「新卒採用、やめます」企業も出現。変わる就活と増える中途採用【就活2019】

就活

「新卒採用、やめます」の意図とは。

Reuters/Yuya Shino

経団連が2021年卒から、情報解禁や採用選考で足並みをそろえてきた「就活ルール」を廃止するなど、新卒一括採用にこだわってきた日本企業の採用にも、地殻変動が起きつつある。「新卒採用、やめます」と宣言する会社も出てきたが、新卒にこだわらない採用をすると何が起きるのか。そしてその理由とは。

「新卒採用という言葉はなくなる」

「新卒採用、やめます。2021年卒採用という言葉は、ガイアックスの中では、もうなくなることになります」

そう話すのは、ガイアックス採用マネージャーの流(ながれ)拓巳さんだ。2020年末以降、同社は対象を新卒だけに絞った、いわゆる「新卒採用」の活動はやめる方針だという。

ガイアックスはソーシャルメディアやシェアリングエコノミーサービスを提供するIT企業。退職後の社員(新卒採用)のうち6割が起業する「起業家輩出企業」としても知られる。

「募集要項などにも、◎年卒採用、新卒採用といった言葉は入れません。便宜的に(新卒を対象とした)就活サイトなどに求人は載せるかもしれません。ただ単に、採用活動で出会う方の中に、学生もいれば、そうでない人もいるだけに過ぎないのです」(流さん)

「新卒採用」という募集の仕方はしないが、新卒の学生を採用しないということではない。社会人の中途採用、未経験者、新卒学生、現役学生であっても、同じ窓口で通年採用するという。

「新卒」「◎◎職」といった求人票の中身に合わせて応募を待つのではなく「その人に合わせて雇用条件や役職も自己申告型でマッチングする」(流さん)という組み立てだ。その人がガイアックスでやりたいことや働ける時間帯を相談の上で、ポジションや仕事をつくったり、勤務形態を決めたりするという。

会社に依存しない、キャリア自律の時代の採用

流さん。

「新卒採用という言葉はもう使わないことになる」と話す、ガイアックス採用マネージャーの流拓巳さん。

撮影:滝川麻衣子

「その結果、カルチャーも(時間の)コミット量も、スキル面でも、正社員が合うと思えば正社員。カルチャーが合わないがスキルは欲しいと言うケースは、例えば業務委託や(起業が適した人であれば)ガイアックスから出資するのでもいい」

そう話すのは、ガイアックス人事・採用担当の藤堂和幸さんだ。

企業と働き手の関係として描いているのは、コミュニティーのような人材のプール(蓄え)だと藤堂さんは言う。

「2020年末頃までには、コミットの仕方もさまざまの、ガイアックスと仕事をする人材のプールができているイメージです」

こうした、垣根を取っ払った採用を行う理由は、時代の要請といえそうだ。

「新卒一括採用は、まっさらな人を選んで自分の企業のカラーに染めようという意識があると思います。しかし現代は個の時代。個人のキャリア自律を追求すると、生涯一社で働くのは割が合わない。そうした時代に合わせた採用です」(藤堂さん)

留年採用に、内定時期ばらばらも

「新卒採用」にこだわらない動きは、広まりつつある。

東急エージェンシーは2019年4月入社の採用活動から「留年採用」を開始。ピカピカの新卒を重視する就活の風潮においては、「留年」はよっぽどの理由がなければマイナスイメージにとられがちだが「多様な人材を採用したい」という狙いがあった。

結果的に応募は前年比1割増、内定者の複数名が「留年採用」という実績を残し、「2020年卒採用でも、継続する方向で前向きに検討している」(担当者)。

急成長中のメガベンチャーとして、就活生に人気のフリマアプリのメルカリも、通年採用で知られる。入社時期だけは4月と10月に設定しているが、応募はいつでも可能だ。

インターンから社員になる人も多いが、必須なわけでもなく「オファー(内定)を出すタイミングは個別」(メルカリ広報担当者)という。そもそも中途が多いことからも「新卒一括採用」へのこだわりは薄い。

企業にとって究極的に都合がいい

研修

一斉採用、一斉研修、まっさらな人材を自社色に染めるのは、企業にとって「効率のいい」仕組みだった(写真はイメージです)。

Reuters/Yuya Shino

日本で新卒一括採用の慣習が長年、続いてきたのは、企業側のメリットに寄るところが大きい。もともと新卒一括採用は、高度成長期に一般化したとされる。拡大中だった企業組織が、大量かつ安定的に若手人材を確保するのに、終身雇用と退職金とセットで実施した。

日本企業では「総合職」という名目の下、専門性よりもあらゆる社内業務に対応することが求められている。新卒一括採用で自社カラーに染めた「あらゆる業務に対応可能な人材」を育成しておくことで、欠員が出ても、社内でいくらでも補充人員が調達できたわけだ。

また、4月一斉入社ならば、一斉採用・一斉育成と、欠員ごとに中途採用するより、採用や育成のコストも抑えられる。一方で、新人をイチから教育するコストや伝授すべきスキルが、かつては社内にあったとも言える。

新卒一括採用に生まれた危機感

駅のホーム

大企業の新卒一括採用も、揺らぎ始めている。

撮影:今村拓馬

しかし、日本企業でももはや「新卒一括採用」の継続は揺らいでいる。

リクルートキャリアの2018年秋の調査では「過去3年と⽐較して中途採⽤の⼈数を増やす」と回答した企業は、4割を超えた。

2021年卒からは、経団連が就活ルールを廃止し、情報解禁や採用選考開始で足並みをそろえるのをやめる。この動きの背景にも「新卒一括採用で人を補充するのをやめて、3割程度はスキルのある中途にしたい」(大手金融)という本音がある。

グローバル化と技術革新がどんどん進む時代で、イチから自社で「まっさらな新卒」を育てていては、変化のスピードに乗り遅れてしまう、新たなイノベーションが起きない、という危機感があるからだ。

ただし、新卒一括採用を離れた「柔軟な採用」とセットになるのは終身雇用の崩壊や、成果に応じて報酬やポジションを得るという、シビアな実力主義の流れだ。

この流れの中、自由とセットのより自立したキャリアが求められるのは、新卒でもベテランでも変わりはない。働き手も、覚悟する時が来ているのは間違いない。

(文・滝川麻衣子)

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