地球の「#10yearchallenge」が見せる気候変動の危うい現実

スイスのローヌ氷河

スイスのローヌ氷河。2018年9月(上)と2009年9月(下)では、氷の量に違いが見られる。

Denis Balibouse/Reuters

  • 今、ソーシャルメディアは、2009年と2019年の自分の写真を並べて投稿する「10年チャレンジ(10-year challenge)」であふれている。
  • 環境活動家はこの流行を利用して、この10年の地球の変化について人々の関心を集めようとしている。具体的には、地球の2009年と2019年の写真を並べて投稿して、地球の変化をアピールしている。
  • 2019年は年明けから、気候変動に関する暗いニュースが立て続けに飛び込んできた。2018年、世界の海水温は観測史上、最も高くなった。また海水温の上昇は予想よりも早いペースで進行している。さらに南極の氷は、かつてないスピードで溶けている。

年明けから、世界の海に関する悪いニュースが立て続けに飛び込んできた。

2018年は観測史上、海水温が最も高かっただけではない。以前の予測よりも、40%早く海水温が上昇した。さらに、南極の氷床が1980年代よりも6倍近い速さで溶けていることが調査によって明らかとなった。

今、ソーシャルメディアでは、2009年と2019年の自分の写真を並べて投稿することが流行っている。これをチャンスと捉えた環境活動家は、地球の「10年チャレンジ(10-year challenge)」を行うことにした。

レディット(Reddit)やインスタグラムには、気候変動の影響に対する大きな世間の関心を呼び起こそうとする投稿であふれている。オリジナルのチャレンジは、投稿者の成長や変化をビジュアルで見せるものだが、これはより深刻なメッセージを伝えている。これこそ我々が関心を持つべき「10年チャレンジ」だ。

「本当の#10yearchallengeは、気候変動。@IPCC_CH #SR15によると、ここ10年で行動を起こさなければ、地球に取り返しのつかないダメージを与えてしまう。行動を起こし、問題解決に取り組もう。今から始めよう!」

2008年と2018年を比較した写真の多くは、溶けつつある氷河を捉えたもの。温暖化が進む地球の最も劇的な影響を視覚的に表している。

溶けつつある氷河は、北極と南極がゆっくりと変化していることを意味する(良い意味ではない)。最悪の場合、温かくなった海水によって南極やグリーンランドの氷床が崩壊する「パルス」と呼ばれる現象が発生する可能性がある。そして凄まじい量の氷が海に落ち、世界中で急激な海面上昇が起きるかもしれない。

パルスが発生すると、フロリダ南部の海面は2100年までに10~30フィート(約3~9メートル)上昇する可能性がある。だが、水は他の多くの物質と同様に温まると膨張するため、氷床が溶けなかったとしても海面上昇は避けられない ── 温室効果ガスは大気中に熱を留め、海水はその熱の93%を吸収する。

こうした脅威を抽象的に語ることは大切。しかし、その様子をビジュアルで見ると大違いだ。

スイス、ローヌ氷河。上が2019年、下が2009年。10年で氷がかなり減った。

ローヌ氷河

スイス、フルカ峠にあるローヌ氷河。上は2019年、下は2009年に撮影。

Denis Balibouse/Reuters

氷河学者は、スイスの小規模な氷河の半数、そしてその雪解け水でできる小川は、25年以内に消滅すると考えている。ロイターが伝えた

多くの氷河がこの10年で劇的に縮小した。だが、さらに過去に遡って比較するとより衝撃的。

アラスカのペダーセン氷河。

アラスカのペダーセン氷河。

USGS

アラスカのペダーセン氷河。1917年(左)と2005年(右)。

NASAの研究によると、どの氷河が、いつ溶けるかによって、沿岸のどの都市がより深刻な影響を受けるのかが変わってくる。

科学者は、インタラクティブツールも作成。290以上の都市について、氷河が溶けることによる影響を調べることができる。

もちろん、気候変動の影響は氷河に限らない。

サンゴ礁とサンゴ礁が育む生態系は死にかけている。

人口増加による水の需要の高まりで、川や湖の水量も減少している。農地から流出した農薬や肥料が残されたわずかな水を汚染している可能性もある。

オロビル湖

カリフォルニア州にあるオロビル湖。2011年7月(左)から2014年8月(右)のわずか3年間でここまで水の量が減った。

California Department of Water Resources/Business Insider


南米と中央アフリカの森林も木材の伐採や開拓によって縮小している。

サルサ森林

アルゼンチンのサルサ森林。1971年(左)と2009年(右)。

NASA


政治家やセレブも、環境をテーマにした10年チャレンジに賛同している。メスト・エジル選手(イギリス・プレミアリーグのアーセナル所属、2018年ドイツ・ワールドカップにも出場)もその1人。

「これこそ、我々が考えるべき10年チャレンジ

インスタグラムでは、ニュージャージー州選出のコリー・ブッカー上院議員が投稿。「持続的で健康な世界を次世代に残したいのであれば、もっと前から取り組むべきだった」。

ブッカー氏をはじめ多くの人が、世界が手遅れになる前に気候変動に取り組むために、あと1回だけ、10年チャレンジができるくらいの時間しか残されていないかもしれないと指摘している。


[原文:People are using the viral '10-year challenge' as a stark warning about what's happening to our planet

(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)

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