秋篠宮家の長女・眞子さまと婚約が内定している小室圭さんが1月22日、母の借金について説明する文書を公表した。金銭的な問題は「すべて解決済みの事項であると理解してまいりました」などと主張する内容だった。
起死回生の文書とはならなかった
今回の小室さんの文書の発表ついて、宮内庁側は「今後、特段の対応も考えていない」という見解を示している。
REUTERS/Shizuo Kambayashi
そもそも小室さんがこの文書を公表したのは、2018年11月、秋篠宮さまが53歳を迎えるにあたっての記者会見で、
「2人が結婚したいという気持ちがあるのであれば、やはりそれ相応の対応をするべきだと思います」
と述べたことに端を発している。
「相応の対応」についての秋篠宮さまの説明を私なりにまとめると、借金問題についての「説明→納得→祝福」だ。それがそろわないと、正式な婚約に相当する「納采の儀」は行えない。それが秋篠宮さまの考えで、その対象はすべて「国民」だと以前、本欄でも書いた。
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この秋篠宮さまの発言を受けて文書を出したということは、すなわち「2人が結婚したいという気持ちがある」ということだろう。起死回生の文書にしなければならないことは誰の目にも明らかなのだが、そうはならなかった。
その日のうちに400万円以上を貸したという当事者(小室さんの文書の表現によれば「(母の)元婚約者の方」)がメディアの取材に応じ、「解決していない」と反論した。小室さんサイドによる「悲しかった出来事」なども語っていた。火に油。そう表現したメディアもたくさんあった。
不思議な熱のある文章
秋篠宮さまは2018年11月の記者会見で、眞子さまと小室さんの結婚について、結婚したいという気持ちがあるなら「それ相応の対応」と言及された。
REUTERS/Imperial Household Agency of Japan
本欄でも書いたが、私は眞子さまの結婚を応援したい気持ちをずっと持っている。眞子さまを1人の女性ととらえるなら、好きな人と結婚するのが一番だと思うからだ。小室さんがふさわしいのかという批判は承知している。
しかし、美智子さまという方を前提に、皇室に連なる人の「規格」を考える時代は終わったと思っている。1月末発売の拙著『美智子さまという奇跡』にそのことを書き、小室さんも「ありのまま」で受け入れる時代だと書いた。
そのような立場から、文書を読んだ。不思議な熱のある文章だと感じた。借金については「借りたのではない。贈られたもの」という認識を示していて、従来から報じられていた通りのものだった。
今回の文書では、その認識に至る経緯が事細かく書かれていた。 婚約解消について「突然の一方的な申し入れであり、また婚約を解消したい理由について明確なご説明をしていただけなかったことから」母が憔悴した様子を見せていた、とあった。だが、最終的には「元婚約者の方のお気持ちは変わらないと理解し」受け入れたという説明だった。そして、
「その際に母が婚約期間中に受けた支援については精算させていただきたいとお伝えしたところ、元婚約者の方から『返してもらうつもりはなかった』という明確なご説明がありました」
とした上で、婚約解消から1年ほど後に返済を求める手紙を受け取ったと説明した。
伝わってきた母の悔しさと憤り
そこで母が専門家に相談した上で元婚約者と会い、返済しない旨を伝えたところ、元婚約者からは「私も専門家に相談して何かあればこちらから連絡しますという」反応だった。その後も連絡は入らず、近所に住むので偶然会うこともあったが、金銭の話題が出たことはなかった。そう説明を続け、こう結んだ。
「私の母と元婚約者の方との過去の関係は以上のとおりです。」
この文章の後、突然の報道への困惑や、援助への感謝、理解を得たい旨なども書かれてはいた。
だが、それよりも伝わってきたのは悔しさ、憤り。そんな感情だった。誰の感情か。小室さんでなく、母。そう感じた。小室さんの横で主張する、母の様子が目に浮かぶようだった。
文書に書かれた言い分が正しいかどうかはわからない。朝日新聞による元婚約者の言い分は違う。婚約解消したのは、「金銭援助を求められることが常態化し、生活が苦しくなってきたから」。その際に「月々1万円くらいずつしかお返しできませんが」と返済の申し出があったが、「それでは少なすぎるので再考してください」と断った。文書公表当日の、朝日新聞への説明だ。
婚約解消→母からの金銭返済申し出→元婚約者からの拒否。この道筋は一致しているが、お互いに描いている絵が、全く違う。
言われっ放しで引き下がれない
眞子さまと小室さん、2人の結婚の意思は固いと報じられるが……。
Kazuhiro Nogi/Pool via REUTERS
そんな状態で公表してどうする。その指摘はもちろんその通りだと思う。元婚約者と話し合わずに文書を公表したのは、理解できないと何人もの人が指摘していた。
だが私が感じたのは、小室さん母の「意地」だった。言われっ放しで引き下がる訳にはいかない。そんな思いがこもっているような気がして、きっと負けず嫌いの人なんだろうなと思う。負けず嫌いの発揮しどころが、間違っているような気もするが。
今回の件でいろいろな人がコメントする中、小室さん寄りの見解を表明した唯一と言ってもいい人が、小林よしのりさんだった。元婚約者への批判をはっきり表明したというのが正確な表現なのだが、文書公表翌日のブログにこう書いていた。
<今頃になって、400万円返せと言い出した男の方が常識ないだろう。男としてみっともない。>
小室さん母は、まさにそういう気持ちなのだろう。あちらは悪くないのか、なんであちらの言い分ばかり出るのだ、と。
そう思えば、「400万円くらい返してしまえばいいのに、なぜそうしないのか」という素朴な疑問に対する思いも推察できる。こちらは悪くないのに、なぜ返す必要があるのか。意地を通す、負けず嫌いの母。
母の思いを大切にする小室さん
文書のおかげで、そこまではわかった。わかったら何なのか、と聞かれると答えにくいが、とにかくわかった。そして、新たな気がかりが湧いてきた。何かというと、「小室さん、ママの言いなりなのでは」という心配だ。
秋篠宮さまからのレッドカードが出ているという状況で、母の言い分を公にした小室さん。結婚というゴールへの勝算より、母の思いを大切にしたように見える。
小林さんはブログで、
<たった400万円くらい、わしがそろそろ新車買わなきゃと思っていたのを諦めて、元婚約者にくれてやるよ。それで小室家の問題が片付いて、眞子さまの希望が叶うなら惜しくはない。>
と書いている。
小林さんの男気は歓迎するが、「眞子さまの希望」が叶った先にママの言い分を大切にする小室さんがいる。そのことが、すこーしだけ心配だ。眞子さまよりだいぶ長く生きている女性だから。
矢部万紀子(やべ・まきこ):1961年生まれ。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、「AERA」や経済部、「週刊朝日」などに所属。「週刊朝日」で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長を務めた後、2011年退社。シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に退社し、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』。『美智子さまという奇跡』が1月末に発売予定。