CES2019のメイン会場、LVCCの屋外に設置されたグーグルの巨大ブース「Google Assistant Playground」。
グーグルはCES2019で、Googleアシスタントの新機能などを発表した。担当者によると、Googleアシスタントを搭載するデバイスは1月中に10億台を突破する見込み。アクティブユーザーも前年比4倍まで増えており、対応言語数は8から30言語に、利用可能な国と地域も14カ国から80カ国に拡大されるという。
CESで繰り広げられる家電プラットフォーム戦争
アマゾンは2018年同様、CES2019の会場内に専用ルームを設置。グーグルに比べると地味な印象だ。
世界最大級の家電見本市であるCESではここ数年、音声認識アシスタントがIoTやコネクテッドカーと並んで話題の中心だ。
2017年のCES2017ではアマゾンのアレクサ対応の家電製品がメーカー各社のブースで一斉に展示され、「アレクサ祭」とでも呼びたくなる状況に度肝を抜かれた。
当時、日本ではまだスマートスピーカーは発売されておらず、音声アシスタントを使って家電を操作することに、ほとんど馴染みがなかったからだ。
その年の秋には日本でも「Echo」や「Echo dot」などが発売され、さらにその少し前にはGoogleアシスタント対応の「Google Home」、LINEの「Clova WAVE」と合わせ、一気に3つのプラットフォームが選べる環境となった。
それからすぐの開催だった2018年のCES2018では、グーグルがメイン会場となるLVCCの中心部に巨大なブースを設置。Googleアシスタント対応製品を展示する各メーカーのブースにもスタッフを派遣したほか、ラスベガス中に「Hey Google」の広告を展開するなど、目立ち方でAmazonを圧倒した。
なお、同社はCES2019でも引き続き、遊園地のようなアトラクションも備える巨大ブース「Google Assistant Playground」を構えている。グーグルがここまでCESでのプロモーションに力を注ぐのも、その背景にアマゾンとの熾烈なプラットフォーム争いがあるからだ。
メーカー毎に違うグーグル・アマゾンとの距離感
「Google Assistant Connect」活用例として、電子ペーパーを用いたマグネット型のデバイスも紹介された。Googleアシスタントに紐付く天気予報などを表示できる。
例えば、アレクサ対応の家電を買ったユーザーが、ほかの家電もアレクサに対応したものにしようと考えるのはごく自然なことだ。加えて、家電は買い替えサイクルも長い。一度ユーザーに選ばれたプラットフォームを後から覆すのは、かなり難しいと言えるだろう。
メーカーとしても万が一「負け組」のプラットフォームに乗ってしまうと、将来自社の製品が売れなくなってしまうリスクがある。どちらに乗るべきか、慎重に見極めているといったところが本音だろう。
グーグルとアマゾンがそれぞれCESで数多くの対応製品を展示し、プラットフォームの広がりを誇示するのも、そうしたメーカーにアピールするためにほかならない。
なお、アレクサ搭載製品の約1億台に対し、Googleアシスタント搭載製品は10億台と数の上では圧倒的だが、この中にはAndroidスマートフォンが含まれていることも留め置く必要があるだろう。
CES2019で、アマゾンはTelenavやHERE Technologiesといった車載サービスを展開する大手プロバイダーとアレクサとの提携を発表。一方、グーグルはメーカーがGoogleアシスタントの一部機能を簡単かつ安価に製品に組み込めるプラットフォーム「Google Assistant Connect」を公開。これは2018年にアマゾンが発表した「Alexa Connect Kit」に相当するものだ。また、Googleマップや翻訳といった、グーグルのサービスと連携する機能の追加も明らかにされた。
レノボが発表した「Lenovo Smart Tab」は1月中に日本でも発売予定。199.99ドル~。
メーカー側には、両者とバランス良くつき合おうとする動きもある。レノボはCES2019で、アレクサ対応のタブレット&スピーカードック「Lenovo Smart Tab」と、Googleアシスタント対応でベッドサイドで使用する「Lenovo Smart Clock」を発表。発表会にはアマゾン、グーグル双方の担当者がゲスト登壇した。このほかLGも、アレクサ、Googleアシスタントの両方のプラットフォームに対応する姿勢を強く打ち出している。
日本ではアマゾンがやや優勢?
「Lenovo Smart Clock」はアメリカで春以降発売予定。79.99ドル。昨年発表された「Lenovo Smart Display」も含め、日本での発売は未定となっている。
両者のプラットフォーム争いは今のところ拮抗しているように見える。だが、日本に関して言えば、アマゾンが昨年から「Echo Spot」「Echo Show」といったアレクサ対応のディスプレー搭載端末の発売を開始しているのに対し、Googleアシスタント対応のディスプレイ搭載端末は発表から1年が経っても未発売と、出遅れている感がある。
レノボからリリースされる新製品も「Lenovo Smart Tab」は1月中の国内発売が明らかにされているものの、「Lenovo Smart Clock」の国内発売時期は未定。グーグルはディスプレー搭載端末の多言語対応を、急ぐ必要があるだろう。
(文、撮影・太田百合子)
太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。