Pepcom
世界最大級のテクノロジーショー、CES2019がラスベガスで開幕した。会期中にいくつか開催される併催イベントの1つ、Pepcom主催の「Digital Experience!」は、ここ最近のテックトレンドを体現したようなブース展示だった。
特に印象深いのは、AIを使ったさまざまなプロダクト、スタートアップ製品、そして自動運転の市場拡大を感じさせるLiDAR(レーザーや光を使うレーダー)などの関連技術展示もあった。
LiDARのメーカー、「Velodyne LiDAR」の展示。画面には、会場内の状態をリアルタイムスキャンした映像が写っている。
WaveSense社の技術展示。VHF帯のレーダーを使って、地表下をスキャンし、マップと照合することで車線のセンターを認識して走行できる。ステレオカメラなどを使った車線認識と違い、降雪などで白線が見えなくなっても車線を捉え続けることができるという。
ここでは、特にユニークな特徴をもつ5つのプロダクトを紹介する。
P&Gのベンチャー部門が開発するビューティーテック「Opté」
「Opté Precision Skincare System」の参考展示。ブースには使い方がわかるデモ機もあった。
テックイベントにP&Gの取り合わせは新鮮。企業を取り巻くビジネストレンドの変化も感じる。
大企業のCVCによるベンチャー投資の事例が増える中、Digital Experience!に一般消費財大手、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のP&G Venturesが出展。なお。同社はCES2019にもブースを出展している。
「Opté Precision Skincare System」は、皮膚のそばかすなどの色素沈着を、スキャン・検知して修復できるデバイス。
仕組みとしては、青色LEDを使った光でまだ目立っていない色素沈着の大きさや強度などをスキャンし、修復が必要な箇所にインクジェットプリンターのようにごく微量(10億分の1リットル)の薬液を付着させる(リリース文より)。いわゆる美顔デバイスの1つとも言えるが、テクノロジーを使ったアプローチが新鮮。
担当者によると、まだ開発中のテストマーケティングの段階のため、想定価格などは一切未定。製品化にたどり着くのは、2019〜2020年頃ではないかとのこと。
自動追尾するAIスマートカメラ「OBSBOT Tail」
赤いカメラが「OBSBOT Tail」。台座部分、アーム部分でそれぞれサーボの軸があり、カメラ部分は360度回転しながらの被写体追尾が可能。
マシンビジョンや音声認識などの、いわゆるAI技術を取り込んだプロダクトが近年増えている。CES2019の時期に合わせてデビューしたOBSBOTのAIスマートカメラ「Tail」は、人物認識技術によって、被写体を自動追尾。固定カメラではフレームアウトしてしまうようなダンス練習や、歩き回る子供の撮影を、カメラが自動追尾して勝手に追いかけてくれる。
追尾対象の設定は、スマートフォンアプリに写った人物をタップするなどで簡単に設定できる。
すでにYouTubeには先行レビューと思われる動画が公開されており、信じられないほどスムーズな追尾をしている。会場に展示されていた実物もそれと同様、遅延などを感じさせない動きだった。なかなか期待できそうな面白いスマートカメラだ。
カメラ部分の性能は、4K 60FPS、カメラは3軸のメカニカルジンバルで保持されており、360度回転が可能と、撮影自由度も高い。
AIの処理にはファーウェイの半導体子会社であるHiSilicon製のHi3559Aというチップを使っている。
2019年1月15日からKickstarterを開始する予定、価格は450ドル程度という。
アマゾンのAlexaと連弾できる、ローランドの電子ピアノ
ロゴ下にある「alexa built-in」の文字が目をひく。
音声AI対応は生活家電の大きなブーム。CESではここ数年、冷蔵庫、洗濯機、調理器具などさまざまな生活家電が「OK, Google」や「Alexa」で動くようになってきた。ローランドが開発中の「GO:PIANO with alexa built-in」はAlexa内蔵の電子ピアノ。
いくつか見せてもらったデモでは、音声で収録済の楽曲を演奏させたり、音色を変えたりのほか、「左手で弾いて」と言うと、ある楽曲の左手担当部分のみをAlexaが弾いてくれた。自分は右手だけを演奏すれば、Alexaと片手同士の連弾ができたりする。2019年秋の発売予定で、開発中のため価格は未定。
音声AI対応にする必要があるの?という気もするが、ボタンやツマミで操作性が複雑になるくらいなら、語りかけるだけで一定の機能が使える、というのはマニュアル要らずという意味で確かにアリかもしれない。
ペットのためのスマートロック「Wagz GO SMART DOOR」
自動エサやり機のほか、ペットカメラ、スマートカラー(首輪)などのスマートペット製品を展開するWagz。
「GO SMART DOOR」。カメラ機能も付いていて、ペットが出入りしたときの様子が確認できる。
自動エサやり機などのスマートペットテック製品を開発・販売するWagzのプロダクト「GO SMART DOOR」。ペット(犬)向けのスマートロックで、センサーに反応するスマートカラーを犬に装着しておくことで、自分のペットだけが出入りできるペットドアになるというもの。
人間向けのスマートロックと同じようにスマホでの操作やログ表示のほか、内蔵カメラによる撮影にも対応。任意の時間は開かない(ペットが出ていかない)ように、時間帯設定でドアをロックしておくこともできる。
現在プレオーダー受付中で、価格は549ドル(約5万9700円)。2019年3月に出荷予定。
元フェラーリのデザイナー、ケン・オクヤマ氏が手がける高級マッサージ機
高級マッサージ機を手がけるDreamWave社がCES2019に合わせて送り出した最新製品。フェラーリのデザイナーとして活躍したケン・オクヤマ氏がデザインを担当。マッサージチェアにあまり馴染みのない北米だが、住宅の広さから設置スペースは十分にある。デザイン性の高さで、富裕層にアピールする狙いがある。
チェアの側面にもケン・オクヤマのネームプレートが付いている。
一般的なマッサージチェアにあまり見られない点としては、両サイドがクルマのドアのように左右に開く設計になっていること。シニア層の場合、こういったチェアは通常のイスより深く、包まれるように座ることになるため、体を起こしたり、出入りが難しいためだという。ハイエンド機種のため、価格は「日本円で100万円ほどになる」(関係者)とのこと。すでにプレオーダーは開始している。
(文、写真・伊藤有)