワン・ハワイアン」と呼ぶ。辺野古も何度も訪れ、会見中も「チバリヨー(がんばれ)」と、ウチナーグチ(沖縄の方言)で、沖縄の人に支援を送った。
(文・写真、津山恵子)