Amazonプライムは今のところはキング、だがいつまで続くだろうか?
AP/Patrick Semansky
- Amazonプライムにはさまざまな特典がある。だが、多くの会員が最も重視していることは、1億種類を超える商品を2日以内に無料で配送してもらえること。
- アメリカのオンライン売上の約半分はアマゾンが占める。しかし、残り半分を占める競合各社も同様のサービスでアマゾンに追いつきつつある。
- デリバー(Deliverr)のような外部の企業を使うことで、ウォルマートやイーベイなどは、以前よりも多くの商品に対して2日以内無料配送サービスを提供することができるようになっている。
- 2日以内配送が当たり前になるにつれ、アマゾンは同日配送や1日以内配送、さらにはプライム・ビデオやホールフーズでの割引といった特典でプライム会員を集めようとしている。
Amazonプライムは今年、その優位性を失うかもしれない。
Amazonプライムはユーザーに大人気。さまざまな特典がある。だが最も重視されているのは、商品を制限なしに2日以内に無料配送してくれること。
調査会社ディフュージョン・グループ(The Diffusion Group)がプライム会員1160人を対象に行った調査によると、79%が2日以内無料配送を会員特典の中で最も重要な特典にあげた。2番目は大きな差でプライム・ビデオ、11%が最大の特典とした。
アマゾンが1億種類以上の商品について、2日以内無料配送を提供できるのは、全米に広がる巨大な倉庫ネットワークを有しているから。アマゾンは在庫を全米各地にある倉庫に分散させることで、コストを抑えつつ、ほとんどの地域に対して迅速な配送を実現している。
Amazonプライムの配送特典は唯一無二。アマゾンが直接、あるいはサードパーティーの販売業者が「フルフィルメント by Amazon」や「マケプレプライム」を利用して販売している商品の種類、数において肩を並べるものはない。
アマゾンはこの優位性をしばらく独占してきた。だが今、競合も追いつきつつある。
増える2日以内無料配送サービス
Business Insider/Dennis Green
ウォルマートは、ほとんどの点でオンラインにおけるアマゾンの最大のライバル。同社は会員登録なしで利用できる2日以内無料配送サービスを2017年に開始した。唯一の条件は、注文金額が35ドル以上であること。
しかし、アマゾンと戦うなら、ウォルマートは2日以内無料配送の対象となる商品の種類を増やす必要がある。同社は数百万種類の商品を扱っている。だが、アマゾンの1億種類には遠く及ばない。
ウォルマートは、アマゾンの100万種類のベストセラー商品のうち、その半分強 ── 約55%しか扱っていないと投資・調査会社のコーエン・アンド・カンパニー(Cowen and Company)は2018年10月、投資家向けレポートに記した。
コーエンによると、アマゾンの上位100万種類の商品は、売り上げの約80%を占める。これはウォルマートの弱点だ。
ウォルマートの経営陣は、Walmart.comとAmazon.comの品揃えには、まだ圧倒的な差があることを認めており、ウォルマートは品揃えの拡大を「最優先事項」と認識しているとコーエンは述べた。
ウォルマートは品揃えの拡大策の1つとして、サードパーティーの販売業者にWalmart.comで、2日以内配送が可能であることを表す緑色の印を付けることを許可している。
この施策は2018年10月に始まった。同社は今後数カ月間で拡大していきたいと述べた。以前、緑色の印を付けることができるのは、ウォルマートが直接販売している商品だけだった。
とはいえ、あらゆる販売業者が2日以内配送という過酷な要求に対応できるわけではない。特に、全米各地に倉庫を有していなければ困難。しかし、ウォルマートが提携しているデリバー(Deliverr)のような企業が台頭しつつある。
デリバーの共同創業者、マイケル・クラカリス(Michael Krakaris)氏によると、同社は全米各地の倉庫の貸しスペースを使ってネットワークを構築し、アマゾンを真似した。
デリバーのような外部の企業を利用することで今年、「小売業者はどこで販売していようと、無料の2日以内配送サービスを提供できるようになり、アマゾンと同様のサービスが提供できるようになる」と同氏は述べた。
同氏によると、ウォルマートとのビジネスは「非常に急速に拡大しており」、ウォルマートの2日以内配送プログラムに参加しているサードパーティー販売業者の30%がデリバーを利用していると見ている。
その結果、Walmart.comでは2日以内無料配送が選べる商品が数百万種類増え、Amazonプライムと戦えるようになった。
消費者は、標準的な配送スピード、もしくは配送スピードが分からない商品よりも、配送スピードが早い商品をより頻繁に購入する傾向がある。
販売業者はデリバーを利用することで、商品をウォルマート、ショッピファイ(Shopify)、イーベイに2日以内配送が可能な商品として掲載できる。デリバーのビジネスモデルが究極的に成功すれば、アマゾンの手が及んでいない、アメリカのオンライン売上高の約半分を構成する販売業者にも2日以内配送が普及するだろう。
アマゾンはおそらく、これがAmazonプライムの潜在的な弱点になること、そして2日以内配送の提供による優位性が永遠に続かないことに気づいている。
だからこそ、プライム・ビデオにオリジナルコンテンツを追加したり、ホールフーズでプライム割引を提供するなど、Amazonプライムに特典を追加しているのだろう。特典の導入と維持には高いコストがかかる。
アメリカの1億人のプライム会員は、ずっと会員であり続けるだろうか?
答えは誰にも分からない。
[原文:Amazon will soon lose the biggest reason to pay for Prime (AMZN)]
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)