実家暮らし手取り20万円、年金は数万円…僕は会社を辞めて専業投資家になった

ネット投資家

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「投資なんてよく分からないし、損をしそうで恐い」

2018年末からの株価急落を見て、改めてそう感じた人も多いかもしれない。しかし、預金しても金利はほぼゼロ。年金制度への不安は高まり終身雇用も崩れ、「将来に備えるには投資しないことの方がリスクだ」と考える若い世代が目立ち始めた。

何を思い、大事なお金を投じるのか。それぞれのスタイルで投資に向き合う20~30代の3人に聞いた(名前はすべて仮名)。

「親のスネかじりながら」貯めた30万円、アベノミクス相場に賭けた

ケンイチさん

少し前に仕事を辞め、専業投資家になった30代のケンイチさん。情報収集に、株式や投資信託の売買に。若い世代にとってスマホは投資に欠かせないツールだ。

「働いていたころの手取りは月20万円前後。何とか預金にお金を回してもほとんど利子はつかないし、送られてきた『ねんきん定期便』を見たら将来もらえる金額は月数万円だと。これでは生活が成り立たない。もともとそんなにリスクをとるようなタイプの人間ではないんですが……」

少し前に仕事を辞め、専業投資家になった30代のケンイチさんは淡々と話す。

大学院に進んだが、いろいろ回り道をしているうちに「ふつうの就職」は難しくなり、派遣社員などとして働いた。単調な仕事や賃金の低さにストレスがたまるばかりだった。

そんな時、どん底だった株価がアベノミクス効果で上がり始めた。以前から経済ニュースに関心があったケンイチさんは「明らかに上昇基調に入った」と判断した。

実家で同居する「親のスネをかじりながら」(ケンイチさん)貯めた30万円ほどを元手に、ネット証券の口座を開いて株式投資をスタート。働いていた間は給料のほとんどを投資に回した。

バフェット氏の本や日経で独学、専業投資家には「結果的に」

お金とスマホ

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配当利回りが高い大企業などの株式に中長期的に投資する一方、相場の流れを見ながら短期売買も手がける。投資手法はウォーレン・バフェット氏といった有名投資家の本や、日経新聞などを読み自力で学んでいる。

資産は1000万円単位に膨らんだが、頼りにしてきた親も年金生活に入った。「趣味は投資」と言い、市場が休みの日も投資関連の本を読むなどして過ごし、息抜きは近所の散歩くらいだ。株式の配当金で余裕を持って暮らせる水準と考える「資産1億円」を、当面の目標に置く。

このような生き方を他人にも勧めたいわけではない、という。

「仕事をしていて安定収入がある方が、投資でも、より大きなリスクを取れるので有利ですから。自分はたまたま会社勤めに向いていませんでした。結果的に投資家として生きている、というだけです」

王道の長期分散投資「それではつまらない」

アヤさん

30代のアヤさん。「『楽しいから』『ほかの投資家と交流できるから』というのが投資をやっている理由」だという。

とくに初心者にとって、投資の王道とされるのは長期分散投資だ。少額から買うことができ、株式だけでなく債券や不動産などいろんな資産に間接的に投資できる「投資信託」への積み立て投資が代表例だ。いざという時に損失を被るリスクを分散し、比較的安定した収益が期待しやすい。

「それではつまらない。『楽しいから』『ほかの投資家と交流できるから』というのが投資をやっている理由なので」

そう言い切るのは、医療事務の仕事をしている30代のアヤさん。2018年2月、世界同時株安で株価がいったん大きく下がったのをきっかけに、株式投資を始めた。

趣味はシューティング系のオンラインゲーム。そこでやりとりしていた年上の男性から株式や仮想通貨に投資しているという話を聞き、「自分もやってみたい」と伝えたら、投資をテーマにしたコミック「インベスターZ」を勧められた。すぐにネットで全巻読み通した。

「おもしろそうだな、と思いました。ただ預金していても、為替相場が動けば実質的な価値は増えたり減ったりする、とか。投資を始めたのは、そういったこれまでかかわったことのない世界を知りたい気持ちが強かったから」

大もうけ願望はなし、「オンラインゲームと同じくらい楽しい」

株価下落。

株価が下がった時は投資のチャンスでもある。ただ、そのタイミングを見極めるのは難しい。

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万一働けなくなったら?両親の介護は?将来に漠然とした心配があることは確かだが、差し迫った「お金の不安」があるわけではない。給料はそれほどでもないけれど、独身で実家暮らしだし、それなりに預金も増えた。投資の元手が少ないこともあり、「大勝ちしてやろう」という下心はない。

「株なら、勉強してある程度ちゃんとした銘柄を買っておけば、そんなにすごく減ることはない。むしろ増やすこともできるのでは、と。年金はあまりもらえなさそうなので、定年後は配当金で暮らせるくらいになれればいいな、と思っています」

口座を開いたスマホ証券「スマートプラス」のリアル交流イベントに参加し、年齢も性別もさまざまな投資家たちと知り合った。LINEグループをつくって株価の予想合戦をしたり、月に何度か食事会を開いたり、近場に登山に出かけたりすることもある。

そんな仲間たちと「有望企業はどれか」といった情報を交換しながら、いろんな投資手法を試行錯誤している。多くて数万円単位の利益や損失に一喜一憂する日々だ。スマホで取引するのは昼休みや寝る前の時間などで多くても1日2、3時間。

「投資はオンラインゲームと同じくらい楽しい。でも、使う時間は今でもゲームの方が長いですね」

もう会社や年金には頼れない。「給料以外の収入を確保しないと」

ユータさん

20代のシステムエンジニア、ユータさん。とても堅実だが、働いて稼いだお金をコツコツ貯めるだけでは「むしろリスクが高い」と言い切る。

「短い期間でもうけようとすると、ハイリスクな商品に手を出して失敗することが多い。若い世代は、投資において重要な『時間』を味方にできるのが強みです。それなのに仮想通貨はみんなやっていても、投資信託や株式を買う人は少ない。矛盾していると思います」

IT企業でシステムエンジニアとして働く20代のユータさんは、積極的に投資に取り組む一方で、とても堅実な考えの持ち主だ。

本格的に投資を始めたのは2017年の春。投資信託や、高配当の個別企業の株式などに、月20~25万円の手取り収入の中からだいたい3~4万円ずつ資金を振り向ける。長期保有が基本だ。

週末には証券会社などが開く投資関連のイベントをのぞいたり、世界経済の流れをつかむための教養書を読んで勉強したり。投資の世界の「優等生」だ。

そんなユータさんも社会人になりたてのころ、シャンプーやリンスを扱うマルチまがいの商法に引っかかりそうになった。ある勉強会で知り合った人に誘われ、20万円の初期費用を支払う直前に自分で「やっぱりおかしいぞ」と気付いて損はせずに済んだが、「もっとお金について勉強しないダメだ」と痛感した。今、その経験が生きている。

堅実なユータさんだが、働いて稼いだお金をコツコツ貯めるだけでは「むしろリスクが高い」と言い切る。

「今後、自分の給料は上がっていくと思いますが、年金などの社会保険料や医療費の負担も増えていくでしょう。会社からもらうお金と将来受け取る年金だけでは、老後も含めて余裕のある生活をするには足りません。給料以外の収入を確保するのが大切だと思います」

(文、写真・庄司将晃)

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