この記事は、Business Insiderのプレミアム・リサーチ・サービス「Business Insider Intelligence」の調査レポートをもとにしています。
ネットフリックス(Netflix)は同社史上5度目の値上げを発表した。2011年以来で最大の値上げ率で、全3プランにわたる値上げは初めてのこととAP通信は伝えた。
Business Insider Intelligence
新料金は、アメリカ国内の有料会員5846万人に今後3カ月以内に適用される。新規会員には新料金が即座に適用される。
また値上げは、料金の支払いがドルで行われているラテンアメリカの一部会員も対象となる。
ネットフリックスのアメリカでの直近の値上げは2017年10月だった。
アメリカ国内の新料金は以下の通り。
- ベーシック:1台のみ、SD画質、月額9ドル(月額8ドルから12.5%アップ)
- スタンダード:2台まで、HD画質(ネットフリックスで最も人気のプラン)、月額13ドル(月額11ドルから18%アップ)
- プレミアム:4台まで、超高画質、月額16ドル(月額14ドルから14.3%アップ)
ネットフリックスにとって大きなリスクは、契約者が値上げに二の足を踏み、サービスを解約すること。特に同社は今、老舗メディアによるコンテンツ・ライセンスの買い戻しに見舞われている。
同社にとって契約者を増やすことはますます重要なことになっている。唯一の収入源であることはもちろん、同社は莫大な金額をコンテンツや有名タレントとの契約に費やしている(ゴールドマン・サックスの試算によると、2018年には130億ドルを費やし、85%がオリジナル・コンテンツに投入された)。さらに莫大な負債も抱えている。
ネットフリックスは120億ドル(約1兆3000億円)近くの長期負債を抱えていたが、さらに2018年10月、20億ドル(約2200億円)を債権を発行した。
さらにディズニー、ワーナーメディア、NBCユニバーサルといった老舗メディアが同社からコンテンツを引き上げ始めており、Ampere Analysisによると、ネットフリックスは20%相当のコンテンツを失いかねない。
負債が積み上がり、コンテンツの引き上げがあるかもしれないが、同社にはリスクや今後の競争を乗り切る力があると、我々は依然、以下のような強気な見解を持っている。
- ネットフリックスの契約者は、値上げに影響されない。2017年10月の値上げの後の四半期で、アメリカ国内の契約者は196万人増加した。マーケットが飽和しつつあるにも関わらず、同社は四半期ごとの契約者数を増やし続けている。
- 料金値上げのタイミングは、ネットフリックスの自信を示している。2019年、ディズニー、ワーナーメディア、アップルなどが競合サービスを開始すると見られているが、その年の初めに値上げを実施したことは、同社の絶大な自信の表れに他ならない。同社は明らかに、高い料金でも契約者を惹きつけることができ、さらに新たな参入者を打ち負かすことができると考えている。
- 複数の調査によると、ネットフリックスはアメリカの家庭に必要不可欠なものになってきている。ネットフリックスはアメリカで最も普及しているSVOD(定額制動画配信)サービスであり、Parks Associatesによると、ブロードバンドを使っている家庭のうちの半数以上に浸透していると推定される。さらに、アメリカの全テレビ視聴者の中で、最も人気のサービスでもある。Cowen surveyによると、有料テレビや地上波を上回り、アメリカの成人の27.2%が動画コンテンツの視聴にネットフリックスを最も良く使っていると答えた。ケーブルテレビ(有料テレビ)は20.4%、地上波は18.1%だった。仮にネットフリックスが多くの家庭において、まだ有料テレビに取って代わるものではないとしても、ネットフリックスは間違いなく魅力的なサービス。また同社は、サービスが必要不可欠なものになり、オリジナルコンテンツが数々の賞を獲得し、さらにインターネット・カルチャーに影響を与えるものになるよう、カルチャー面での取り組みを強化している。例えば、オリジナル・コンテンツの「バード・ボックス」は、配信が始まると、インスタグラムなどのSNS上で真似をする人が続出した。ネットフリックスは、競合各社の中で、最も若い層に評価されるオリジナル・コンテンツを提供している。Business Insider Intelligenceの2018年SVOD調査によると、ミレニアル世代の68%が最も優れたコンテンツがあるサービスとしてネットフリックスをあげた。HBOは19%、アマゾン・プライム・ビデオはわずか4%だった。
[原文:Will the Netflix price hike harm subscriber growth?]
(翻訳:Makiko Sato、編集:増田隆幸)