たった1日でも、スポットで「人手が欲しい人」と「働きたい人」をマッチングする、注目のタイミー。本当にいきなり働いて役立てるのか。(写真はイメージです)。
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空き時間を利用して学生がもっと豊かに働くことはできないのだろうか。
そんな世界を実現するのが、アルバイトのワークシェアアプリ、Taimee(タイミー)だ。立教大学経営学部3年在学中の学生起業家、小川嶺さんが2018年8月に立ち上げたサービスである。直近の2019年1月10日には、サイバーエージェント、エン・ジャパンなどから3億円を資金調達した。
サービス開始から5カ月経った2019年1月現在、登録者数は3万5千、登録店舗は400を超えている。
今すぐ働けて、今すぐお金がもらえるバイト版Uber
21歳の学生社長、タイミー の小川嶺さん。すでに5社で働いた経験をもつ。
提供:タイミー
タイミーは「働きたい時間」と「人手が足りない時間」をマッチングするシェアリングエコノミーサービス。スキル申告制度や相互レビュー評価の仕組みによって、面接や履歴書なしでもすぐに働ける仕組みを用意している。
現在のタイミーへの登録企業の8割は飲食店。居酒屋などは繁忙期である毎週金曜夜だけ頼む場合も多いという。
「アルバイトの中心世代である20歳の人口が、20年前と比べて30%も減っているという人手不足問題があります。タイミーは、学生の空き時間と、人手不足の企業をマッチングさせることで解決を狙っていきます」
面接なしのアルバイトで気になるのがキャンセル問題。マッチング後にキャンセルになった場合でも、自動で同じ時間に投稿している他のユーザーにアプリ内に通知が送られるため、高確率で他の人手を確保できる仕組みがあるという。
ちなみに、ドタキャンした場合は、信用スコアの問題でアプリは使えなくなるルールになっている。
タイミーはマッチングまでの速さが売りで、案件を出してから「1時間以内」にマッチングする場合が最も多い。
募集は3日前から当日募集で実施されることが多くなっている。
1日だけ飲食店で働いて本当に戦力になれるのか
スポット的に働きに来てもらうだけで、バイトとして成立するものなのか。筆者は、知人の大学院生の糸原さんに、お試しをお願いした。
筆者提供
学生にスポット的に働きに来てもらうだけで、バイト先は仕事の戦力として、働き手を活用できているのだろうか。
今回、飲食店バイト経験のある筆者の知り合いの大学院生、糸原絵里香さん(23歳) に、タイミーで仕事体験をお願いしてみることした。 実際にどんな働き方になるか試してみるとタイミー側に伝えつつも、人選を隠している。
彼女が選んだ案件は、居酒屋のホールスタッフ。
タイミーを使って糸原さんが1日居酒屋バイトした時の様子。誕生日ケーキを運ぶ役割も担当。
筆者提供
全6時間で6000円の報酬と交通費が一律500円支給される。
前日夕方の申し込みでも即マッチングが完了し、当日までにLINEで2度、タイミーからのリマインド(返信必須)があり、ドタキャンの可能性を減らす工夫がされていた。
糸原さん曰く、当日現場では開始10分ほど仕事の説明を受けた後、さらに制服に着替えた5分後には業務スタート。居酒屋が混まない時間(17:00)からスタートして、少しずつ教えてもらうことで、繁忙タイムには仕事を回せるようになったという。
「はじめは、皿洗いや席の片付けだけを担当することが多いと思っていましたが、注文を取ったり、配膳や席のセッティングなどレジ打ち以外のほぼ全てのホールスタッフ業務をこなすことができました」
終業時間の23:00ピッタリに残業なしでバイトは終了したという。
これはタイミー上のルールであり、後のレビューでも「終了時間に終えることができたか」を確認される。 事後レビュー項目は他にも、「また働きたいか」「掲載の業務内容と同じであったか」を回答する。
飲食店で単発バイトしても戦力になれた3つの理由
結果的に大学院生の糸原さんがはじめてのバイト先にも関わらず、問題なく戦力として働けている姿を確認することができた。上手く働くことができたのは以下の3つの理由があったという。
(1) スキルの自己申告がないと応募条件をクリアできない仕組みがあった。
(2) 他店舗からのヘルプの多いチェーン店だったので、新しい人を育てることに現場が慣れていた。
(3) 皿などの場所も全てテープで記載があり、はじめての職場でもわかりやすい工夫があった。
実際の、タイミーアプリのスキル登録画面のキャプチャ画像。
提供:糸原さん
「タイミーは、いろんな仕事の世界を見られる楽しさがあると思いました。ただ、私の場合、せっかく働き方を覚えたので、次に働くならまた同じ店で働きたいと考えています」
タイミーによるとリピーター優先で働ける機能も今月末に実装して、一時的に働いた出会いをキッカケに繰り返し働ける仕組みも用意していくとのこと。
「目指すは最年少上場」 21歳社長が目指す、学生の働き方改革
タイミーで働く仲間達 。前列右から3番目が社長の小川さん。
提供:タイミー
21歳学生社長である小川さんは、高校生時代からビジネスコンテストに参加したり、リクルート、サイバーエージェントなどすでに5社で働いた経験がある。タイミーのアプリも大学3年生の夏に1カ月で作り切ってしまうほどのバイタリティの持ち主だ。
「サービス開始から5カ月で、業務委託も合わせて35人のメンバーまで成長し、今回3億円の出資も受けることができました。ずっと順調だったわけではありませんが、周りから支えられてここまできたことが自信に繋がり、今では最年少上場( ※現時点ではリブセンス代表の25歳1カ月が最年少記録)を狙うようになりました」
小川氏は「人手不足」「働き方改革」への注目が集まっていた時代背景など運の要素も大きいと語る。謙虚で礼儀正しい面と大きな野心の両方を併せ持つ21歳学生起業家の動向は、2019年も要チェックだ。
加藤こういち:シェアリングエコノミー研究家。シェアリングエコノミーを500回以上使ってミレニアル世代のライフスタイルにどう入れていくべきかを研究中。4年前に上京してからシェアエコで孤独を解消したことをキッカケにその魅力にはまる。シェアエコ事業者、ホスト、ゲスト視点でバランスよく、業界情報を整理して発信することで社会貢献するのがミッション。