大企業がSlackを導入できない理由とは? 全社導入1600社超の国産ビジネスチャットが好評な理由

Tocaro イメージ

今やビジネスの効率化に欠かせなくなったビジネスチャット。そのうちの1つに国産の「Tocaro」がある。

出典:伊藤忠テクノソリューションズ

個人の生産性の向上のため多くの企業が取り組む「働き方改革」。その一環でメールに代わる情報交換手段として、「ビジネスチャット」を導入する企業が増えている。

代表的なビジネスチャットと言えば、サンフランシスコに本社を持つスタートアップの「Slack」だろう。日本でも規模を拡大しており、2018年6月時点では日本国内で50万人以上のデイリーアクティブユーザー、うち15万人以上は有料ユーザーであると発表している

しかし、当然Slackでもフォローできない業種やニーズはまだまだ存在する。Slackを入れられない理由とは何か? その実態を国内の大手企業を中心に導入社数を増やしているビジネスチャット「Tocaro」を提供する伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)の松田賢司氏が語る。

医療や安全保障の関連企業が注目する「データの場所」

Slack

ビジネスチャットを選ぶ上で、特定の企業が気にしている共通点とは?(写真はSlackのチャンネル)

撮影:小林優多郎

Tocaroはもともと大企業向けチャットとして開発されており、代表的な導入企業は髙島屋や富士電機、NTT西日本などの従業員数の多い日本の名だたる大企業が多い。

松田氏によると、2018年12月時点で導入社数は1600社以上。その多くは大企業で全社導入を行っているという。

なぜそれらの企業では、SlackやLINE WORKS、Chatworkといったサービスを選ばなかったのか。松田氏は、Tocaroを採用する企業の多くが重視している点は「ビジネスチャット内のデータがどこにあるのか」という点だと話す。

この「データの場所」には2つの意味がある。

1つは、「アップロードしたデータがどこで保存されるのか」という点だ。チャット内にファイルをアップロードした場合、「ファイルをいつ投稿したか」は検索ツールを活用するか、添付ファイルをリスト表示にして探す必要がありやや不便だ。

「Google ドライブ」など外部のオンラインストレージに保存してから、チャットで通知するといった運用で管理する方法もあるが、これもまた手間がかかる。

Box

クラウドストレージ、コラボレーション機能を提供する「Box」。

出典:Box

この点について松田氏は「Tocaroはオンラインストレージの『Box』との連携機能が好評を得ている」と話す。この機能を有効化するとTocaroにアップロードしたファイルは、すべて会社管理のBoxに自動でアップロードし直され、ファイルはチャットの海に流れることなく管理できる。

もう1つの意味は、「データサーバーがどの地域にあるのか」。医療や安全保障などに関わる企業は、扱うデータの性質や各種法規制が理由で自社のデータを海外のサーバーに置くことはできない。

松田氏は「Tocaroのデータセンターは国内にあり、またBoxも法人契約の場合、リージョンを選ぶことができる」と話す。

Box自体はAPIを公開しており、Slackを含む多くのビジネスチャットと連携できるが、Tocaroのように「アップロードされた全データをBoxに保管しておく」という機能はない。Boxの国内販売代理店も務めるCTCならではの特徴と言えるだろう。

チャットの読み忘れや社内のハンコリレーを無くす

Tocaro Mail

Tocaroは競合と同じくベーシックなチャットやタスク管理機能、外部ツールとの連携機能を既に持っているが、新しい機能を今後実装する(イメージは既に実装済みのメール送受信の機能)。

出典:伊藤忠テクノソリューションズ

Tocaroが現在実装している機能は、ほかのビジネスチャットと大きく異なるものはない。基本機能はチャット、ファイル添付、ファイルのプレビュー、To-Do管理、ビデオチャット、各種外部サービスとの連携などだ。

しかし、他のサービスにはない以下の2つの機能の実装を予定している。

  • あとで読むべき投稿が一発で分かる「ワークボード」
  • 発生元不明な指示やハンコリレーをなくす「ワークフロー」

Tocaro Workboard

Tocaroの実装予定の新機能「ワークボード」。

出典:伊藤忠テクノソリューションズ

ワークボードは、ネットサービスで言う「後で読む」の機能だ。社内外を問わず多くの人とつながるビジネスチャットでは、未読メッセージが貯まりやすい。しかし、ビジネスチャットの部屋(Tocaroではグループ、Slackではチャンネルに相当)を開くと、見かけ上は「既読」になってしまい、他の優先度の低いメッセージと埋もれてしまう原因となる。ワークボードは、「あとで読んで、処理しよう」と思ったメッセージを1つにまとめておく場所というわけだ。

Tocaro Workflow

新機能「ワークフロー」は、いわゆるハンコリレーをビジネスチャット内で実現する。

出典:伊藤忠テクノソリューションズ

一方、ワークフローはプロジェクト内の確認作業を円滑におこなうための機能。ワークフローではある申請内容について誰が申請しているか、その内容に対し、誰が可・不可を出しているかが一目でわかる。稟議など大企業でありがちなハンコリレーをチャット上で完結させられるわけだ。

また、前述のワークボード上には「送ったワークフロー」「受けたワークフロー」という項目も用意されているため、自分の出した申請の進捗状況や、自分が上長の場合は承認すべき内容を一目でチェックできる。

ビジネスチャットはチャット以上の存在になれるか

CTC 松田氏

Tocaroの責任者を務める松田賢司氏。

撮影:小林優多郎

Tocaroがこのような新機能を開発・提供する背景には強力な競合の存在だけではなく、Tocaroが「ビジネスチャット以上」をソリューションに育てていく意図があるからと、松田氏は話す。

「ビジネスチャットは、とても難しい技術でできているわけではなく、他社も多彩な製品を展開しており、国内市場はすでにレッドオーシャンになっているという認識です。

しかし、Tocaroを単なる“チャット”だけに留まらせておくつもりはありません。

我々は“仕事のための仕事をゼロにする”という製品コンセプトにしたがって、ビジネスチャットというベースに、ワークフローやワークボードといった新機能の開発に取り組んでいき、さらなる価値の創出につなげていきたいと考えています」

松田氏は今後の方針として、現在も親和性の高い医療や国防に関わる企業への営業は進めていく一方、まだビジネスチャットが浸透していない金融業界もターゲットにしていくと述べている。

(文・小林優多郎)

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