ユニクロ(UNIQLO)は1月24日、スポーツに関する世界的な取り組み「グローバル スポーツ プロジェクト」の一環として、スウェーデンオリンピック委員会とメインパートナー契約し、オリンピック・パラリンピックチームの公式ウエアを提供することを発表した。
固い握手を交わすユニクロの柳井正ファーストリテイリング会長兼社長(左)とスウェーデンオリンピック委員会のピーター・レイネボCEO。
スウェーデンチームはソチ、リオ、平昌オリンピックと3大会連続で、地元企業で世界NO.2のアパレルであるH&Mヘネス&マウリッツ社が手がけてきたが、その後を猛追する世界NO.3のファーストリテイリング/ユニクロが手がけることになる。
「本当は日本に提供したかったが…」
登壇した柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、「スウェーデンオリンピック委員会からのオファー」だったことを明かした。過去にはソルトレークとアテネオリンピックに公式服を提供したことがあり、日本発のグローバル企業としては2020年に控えた東京オリンピック・パラリンピックでの協業は絶好の機会となる。
まずはユニクロの既存商品の中からウルトラライトダウンやブロックテックパーカなどを提供する。
だが、「当然、日本の公式服を提供したかったが、諸事情によりできなかった」と明かし、「スウェーデンは小さな国でありながらオリンピックで大変好成績を上げている。日本代表かそれ以上の価値を持つものだと思っている」と続けた。
ユニクロは2018年8月、ストックホルムにスウェーデン1号店となるフラッグシップストアを、ストックホルム都市計画の父、スヴェン・マルケリウス設計の歴史的建造物『スウェーデンハウス』にオープンした。会見で柳井社長は次のように語った。
「ユニクロは世界一のアパレルカンパニーになることを目指している。自らのブランドストーリーを世界に向けて積極的に語る段階にある。ヨーロッパでも急速な店舗展開を続けている。
スウェーデン1号店オープンのプロセスの中でスウェーデンの人々と交流し文化に触れ、先進国としてのあり方、文化的な洗練、美意識の高さ、消費者の成熟度に大変感銘を受けた。少子高齢化が進む日本をはじめとした近代国家のあるべき姿だと思っている。
その中で、スウェーデンオリンピック委員会から光栄なオファーを受けた。大変うれしく思っている。両者で協議を重ねてきた。その結果として、新しい服の在り方、すなわち、全天候型の新しい快適性を備えた次世代の服を世界に発信できると確信した。グローバルカンパニーとしてぜひサポートしたい」
さらに、
「スウェーデンはわれわれが模範とすべき国だ。私がスウェーデンに行ってまず感じたのは、人々の生活に余裕がある。人々の間に信頼感、フレンドシップがある。生活全体を楽しみながら一生懸命生きている。
普通ではありえない。いろんな人種の人がいて、調和しながらすばらしい社会を作っている。しかも、文明、文化とも進んでいて、余裕がある国。こういう国と一緒にオリンピックの衣料を提供するのは、われわれにとって新しいライフスタイルを一緒に創っていくことに通じると思った」
高品質、革新性、持続可能性を評価
スウェーデン・ストックホルムの王立公園に面した歴史的建造物「スウェーデンハウス」内に北欧1号店として2018年8月にオープンしたユニクロ クングストラッドゴーダン店。
提供:ユニクロ
来日したスウェーデンオリンピック委員会のピーター・レイネボCEOは、ユニクロを選んだ理由をこう語った。
「今回の契約は大変自然な展開だった。文化的にも歴史的にも共通ビジョンがある。ユニクロには『クオリティ』と『イノベーション』と『サステイナビリティ』がある」
さらに、現在、大河ドラマ「いだてん」の主人公にもなっている金栗四三も引き合いに出した。
「スウェーデンは1912年に初めて日本がオリンピックに出場した歴史的な場所。マラソン選手はゴールはできなかったが、すばらしいストーリーがある」
契約期間は2019年1月から4年間。開会式、閉会式、トレーニングと競技、余暇時間、報道発表時に着用するユニフォームを提供する。当初はウルトラライトダウンやブロックテックパーカ、ヒートテックなどの既存製品を提供。2019年中に選手団専用のカラーリングやスタイリングの製品の提供も開始する予定だ。
アスリートとテクノロジーのコラボ
日本人が初めてオリンピックに参加したのは1912年のスウェーデンという縁がある。会見には大河ドラマ「いだてん」主人公の金栗四三の紹介パネルも用意されていた。
これまでユニクロは、テニスの錦織圭や国枝慎吾、ゴルフのアダム・スコット、最近ではテニスのロジャー・フェデラー、スノーボードの平野歩夢ともグローバルアンバサダー契約を結び、ユニクロと、究極の日常着「LifeWear」のコンセプトを広めることに力を入れている。すでにアダム・スコットと共同開発した「感動パンツ」は大ヒット商品になっている。
今後もトップアスリートと独自のテクノロジーを用いながら、パフォーマンスをサポートし、日常生活をより快適かつ機能的にする商品開発を強化していく。平野選手との契約を機に、ウィンタースポーツ商材の本格開発も宣言したばかりだった。
(文・写真、松下久美)
松下久美:ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表。「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。2017年に独立。著書に『ユニクロ進化論』。