WeChat via China Daily
- 中国北部の省は、借金を払わない人が半径500メートル以内にいる場合、ユーザーに知らせるアプリを開発した。中国国営メディアが伝えた。
- 国営のチャイナ・デイリーによると、アプリは「a map of deadbeat debtors(借金を踏み倒している債務者マップ)」と呼ばれている。
- アプリは、市民が債務者を監視し、債務者に「返済能力がある」と思える場合、当局に通報することを期待している。
- これは、中国の「社会信用」システムの一部。同システムは個人の信頼性を評価するためのもので、すでに罰せられた人もいる。
中国北部の省は、借金を払わない人が近くにいることを知らせるアプリを開発した。国営メディアが伝えた。
「map of deadbeat debtors(借金を踏み倒している債務者マップ)」と名付けられたアプリが河北省でリリースされたと国営のチャイナ・デイリーが報じた。ユーザーは中国で最も人気のあるチャットアプリ、ウィーチャット(WeChat、微信)」からこのアプリにアクセスできる。
map of deadbeat debtors(借金を踏み倒している債務者マップ)。
WeChat via China Daily
アプリは、半径500メートル以内に債務者がいる場合、ユーザーに知らせる。
スクリーンショットを見ると、アプリは債務者の位置を表示している。
だが、これが債務者の現在位置なのか、登録済みの住所なのかは分からない。
広州デイリーがウェイボー(Weibo、微博)に投稿したスクリーンショットによると、債務者のフルネームが表示されているようだ。
しかし、写真は債務者のものなのか、その他、債務者を特定できる情報が表示されるのかは不明。
またアプリは、債務者のことを「ラオライ」と記述している。裁判所の命令に従わず、債務の返済を怠っている人のことだが、債務がどれくらい(また、誰に対して)あれば、債務者として登録されるのかも分からない。
アプリは市民が債務者を監視することを期待している。
チャイナデイリーは、アプリによって人々は「債務を返済する能力のある債務者を通報」できるようになると伝えた。
ただし、具体的にどうするのかは伝えられていない。
中国では昔から節約が美徳とされてきた。借金して浪費したり、個人的に負債を抱えることは避けるべきこととされてきた。
市民が債務者を監視し、債務者に「返済能力がある」と思える場合、当局に通報することを期待している。
Reuters/Edgar Su
社会信用システム
アプリは、中国の社会信用システムの一環と紹介された。個人の財政的な信用スコアを拡大したもので、2020年までに導入される予定。
このシステムは原則的に、ローンの支払い能力や公共交通機関での振る舞いなどを指標として個人の信頼性を評価する。
中国の多くの人は、いまだに一般的な銀行に口座を持っていない。そのため、ローンを払うことができるのか、家を借りられるのか、さらには子どもを学校に通わせることができるのかなどを審査するために使える、代わりのシステムが必要。これが社会信用システムが必要な理由とされている。
習近平政権は、個人の財政的な信用スコア以上の信頼性を評価する「社会信用」システムを導入している。
Reuters
現時点では、同システムは断片的にしか導入されていない。一部は市議会によって運営され、一部はウィーチャットの親会社のテンセントやアリババなど、個人情報を持つ民間のテック企業によって運営されている。
中国はすでに、氏名と、一部伏せられたID番号が記載されたブラックリストを試験的に運用している。
すでに、同システムによって罰せられた人もいる。
6000人以上が2018年6月から2019年1月にかけて、税金を払わなかったり、公共交通機関で不適切な行動を取ったことで、鉄道や航空機での国内外の移動が禁止されたと国営メディアは報じた。
深セン市当局は、交通規則を無視して道路を横断した人の写真を撮り、特定し、このブラックリスト上で公開している。
https://www.stc.gov.cn/facei/
WeChatはどこまで知っている?
河北省の人々が、ウィーチャットのミニプログラムである「債務者マップ」アプリを自分でダウンロードしなければならないのか、自動的にインストールされるのかは分からない。
ウィーチャットのプライバシーポリシーによると、ウィーチャットや姉妹サービスのウェイボーを中国で使うためには、電話番号とIPアドレスを提供しなければならない。また、同社の決済サービス、ウィーチャット・ペイ(WeChat Pay、微信支付)を使う場合にはクレジットカード情報も提供する。
しかし、ウィーチャットがプライバシーポリシーに記載されている以上にユーザーデータを保持している可能性はある。
WeChatのロゴ。親会社であるテンセントが位置する中国広州市にて。同社は過去に、ユーザーデータやユーザの個人的な会話の内容を中国の法執行機関に手渡している。
Bobby Yip/Reuters
中国のテック大手は過去に、ユーザーデータやユーザーの個人的な会話内容を中国の法執行機関に渡した。
2016年、中国公安部は、同国の法執行機関はウィーチャット上のプライベートな会話内容を入手し、法廷で証拠として使用することができると発表した。
2018年、中国東部にある合肥市の政府機関は、ユーザーが削除したウィーチャットのメッセージにアクセスしたと述べた。ユーザーの合意や裁判所の令状はなかったようだ。
中国のウィーチャットユーザーは10億人以上。その数はさらに伸びる見込み。
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)