テスラ車がロボットを「轢き殺した」動画が話題に。前途多難なイーロン・マスクの2019年

テスラ イーロン・マスク

2019年1月7日、中国・上海で行われた「ギガファクトリー」の起工式に参加した、テスラのイーロン・マスクCEO。中国の新エネルギー車(NEV)シフトを加速し、テスラの業績向上への起爆剤となるか。

REUTERS/Aly Song

米電気自動車(EV)メーカー、テスラの上海工場「ギガファクトリー」の建設が1月7日、ついに始まった。イーロン・マスクCEOは起工式に参加し、新工場は年間最大50万台を生産できる設計で、2019年末にも「モデル3」の生産ラインを稼働させることを明らかにした。新華社通信によると、プロジェクトには総額70億ドルが投じられるという。

これまで自動車分野では外資の単独での進出を認めてこなかった中国が、2018年春に新エネルギー車(NEV)について規制を撤廃。その後、想定外の米中貿易戦争が始まったにもかかわらず、テスラは奇跡的にも無事に単独での工場設立にこぎ着けた。

トランプ政権に「免税」を懇願

テスラ モデルX

上海のショールームに展示されたテスラの「モデルX」。高価格モデルはアメリカで生産し、普及型の「モデル3」などを新工場で生産する計画だ。

REUTERS/Aly Song

2018年は資金繰りで倒産寸前とまで報じられたテスラ。マスクCEOがポッドキャストの番組出演中に大麻を吸引したことが報じられ、株価が下落する騒ぎもあった。同時期、株式非公開化をほのめかすツイートで米証券取引委員会(SEC)から提訴され、和解のために会長職を辞任するなど、向かい風にさらされ続けた1年だった。

悲願の上海工場の建設開始で、2019年はついに追い風が吹くのか。と思いきや、年始からマスクCEOの足を引っ張る報道が相次いでいる。

まずは、ロイターが年明け早々、テスラがトランプ政権に中国製品への25%追加関税を免除してもらえるよう申請していたことを報じた。

「モデル3」の頭脳とも言えるコンピューターは中国製(サプライヤーは明らかにされていない)で、関税によるコスト増はテスラの経営を揺るがしかねず、しかも、必要な品質・数量ともに代わりのサプライヤーを探すのは困難だという。

本件、トランプ大統領の反応はまだ明らかにされていない

CES2019会場でロボットを轢き殺した?

続いては、ラスベガスで開催中の家電見本市「CES 2019」でのアクシデント。会場内へと運搬中の展示用ロボットを、自動運転モード中の「モデルS」が“轢き殺した”という。

デイリーメールによると、ロボットは自律走行して展示ブースへ向かっていたが、道を外れて駐車場に入り込んだところ、走行中のテスラに衝突され、修理不可能とみられる状態に陥ったそうだ。同記事は、「テスラを自動運転モードにして動き出したら、うわ、ロボットが路上にいるじゃないか!」という運転手の声を掲載している。

しかし、アメリカの新エネルギー車専門メディア・エレクトレックは、この報道を「明らかにフェイクニュース」と批判。テスラの搭載するオートパイロットシステムはいわゆる自動運転ではなく、あくまで運転手をサポートするための機能であることを解説した上で、高速道路や基幹道路での使用を目的としたもので、そもそも駐車場で使えるわけがないと指摘している。

SNSでは、このアクシデントはロボットを開発するロシア・プロモボット社のPR戦略の一環で、メディアがまんまとノセられただけではないかとの声もあがっている。動画を見ると、ロボットの登場する位置はきわめて不自然だし、駐車場でオートパイロットシステムを使う運転手などいるのか、確かに疑うべきところが多い。

「テスラ・キラー」中国のライバルが台頭

BYTON M-Byte

中国のEVベンチャー、BYTONがCES2019に出展した「M-Byte」の車内。49インチのワイドスクリーンが印象的だ。写真では見えないが、サイドミラーはカメラに置き換わっている。

REUTERS/Alexandria Sage

ちなみにCES 2019では、テスラの強力なライバルとされる中国のベンチャー、BYTONが発表したSUVタイプのEV「M-Byte」に注目が集まっている。

CNBCなどによると、航続距離は250マイル(約402キロ)以上で、ダッシュボードからは計器類が消え、広々とした49インチのワイドスクリーンが搭載されている。音声やジェスチャーによる操作も可能。発売時には自動運転レベル3(自動運転モード時にはクルマの責任においてすべての操作が行われる)に対応する。

注目の価格はテスラの「モデル3」同等の4万5000ドルからで、現状の仕様が発売時に問題なく実現されれば、次世代モビリティとしてテスラ並み、あるいはそれ以上の評価を受けることになるだろう。ドイツの有力紙ディ・ヴェルトはすでに、このM-Byteを「テスラ・キラー」と命名している。

ヨーロッパでテスラへのニーズ拡大

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カリフォルニア州ホートーンで、報道陣らに囲まれるマスクCEO。新たな地下交通システムを構築するためのトンネル採掘会社を設立した際のお披露目イベントにて。2019年もその一挙手一投足に注目が集まることだろう。

Robyn Beck/Pool via REUTER

相変わらず向かい風にさらされ続けるテスラだが、良いニュースもなくはない。

前出の専門メディア・エレクトレックによると、2018年だけでそれぞれ8500台前後のテスラ車を購入しているオランダとノルウェーで、さらなる市場拡大の動きがあるようだ。

米レンタカー大手AVIS(エイビス)が、ノルウェー支社で300台弱を一挙に調達。生産が追いつかずなかなか手に入らないテスラ車を、レンタカーで満たそうとしているという。

エレクトレックは同記事で、テスラなどのEVを借りられるレンタカー会社が少なすぎるので、市場拡大のためにも「いっそのことテスラはレンタカー会社を自前でつくったほうがいいのでは」との大胆な提言を行っている。テスラはそれどころではないだろうが。

同社の株価(米国時間1月8日時点)は335ドル、時価総額は576億ドル(約6兆2700億円)。いろいろあったが、1年前とほぼ同水準に戻している。吹くのは相変わらず向かい風、そんな中だからこそますますファンの熱狂度が高まる。そんな押したり引いたりの構図は2019年も続きそうだ。

(文・川村力)

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