1日に数万枚、レシート買い取りアプリ「ONE」が集めてきたレシートのデータの使い道とは(写真はイメージです)。
現役高校生の起業家が率いるワンファイナンシャルは1月29日、レシート買い取りアプリ「ONE」で集めてきた全国のユーザーの消費データを、企業向けにレポートする新サービス「ONE Insight」を正式発表した。ONE Insightのサービスではリアルタイムで更新されるデータを見ることができる上、キーワードごとに他社のデータも入手できるという。
レシート買い取りアプリ、ONEの本当の狙いがここから始まる。
撮影:今村拓馬
ワンファイナンシャルといえば「10円でレシートを買い取ります」と、レシートを撮影すれば登録口座に10円が振り込まれるアプリ「ONE」で、2018年に大きな注目を集めた。サービス開始と同時にユーザーが殺到して資金が追いつかず、一時はサービスを停止する騒動にも発展した。
その後、企業からONEに広告出稿を受けて資金を集めつつ、レシート買い取りを続けてきたが、大きく次の一手に出た形だ。
買い取られたレシートのデータが公開レポートされることで、自社のみならず他社のデータも含む、購買の実態も見えてくる。
「テクノロジーの力で、ブラックボックスだったデータをオープンにしていく。ONEくらい、あるいはそれ以上に魂を込めたプロダクト」
と、ワンファイナンシャルCEOの山内奏人さんは話している。
1日あたり数万枚のレシートが創り出すビッグ“消費”データ
ONE Insightのサービスで利用できるデータのイメージ。
提供:ワンファイナンシャル
新サービスのONE Insightは、これまでにONEによって1日あたり数万枚を集めるレシートから、日本全国の購買情報を個人が特定されないよう、抽象化して抽出。アプリの利用者データと合わせて、商品を買った人の性別、年代、地域、購買が発生した時間、場所などをグラフ化して提示する。買い取ったレシートにより得られる情報が増えていくにしたがって、ほとんどリアルタイム更新されるという。
利用者は、月額制でキーワードごとに課金される。
ワンファイナンシャルによると、利用目的としては次のようなケースを想定している。
- 製品開発者向け:自社および他社の利用者の分析ができる。
- マーケッター向け:どのタイミングで、属性にどんな変化が生じたかという、広告の効果測定ができる。特定の時間帯のピークに自社広告を打つなどして、競合他社の顧客を、自社へ誘導できる。
- 戦略担当向け:自社や他社の購買傾向を知ることで、加盟店やフランチャイズ店の新規出店戦略が立てられる。
- 投資家向け:投資先企業や投資対象市場のりたるタイムでの市場調査ができる。
狙いはディズニーランドから100円ショップまで
ディズニーランド、カフェ、牛丼屋、ありとあらゆるレシートのデータをONEは蓄積してきたという(写真はイメージ)。
Shutterstock
10円でレシートを買い取るONEは現在、1日の上限額を設けてサービスを継続している。利用者殺到により課題となった資金源は、企業から広告出稿として資金を調達。引き換えにONEで集まった統計データを企業に一部、提供するという事業モデルで乗り越えてきた。
購買データはアマゾンをはじめ、オンラインショッピングのサイトにも蓄積されているが、リアル店舗購買データが、店舗・企業をまたいで大量に収集できる点が、ONEの強みといえそうだ。
「コンビニからディズニーランド、ガソリンスタンド、100円ショップまでありとあらゆる購買情報をもっています。レシートがこの世に存在するお店であればデータをもっていると考えていただいていい」(山内さん)
ワンファイナンシャルの山内奏人さん。この春高校を卒業、大学に進学する。
撮影:今村拓馬
ONEがレシートを集めてきた理由は、まさにこの購買データの蓄積。その分析と活用によって、小売や経済のあり方を変えていくという狙いが、ONE Insightのサービスに結実した形だ。
「リアルな全国の消費動向」というブラックボックスをオープンに
オンラインで世界がつながる今、そこで蓄積されるビッグデータという“21世紀の石油”の活用に、各企業がしのぎを削っている。
山内さんは、BtoBへのデータの提供について、地理空間分析の米企業オービタル・インサイトの例を上げる。同社は衛星やドローン、気球などから車両や農地、石油タンクなどを撮影したデータを機械学習で解析し、量や動きを測定。大企業や政府、NGOなどに提供するビジネスで注目されている。
「僕たちもテクノロジーの力を使って、これまでブラックボックス(中身のわからない不明なもの)だったデータをオープンにしていくという点で同じです。これは世の中的に不可逆の流れだと思っています」(山内さん)
(文・滝川麻衣子)