今どき大学生は男女共「ライフ重視」。一橋大学生調査で男子46%、女子51%「仕事以外の生活」優先希望

女性は家庭志向、男性は仕事志向が強い……。社会人は当たり前と考えることが多い性別役割分担の考え方も、若い世代では変化の兆しがある。

一橋大学のキャリアサークルが行った同大学・大学院生「キャリアプランと共働きに関するアンケート調査」では、現役学生・院生では男女の意識差が予想より小さいことが明らかになった。

座談会の様子

アンケート回答に参加した大学生4人に集まってもらい、座談会形式で詳しく話を聞いた。

撮影:治部れんげ

調査を手掛けたのは、一橋大学の女子学生が作るサークル「如水エル」。調査は2018年9月19日~30日、ウェブを活用して実施された。女子学生97人、男子学生94人が回答した。

企画責任者の女子学生は当初「男性は仕事優先、女性は家庭優先にしたいと思っていた」という。実際にアンケート結果を集計してみると「男性もプライベート優先の人が多くて驚いた」という。

男子のプライベート優先志向が明確に

仕事と仕事以外のバランスについて、どう考えていますか?

仕事以外の生活を優先したい、と回答する男子の割合が高いことに注目。ワークライフバランスはもはや女性だけの課題ではない、という認識を採用企業も強く持った方が良い。

一橋大学女子学生の団体「如水エル」の調査を元に著者作成

実際「仕事と仕事以外の生活のバランスについて、どう考えていますか?」という設問に対し、「仕事を優先したい」と回答したのは男子が7%、女子が2%に留まる。「どちらかというと仕事を優先したい」のは男子が29%、女子が39%。両方の回答を合計すると、女子の方がやや仕事優先志向のようだ。

一方、「どちらかというと仕事以外の生活を優先したい」という回答は男子で46%、女子で51%になっている。また明確に「仕事以外の生活を優先したい」と回答しているのは男性が12%、女子が5%だった。ここで「仕事以外の生活」は家庭に限定されておらず、趣味なども含むと思われる。いずれにしても、男子のプライベート優先志向が明確に表れた形だ。

一橋大学は商学部・経済学部・法学部・社会学部の4学部で構成され、2018年5月1日時点の学生数は合計4431人。男女比は学部により異なるが、全体では男子3172人、女子1259人となっている。

今回のアンケートはウェブで行われ、TwitterやFacebookなどSNSを使って告知された他、企画した女子学生の私的な呼びかけを通して回答を依頼している。もともとワークライフバランスに関心が高い学生が積極的に回答した可能性はあるが、「男子もライフを重視したがっている」という事実をあぶり出したところは意義深い。

筆者も同じ大学を22年前に卒業した。当時は「ワークライフバランス」という言葉を聞いたことはなく、四大卒女性総合職の採用は非常に狭き門だった。かつてと今では何が変わったのか。アンケート回答に参加した大学生4人に集まってもらい、座談会形式で詳しく話を聞いた。

座談会参加者データ:

  • Aさん:商学部2年生・男子
  • Bさん:経済学部2年生・男子
  • C子さん:法学部2年生・女子(如水エル会員でアンケート調査の企画実施を手掛ける)
  • D美さん:社会学部2年生・女子(同上)
  • 司会(治部)

「どんな仕事?」よりも家族を作ること優先

司会:将来、家族を持つことについて考える機会はよくありますか?

Aさん(商学部2年生・男子):考えます。「もう20歳だから」という意識を持っています。今、ひとり暮らしをしていますが、実家に帰った時にそういう話が出ることがあります。

Bさん(経済学部2年生・男子):僕は早く結婚したいです。兄がいるのですが、すごく可愛がってもらって今も仲が良いので、自分も小さい子どもと遊んであげたい。

部活の友人とも、将来、結婚したいとか子どもが欲しいみたいな話をよくします。

C子さん(法学部2年生・女子):私自身は中高一貫の女子校で、ジェンダー教育を受けてきました。女性も自立して社会に出て活躍すべきだ、と教えられて育っています。

司会:今回、アンケートを実施して面白かったのは、多くの人が「どんな仕事をしたいか?」ということより先に結婚や出産など家族を作ることを考えていたことです。「こういうライフを送りたい」という希望があって、それが可能になるような仕事をしたいと考えていました。

D美さん(社会学部2年生・女子):Cさんと一緒にアンケートの企画や実施をしました。私自身、プライベートな生活を大事にしながら望む職業生活を送りたいと思っています。全体の回答傾向と自分の希望する方向は重なると思っています。

共働き志向、でも「出産したら3年休みたい」

司会:アンケートに「共働き家庭を持ちたいと思いますか?」という設問がありました。男子の72%、女子の87%が「持ちたいと思う」と回答しています。みなさんは、どう答えましたか?

共働き家庭を持ちたいと思いますか?

女子の約9割、男子の約7割が共働き志向。共働き家庭を持ちたくない、と回答した人に「稼ぎ手は自分と配偶者どちらですか?」と尋ねると、男女共に男性の稼ぎ手を想定する人が多いことが分かった。少数ではあるが、女子で自身が稼ぎ手になることを想定している人、男子で妻が稼ぎ手になることを想定している人もいた。

一橋大学女子学生の団体「如水エル」の調査を元に著者作成

D美さん:私は結婚してからも共働きを続けたいと思っています。ただ、出産したら3年くらい育休を取りたいと考えています。

自分の母は寿退社して、妹が中学に入るまで専業主婦でその後はパートで働いています。子どもが小さいうちは、母がしてくれたようにそばにいて育てたいと思っています。

一方で、ジレンマも感じることがあって、せっかく一橋大学に入ったのに、いったん家庭に入ったらパートしかないのはもったいないな、とも思います。

C子さん:私は共働きをしたいと思っています。

私の母も弟が中学に入るまで専業主婦で、その後、パートをしていました。子どもを大切にしてくれたことに感謝しつつも、私自身は家庭だけでなく自分の力を発揮できる職場で働き続けたいと思っています。

Bさん:僕は共働き家庭に育ったので、抵抗感がそもそもありません。将来、家庭を持っても奥さんにも自由に生きて欲しいと思いますし、3歳違いの兄ともすごく仲が良いので共働き家庭で良かったなと思うくらいです。

Aさん:僕も両親には感謝していて、好きな習い事をさせてくれるなど、良くしてくれたと思っています。母は専業主婦で、今はパートで働いています。僕は今ひとり暮らしをしていますし、弟も大学に入れば同居しないかもしれません。

子どもを大事にしてくれたことはありがたかったけれど、子どもが巣立った後の母の人生はどうなるんだろう、新しい生きがいが見つかればいいんだけど、と少し心配にはなります。

将来結婚した場合、自分がしてもらったように妻には子どもに時間をかけてほしい、と思います。自分がいちばんできることは稼ぐことだから、僕は外でできるだけ稼いでこようと思ってます。ただ、家事育児も手伝う……とは今は言わないですね、僕も家のことをできるだけやろうと思っています。

「子どもは2人以上欲しい」

司会:そもそも、皆さん、子どもが欲しいということでしょうか。何人くらい欲しいですか?

D美さん:自分は3姉妹の真ん中で、姉や妹が私立校に進学したことで教育費の観点から、「あなたは頑張って国公立に行って」というプレッシャーを感じることもありました。一人っ子に憧れることもあったけれど、今になってみるときょうだいがいて良かったな、楽しいなとも思います。経験を踏まえると子どもは多くて2人くらいでしょうか。

C子さん:私は2人欲しいです。自分には弟がいて2人きょうだいでした。子どもの数が増えると教育費がかかって家計が大変だろうな、とも思います。将来2人子どもを持って、その教育費をしっかりまかなうためにも、私は働き続けたいです。

Bさん:僕も2人きょうだいで、兄と仲良しなので、自分も子どもは2人欲しいです。3人以上だと経済的な面は心配かもしれません。

Aさん:僕は1人~3人欲しいです。それぞれ、いいところがあるかなと思うので。

どちらかが転勤になったら?

司会:就職先の育児支援制度がどのくらい充実しているか、実際に使えるかによりますが、皆さんの場合、結婚や出産で退職しなくて良い環境がほとんどだと思います。ただ、私の周りでも、女性は配偶者の転勤で仕事を辞める人が多いです。

配偶者が転勤することになった場合、あなたはどうしたいですか?-2

配偶者の転勤について行きたい人の割合は女子より男子の方が高い。全体に見ると、配偶者転勤でも辞めずに仕事を続けるような人材マネジメントが男女双方に対して求められていることが分かる。

一橋大学女子学生の団体「如水エル」の調査を元に著者作成

今回のアンケートでも、転勤に関する質問がありました。「あなたが転勤することになった場合、あなたはあなたの配偶者にどうして欲しいですか?」という設問と、「配偶者が転勤することになった場合、あなたはどうしたいですか?」という設問です。みなさんは、どう回答しましたか?

D美さん:私は自分が東京で働くことを想定しています。配偶者が転勤する場合、私は「仕事を辞めずについていく」ことを希望します。自分が転勤になったら、仕事を辞めるかもしれません。

C子さん:私は子どもがいない時期なら、どちらが転勤になっても離れて暮らすのもありかなと思います。子どもがいたが、教育環境が変わると困るので、迷いますね……。

Bさん:僕の両親は共に転勤はない仕事だったので、子ども時代にそういう問題はありませんでした。自分は国際経済学を専攻しようと思っていて、海外で働いてみたいので、その時は配偶者にも一緒にきてほしいです。

Aさん:僕も海外と関わる仕事がしたくて、配偶者には一緒にいてほしいと思っています。ただ、相手の仕事の都合もあるので、自分が結婚する前に海外勤務を経験したら困らなくてすむかも、という風に考えています。

「出産後は妻にペースダウンしてほしい」

 あなたが転勤することになった場合、あなたはあなたの配偶者にどうして欲しいですか?

男女共に、仕事を辞めてついてきて欲しい、という回答は少ない。男子学生も一昔前とは異なり、自分の転勤で妻が仕事を辞めることを当たり前とは考えていないようだ。

一橋大学女子学生の団体「如水エル」の調査を元に著者作成

司会:アンケートでは「共働き家庭を持ちたくない理由」を尋ねました。一番多かったのは「家庭と仕事の両立は現実的に厳しいと思うから」というものでした。みなさんは、どう思いますか?

Aさん:確かに僕は、子どもができたら配偶者には仕事をペースダウンして欲しい、という気持ちもあるので、分からなくもないです。

Bさん:そもそも、共働きが嫌と考える人がいることに、ちょっと驚きました。

配偶者が働くかどうか、というのは、本人が決めることではないか、と思っています。順調に子育てできていれば問題ないですし。

C子さん:私は中高でいろいろ習ったので、妊娠しやすい時期についても知っています。ただ、子どもを2人産んで、育休を取って、それまでにキャリアを確立して……と考えると、収入・体力・タイミングをはかるのが難しいんですよね。

Bさん:僕は自分が家のことをやればいい、と思っています。僕の父も料理や掃除をよくやっていたので……。

D美さん:確かに、うちも母がパートで働き始めてから父が洗濯や掃除をするようになりました。それまではお父さん、何もしてなかったんだな、と気づきました。

母は私に「頑張りすぎなくていいよ」

司会:ご自身の家庭で良かったことは、自分の子どもにもしてあげたいし、良くないところは反面教師にしようと思うものですよね。

Aさん:僕はこれまで不自由せず育ててもらったので、自分の子どもにも経済的には同じかそれ以上にしてあげたいと思っています。今は親に負担をかけないように、コストのかからない寮に入って寮の仕事をすることで謝金をもらったり、奨学金で学費を払ったりしています。

Bさん:子どもの時にやりたい習い事をやらせてもらったことには、感謝しています。僕も自分に子どもができたら、やりたいことを積極的にやらせてあげたいです。

C子さん:私は母から「そんなに頑張りすぎなくていいのよ」と言われてきたように思っています。大学進学で文系か理系か迷っていた時や、私立大学に受かった後にも一橋の受験勉強をしていた時など、折に触れてそういう風に言われてました。

座談会の様子

Dさんはアメリカ留学を通して、日本の主婦が作るお弁当はアメリカ基準では「やりすぎ」だと気づいた。

撮影:治部れんげ

D美さん:私は自分に子どもができたら優先したい、という気持ちと、母みたいに子どもに自分の人生を捧げることは自分には向いていないかな、という気持ちがせめぎ合っています。

高校生の時、アメリカに留学しました。ホームステイ先のシングルマザーに1年間お世話になり、彼女の様子を見ていて、日本の「主婦orキャリアウーマン」と言う二項対立にとらわれてない生き方もあるんだ、と気づかされました。子どもとの時間を大事にして、仕事もして、綺麗に着飾って恋人もいました。お弁当もアメリカの基準で見ると、日本の主婦は「やりすぎ」なんだなな……と気づくきっかけになりました。

これから、自分が満足できるようなプライベートや仕事のやり方を考えていきたいです。

一橋でも「主婦になる」想定の女子も

司会:ふだん、こういうテーマで同じ学生さん同士、話す機会はあまりないと思うのですが、どうでしたか?

Aさん:子どもを優先したい、という考えは、今日話した皆が一致していて、嬉しかったです。

Bさん:一橋の女性でも「主婦になる」ことを想定していることが意外でした。もったいないかな、と思います。

Aさん:そうですよね。

C子さん:もっと男女で意識の差が大きいと思っていました。男子学生も意外と私生活を重視していて、転勤や育休について考えていることは発見だったと思います。

司会:みなさんが希望する働き方について、何かご意見はありますか。

C子さん:私の父は営業部門の管理職だったのですが、フレキシブルというか、母が体調を崩した時は休んで家にいてくれました。そういう働き方が広まるといいなと思います。

D美さん:私もリモートワークが充実しているといいなと思います。転勤は絶対にしなくてはいけないものではなく、希望者がするものになったら私生活と両立しやすいな、と。

Bさん:僕は、両親を見ていて、共に協力しあえば何とかなるという感じを持っています。

Aさん:自分が求められているという実感があると、充実感を覚えるので、そういう仕事をしていきたいと思います。

(構成・治部れんげ)

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