トランプ・シャットダウンで政府職員80万人が無給生活。子どもの食事買えないシングルマザーも

年末から続くアメリカ政府の一部閉鎖(シャットダウン)は1月15日(現地時間)、25日目に突入し、過去にあった政府閉鎖の最長期間を更新し続けている。

政府機関閉鎖に反対するデモ。

アメリカ合衆国議会議事堂の前で行われた、政府機関閉鎖に反対するデモ。「トランプ・シャットダウン」は人々の生活や経済にじわじわとダメージを与え始めている(2019年1月10日撮影)。

Mark Wilson/Getty Images

ワシントンDCは閑古鳥

80万人に上る職員が1カ月近く無給で暮らしている。影響は人々の生活に、そして経済にもじわじわとダメージを与え始めた。

  • 官公庁や博物館が閉鎖されているため、首都であり観光都市のワシントンDCは閑古鳥。
  • 政府職員のために食料を配給するフード・トラックが各地に登場。
  • 空港職員が無給で働いている。
  • 米航空運輸局(TSA)職員が病欠を取り始めたため、人手不足となり空港ターミナルが閉鎖に。
  • 家賃やローンを払えない政府職員が、クラウドファンディングを始めた。

1月7日午後1時半、首都・ワシントンDCの官公庁街に近いレストラン「Proper21」。ランチタイムというのに、広々とした店内にお客はバーに2組、テーブル席に1組しかいない。場所柄、通常であればビジネスマンと観光客でいっぱいでいいはずだ。

店内にずらりと並ぶテレビスクリーンに映るのは、政府閉鎖のニュースばかり。 若いバーテンダーが突然、お客らにこう言った。

ワシントンDC

ワシントンDCの官公庁街。官公庁の出入り口も門を閉じていた(1月7日撮影)。

撮影:津山恵子

「政府閉鎖だろうがなんだろうが、なんとかやっていくぞ」

しかし、チップ頼りのバーテンダーの生活が、大打撃を受けているのは間違いない。

店を出て、官公庁街とスミソニアン博物館が並ぶ大通り、コンスティテューション街を歩く。人がまばらでほぼ無人街だ。普段は、観光客が列をなして歩いているところだが、国立の博物館などが閉まっているため、観光客も見当たらない。当然、いつもはある土産物屋やフードカーは姿を消している。

歯磨き粉はいつ買えるの?

スミソニアンの張り紙

スミソニアン博物館にも休館の張り紙が……(1月7日撮影)。

撮影:津山恵子

年末から給与がストップしている政府職員の生活苦は深刻だ。

コスモポリタン誌は、国税庁(IRS)に勤める4人の子どものシングルママ、レイチェル・ジョーンズ(33)の日常を伝えた。最後の給与と貯金の1000ドルを使い果たす寸前で、食卓は、子どもの健康に悪い缶詰やポテトチップが続く。歯磨きチューブの残りも少ない。子どもたちの間でも日々、不安が広がる。

「いつ、次の歯磨きチューブが買えるのだろう?家賃は、車のガソリンは、電気代は、歯医者は、学校のダンス教室は、いつ払えるのだろう?」

と、ジョーンズは訴える。

MSNBCのアンカー、アリ・ベルシは番組で、貴重品をコミュニティサイトのクレイグスリストで売り始めた政府職員のシングルママをインタビューした。その直後、ベルシの元に視聴者からメールが届いた。

「自分もシングルマザーです。貴重品を売るべきではありません。必要なお金の小切手を彼女に送りたいので、連絡先を教えてください」

ベルシは生放送で声を詰まらせて、「これこそがアメリカだ」と言った。

影響は長期間になる可能性も

政府職員向けのフード・トラック

米ワシントン州議会議事堂近くのフード・トラック。各地で政府職員のために食料を配給するフード・トラックが登場している(2019年1月4日撮影)。

REUTERS/Katharine Jackson

政府機関の閉鎖がいつ解除されるのか、見通しは立っていない。

仮に閉鎖が早急に解除されても、長期にわたって悪影響が及ぶ可能性もある。

  • 米海洋大気庁(NOAA)の閉鎖で、港湾などに閉じ込められたり、病気になったクジラ、イルカ、アシカなど海洋哺乳類を救済できないでいる。
  • 米食品医薬局(FDA)の閉鎖で、80%の食品や海産物を検査する予算が凍結。野菜や貝、チーズなどの汚染が検出できず、食中毒が起きる可能性がある。
  • 米環境保護庁(EPA)の閉鎖で、通常週に全米200カ所で行われている、飲み水や大気の有害化学物質や重金属の検出検査が止まっている。

アメリカの政府閉鎖はこれまで今回を含めて15回あったが、今回はクリントン政権下(1995〜96年)の21日間を抜いて最長に及んでいる。

交渉する補佐官怒鳴ったトランプ

アメリカが建設中のメキシコとの国境の壁

アメリカとメキシコの間に横たわる国境フェンス。この建設予算がトランプ・シャットダウンのきっかけだった(メキシコの都市ティフアナ側より、2019年1月9日撮影)。

REUTERS/Jorge Duenes

今回の閉鎖は、「トランプ・シャットダウン」と呼ばれる。トランプ大統領がメキシコ国境の壁建設予算(56億ドル)を民主党が承認しないなら、政府機関の歳出法案に署名しないと抵抗しているからだ。これには、与党議員からさえ徐々に批判が出ており、大統領も民主党幹部と交渉を続けている。

しかし、政治メディアの「AXIOS」は1月13日、トランプ氏の異常な行動をすっぱ抜いた。

民主党幹部との交渉で落とし所を探ろうとしたミック・マルバニー大統領首席補佐官代行に「台無しにしたぞ(f—ked up)」とけなしたというのだ。マルバニー氏は、大統領の壁建設予算(56億ドル)と、民主党が同予算の妥協案として示した13億ドルの中間の金額を探ろうと発言を始めた。

しかし、トランプ氏は、「待て、待て、待て、待て。たった今、お前は全部台無しにしたぞ」と低俗な言葉を使って、「叱りつけた」(AXIOS)という。

議員やホワイトハウスのスタッフの中には、異常な事態にどうしていいか分からず、下を向いていた者もいると伝える。「タフ・ネゴシエーター」として生きてきたトランプ氏は、交渉で妥協することが嫌いだが、マルバニー氏はその空気が読めなかった。

しかしこの話から、トランプ氏が政府職員や経済への犠牲をものとせず、全額回答まで政府閉鎖を続ける姿勢であることがわかる。 過去最長を超えて続く政府閉鎖に1月14日、アメリカの株式市場も伸び悩んでいる。

(文・津山恵子)

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