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- 米中の貿易戦争は、対中海外直接投資に大きな影響を及ぼしている。投資家が他のアジアの国々に投資を多角化させようとしているからだ。
- 貿易戦争が海外の投資家たちの考えを変えさせるきっかけだったわけではないが、考え方の変化を加速させている。
- 貿易戦争が国際経済に負の影響を及ぼす中、フィリピン、インド、ベトナムは中国に代わる投資先として恩恵を受けそうだ。
あらゆる製品が「メイド・イン・チャイナ」だった20年を経て、中国の「世界の工場」という評判は低下しつつあるのかもしれない。そして、投資家たちもそれに気付いている。
人件費や地価の高騰、環境審査の厳格化は、中国の製造業の競争力を他のアジアのライバルに比べて低下させ、貿易戦争はその助けにはなっていない。
中国の製造業の輸出は2016年以降減少していて、周辺国との競争の激化によって海外直接投資はこれまでとは異なる方向へ流れた。
UBSによると、日本や台湾、韓国といった明らかなライバルたちは、いずれも近年、その魅力を増している。しかし、投資シフトがまさに起きているのは、南アジアの成長のハブであるフィリピン、インド、ベトナムだ。
UBSの海外直接投資のデータ。
UBS
2015年に史上最高となる8.7%に達した後、世界の直接投資残高に占める中国の割合は2016年と2017年に約1%低下した。2018年12月には、中国の輸出成長が大幅に低下し、貿易戦争によって投資家が他に目を向けた結果、その対米輸出も減少した。
UBSの調査によると、「機械設備」業界の約60%の企業が、過去12カ月の間にその生産拠点の一部を中国から移したという。
中国は依然として世界の経済大国の1つだ。2018年1月~11月の対中海外直接投資は、貿易戦争にもかかわらず、2017年の同じ時期に比べ、わずかに増加した。
米中間で貿易戦争を緩和する協定を結ぶことができれば、中国は投資家の頭から不確実性の一部を取り除き、さらなる経済成長を目指すことができるかもしれない。
[原文:These countries could be the surprise winners of the US-China trade war]
(翻訳、編集:山口佳美)