銀座のテナント賃料は2019年も上昇が想定される。
撮影:今村拓馬
法人向け不動産サービスのCBRE(日本本社)は、2019年の業務用不動産市場の見通しをまとめた。需給のひっ迫と賃料上昇が続いてきたオフィスマーケットは、消費税増税やアメリカの経済減速を背景に2019年後半に調整局面を迎える可能性が高い。
一方、店舗向けのリテール賃貸市場は訪日外国人の消費がけん引し、企業の出店意欲が継続。特に東京・銀座はラグジュアリーブランドの出店が競合するなどして、2019年も賃料上昇が見込まれるという。
オフィス市場の調整は2023年まで持続か
「2018年のオフィスマーケットはコワーキングオフィスの拡大などを追い風に、想定よりも終始強い動きだった」
大久保寛エグゼクティブディレクターはそう振り返った。
同年第3四半期の東京の空室率は0.9%で、1991年の調査開始以来の最低値を更新。東京以外の主要都市でも、賃料の上昇ペースが当初の想定を上回った。
だがオフィスの新規供給が続くことに加え、消費税増税とアメリカ経済の減速で、東京の空室率は2019年に1.4%、2020年には2.0%に上昇する見込み。需給緩和に伴い、賃料は2019年第2四半期をピークになだらかに下落し始めると予測する。
大久保氏は、「景気は2021年から2022年にかけて底打ちすると考えているが、2022年から2023年にオフィスの新規供給が大きく増える見込みで、そのころまで調整局面が続くのではないか。ただし、バブル崩壊後やリーマン・ショック後のような暴落には至らない」と語った。
化粧品ブランドやドラッグストアが銀座出店
一方、リテール賃貸市場は2019年も力強い動きが続きそうだ。CBREは日本一の商業街である銀座の動向を分析。中国人の爆買いが注目された2015年から上昇基調に入った賃料は2016年第2四半期をピークに下落に転じたが、2017年後半に底入れが見られたという。
CBREは今後もラグジュアリーブランドを中心に、銀座の中でもよりよい立地への移転や、相場を超える賃料で新規出店をする事例がさらに増えるとみている。
大久保氏は「訪日外国人や日本人富裕層の消費が好調で、ラグジュアリーブランドは、一定のエリアをピンポイントで狙い、賃料の高さや競合をいとわない。2019年も好立地では価格上昇が続く」と分析した。
東京はオフィスの供給が続き、需給は緩和していく見込み。
撮影:浦上早苗
業種別の動向では、訪日外国人に人気が高い高級化粧品ブランドが、百貨店の売り場より広く落ち着いたスペースを求めて、銀座の路面店に出店する動きが活発化。
外国人に人気の高い化粧品ブランドの店舗周辺では、相乗効果を狙った他のブランドが出店を狙う例も複数みられるという。同じく訪日外国人の定番の立ち寄り先であるドラッグストアも、銀座への出店ニーズが高まっている。銀座の一等地では物件オーナーの多くが、受け入れ業種を限定しているが、ドラッグストアの出店が決まる事例も出ている。
大久保氏は、「オフィスビルは2019年中に調整局面に入る可能性が高いが、需要は底堅く大崩れすることはないとみている。しかし、リテール賃貸市場は、景気の影響を受けやすく、円高の進行や株価の不安定化は懸念材料だ。これらの要因が訪日外国人や富裕層の消費に悪影響をもたらし、出店計画を見直す企業も出て来るかもしれない」と指摘した。
(文・浦上早苗)