SPA!「女性をモノ扱いしていた」と女子大生らに直接謝罪。声あげる組織立ち上げ

『週刊SPA!』が掲載した「ヤレる女子大学生RANKING」という記事が女性軽視だと大きな批判を受けた問題で、2019年1月14日、記事の謝罪を求める署名を立ち上げた山本和奈さん(21)たちが、SPA!編集部と話し合った。

参考記事:SPA!「ヤレる」女子大生企画で謝罪。大学と署名女子大生の怒りの声

編集部は「女性をモノのように扱っていたことについては反省している」と述べる一方で、「性については書き続ける」という。

「セックスを扱うときは必ず性的同意についても説明して」

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SPA!編集部との話し合い後、メディアの取材に応じる山本和奈さん(右から2番目)女子学生ら。

撮影:竹下郁子

話し合いは山本さんら大学生3人と、NPO法人ヒューマ二ティの後藤稚菜さん(27)、そして『週刊SPA!』の犬飼孝司編集長と扶桑社の渡部超第二編集局長らで行われた。山本さんらの面会要請に扶桑社サイドが応じたかたちだ。

山本さんらによると、SPA!編集部は「売れることにフォーカスし過ぎて感覚が麻痺していた」と企画の経緯を説明。編集長らは、編集部内でも同企画に異論のある記者もいたかもしれないが、トップダウンで意見が言いづらい空気だったとも話したという。

女子大生は校門で待ち伏せされるなど怖い経験をしている人も多く、今回の同社の記事はこうした女性の意思を尊重しない行為を助長しかねないという山本さんらの指摘には、「そこまで考えていなかった」と回答した。

さらに編集長ら「女性をモノのように扱っていたことは反省する」と話した一方、「今後も性をテーマにした記事は書き続ける」と説明したという。

「セックスを扱うときは必ず性的同意についても触れて欲しいと提案しました。女性の意思を尊重しながら性をどう描いていくか、これから編集部内で話し合うそうです。その結果をシェアして欲しいとお願いしました。今後SPA!がどんな記事を出していくか、しっかり見ていきたいと思います」(山本さん)

山本さんたちは今回の話し合いは「とても有意義だった」と言う。

性犯罪はゴシップじゃない

SPA!

オープンミーティングで話す山本さん(左)と後藤さん(右)。

撮影:竹下郁子

SPA!編集部との話し合いに先駆け、山本さんたちはこの問題をはじめとした「メディアの女性蔑視」について話し合うためのオープンミーティングを東京都内で開いた。

女性たちが時に涙を流しながら、絞り出すような声で語った言葉を紹介したい。

ある女性は25年前の就活と、当時受けた週刊誌の取材を振り返った。

「当時は就活での女性に対するセクハラ面接が酷くて。彼氏はいるのかという質問から始まり、スカート丈、足の太さ、胸の大きさに言及されるのは当たり前。そんな状況を変えたくて記者会見を開いたんですが、週刊誌の取材は本当に大変でした。ある雑誌は2人の記者が来て、1人は問題意識を聞いてくれたのですが、もう1人はセクハラの内容だけを詳細にたずねられ、『ホテルに連れ込まれたりとかもっと酷いことないの?』と。結局、記事になったのは後者です。そういう内容の方が売れるんでしょうね。今も全く状況が変わってないことに驚きます」

石川優実

グラビア女優の石川優実さん(中央)。はあちゅうさんの#MeTooがきっかけで過去を見つめ直したという。

撮影:竹下郁子

同じように性被害を「ネタ」のように扱うメディアの現状を指摘したのは、高校3年生からグラビアの仕事をしてきたという石川優実さん。2018年の#MeTooの盛り上がりで初めて、メディアの現場で自分が受けていた行為がセクハラだと気付いたという。

「性接待を強要され、許可していないはずの露出の多い写真を勝手に出版されたりしていました。そんなことをされても『売れてないから、可愛くないから仕方ない』と言われ、私も自分のせいだと納得していた部分があります。でもそれじゃいけない。セクハラが横行し、いまだに性犯罪を『ゴシップ』のように取り上げているマスメディアの現状は深刻です」

今回、当時者である女子大学生たちが声を上げたことを心強く思う一方で、自身の過去を振り返った人も多い。

「セクハラや性暴力など問題だと思っていたことはたくさんあったのに声を上げることができなかった。私が我慢したことで、性差別を社会に温存してしまう結果になったことを人生の先輩としてお詫びしたい」

山本さんたち学生と共にSPA!編集部との話し合いに臨んだ後藤さんも、その一人だ。署名キャンペーンを見て、いても立ってもいられず山本さんに連絡を取ったという。

「日本で性暴力を語ることはすごく難しいと思っていました。見た目のことなど関係ないことも含めて激しくバッシングされるんじゃないかと怖くて。でも今回、山本さんが最初の一声を上げてくれて、絶対彼女を一人にさせちゃいけないと思ったんです」

声上げたら就活に影響?「そんなの気にしない」

扶桑社

SPA!編集部との話し合いに向かう山本さんら。この一歩が社会を変えていく。

撮影:竹下郁子

山本さんが会の途中、涙で声を詰まらせたのは、前出の就活セクハラについて女性が話したときだった。

「母からもそういう話はよく聞いていました。いま私たちが総合職で働けるのは、前の世代が必死で戦ってくれたから。なのになんで同世代はこんなに社会問題に興味がないんだろうって情けなくなるときがあります。もっと若い世代が声を上げないと」(山本さん)

山本さんが署名キャンペーンを立ち上げそのことが報じられると、ネット上で「この子は就活できないね」「もし内定を出している企業があれば取り消すべき」などの中傷コメントがあったという。

山本さんは「こんな状況では声が上げられないのもよく分かる。でも私は気にしません」と話す。

就活からリクルートスーツで同会に駆けつけた大学4年生の女子学生2人も「そんなこと気にする会社には入りたくありません」「逆に良いフィルターになりますよね」と、同じ考えだ。

山本さんたちは今回の件をきっかけに大学生たちで「Voice Up Japan」という組織を立ち上げた。

メディアで感じたジェンダーバイアスのモヤモヤを投稿するプラットフォームにするほか、コンビニに並ぶ成人向け雑誌、電車にある過剰に性的な広告などの問題にも取り組んでいきたいという。

「今回のSPA!の件もそうですが、日本社会は男性蔑視のコンテンツも多い。性別をこえてつながれる活動にしたいです」(山本さん)

(文・竹下郁子)

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