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- スターバックスの元CEOハワード・シュルツ氏が、2020年の米大統領選に「中道派の独立候補」として立候補することを検討していると発言したことで、政治的左派を激怒させている。
- 民主党関係者は、財政面で保守的なビリオネアの立候補に反対だ。次の大統領選で、未来の民主党候補がトランプ大統領を打ち負かすチャンスを潰す可能性があると考えているからだ。
- 民主党のストラテジスト、イアン・ラッセル(Ian Russell)氏は「結果的にドナルド・トランプの再選に貢献するだけの、金持ちの気まぐれだ」と指摘する。
- 一部の民主党支持者は、シュルツ氏が立候補するならスターバックスのボイコットを支持するという。
何年にもわたって進歩的な政策を推し進めてきた後、スターバックスの元CEOハワード・シュルツ氏は左派を激怒させている。
シュルツ氏の罪 —— それは、独立候補として大統領選への立候補を検討していることだ。
同氏が2020年の米大統領選に「中道派の独立候補」として立候補することを検討中だと発言した後、民主党の関係者や支持者はこれに強く反対している。未来の民主党候補者が必要になるであろう反トランプの有権者をシュルツ氏が吸い上げ、チャンスを台無しにしてしまうと彼らは言う。
民主党のストラテジスト、イアン・ラッセル氏は「(立候補は)善意によるものだという彼の言葉を信じている。ただ、結果的にドナルド・トランプの再選に貢献するだけの、金持ちの気まぐれだ」とBusiness Insiderに語った。「独立候補の道はないというだけだ。世界中のカネを集めても、政治的物理の法則は変えられない」
ラッセル氏は、民主党関係者の中にシュルツ氏の立候補をあえて支援する人間がいるかどうかは分からないと付け加えた。
2016年の大統領選でヒラリー・クリントン氏の戦略コミュニケーション担当を務めたエイドリアン・エルロッド(Adrienne Elrod)氏は、「次の大統領選は非常に厳しい戦いになるだろう。トランプを倒すためには、総力戦で挑まなければならない」とBusiness Insiderに語った。
多くの民主党関係者はシュルツ氏の立候補を絶望的な「虚栄心の表れ」だと酷評していて、その考えを捨てるようシュルツ氏にプレッシャーをかけていくだろう。
2016年の大統領選でクリントン氏の広報責任者を務めていたジェシー・ファーガソン(Jesse Ferguson)氏は、「彼はいつか鏡をのぞいて、なりたいのは解決策の一部なのか問題の一部なのか、決めなければならないだろう」とBusiness Insiderに語った。「アメリカ人が二大政党制に乗り気でなくても、こうした一党支配にはもっと乗り気でない」
「#BoycottStarbucks」
そして、シュルツ氏の罪に対する罰は同氏を越えて広がっている。左派の一部は、元CEOが大統領選に立候補したらスターバックスをボイコットすると脅している。
これでスターバックスのボイコットは正当化されるだろう。効果の少ないものでも、恐らく彼を引き下がらせることができるだろう。
ハワード・シュルツが大統領選に足を踏み入れるようなら、@MoveOnや@IndivisibleTeam、@DNC(民主党全国委員会)、主要労働組合、大統領選の主要候補は全て、彼が手を引くまで自身のEメール・リストを使ってスターバックスのボイコットを促すべきだ。
バーニーについてあなたが言うであろうことを言おう —— 少なくとも彼は、何かを台無しにすることを避けるため、民主党の予備選挙に立候補した。
ハワード・シュルツは自身の愚かな虚栄心による立候補のために、そんなことも気にかけることができない。#BoycottStarbucks
リベラル系シンクタンク「アメリカ進歩センター(Center for American Progress)」のニーラ・タンデン(Neera Tanden)所長は 「民主主義の破壊を手助けするような虚栄心の投影は最低だ」とツイートした。
「彼が選挙戦に加わるなら、わたしはスターバックスのボイコットを始めるだろう。最終的にトランプが勝つのを助けるような人間の選挙資金になるものには、1ペニーも払わない」とタンデン氏は付け加えた。
他の民主党関係者は、民主党の候補者は独立候補に勝てるだろうとやや楽観的だ。
ニューヨーク州民主党の元幹部、バジル・スマイルク(Basil Smilke)氏は「どうしてもと感じるなら」シュルツ氏は立候補すべきだと言う。
「接戦なら確かに彼は(有力候補者を)妨害する候補者になるかもしれない。だが、2020年の勝者は僅差では勝てないだろう」とスマイルク氏はBusiness Insiderに語った。
エルロッド氏は、自身の朝のコーヒーをボイコットするのは「ばかげた」アイデアだと言う。しかし、同氏の考えに同意しない人たちもいる。
誰もあなたを求めてない。あなたがこの国をまとめられるのは、スターバックスの大規模ボイコットだけ。
わたしはこの国を愛してる。肥大化したエゴを持つもう1人のビリオネアが大統領に立候補することには、冗談抜きで反対だ。
立候補するな。ハワード・シュルツ。
きみにできるのは民主党から票を奪い、トランプを選挙で勝たせることだけだ。
おれたちは徹底的にスターバックスをボイコットする。試すな。
ハワード・シュルツが独立候補として大統領選に立候補するなら、#BoycottStarbucks(スターバックスをボイコット)するだけでなく、毎日外で抗議する。
彼のエゴと身勝手さは恥さらしだ。
Business Insiderはスターバックスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
シュルツ氏はアクシオス(Axios)に対し、反発を心配してはいないと語っている。同氏は「この件で、ツイッター予備選挙に勝つつもりはない」と言い、「生まれたときからの民主党員や生まれたときからの共和党員は、ツイッターに何時間も費やしていないだろう」と語った。
1月27日(現地時間)の一連のインタビューでシュルツ氏は、医療、教育、国債といった重要課題に対する自身の考えの概要を示した。財政面で保守的な同氏の考え —— 社会的セーフティーネットの政府予算の削減を支持している —— は、2020年の大統領選で他の民主党候補の考えとは相容れないだろう。
ニューヨーク・タイムズのインタビューでシュルツ氏は、民主党が約束している「メディケア・フォー・オール」の名で知られる単一支払者制度(連邦政府が徴収した税金で医療費をまかなう制度)による医療は、トランプ大統領が約束しているメキシコとの国境沿いの壁を建設することと同じように「誤り」だと述べた。
「21兆ドル(約2300兆円)の債務残高に加えて、人々が政府による大学の無償化や医療サービスの無償化などを支持しているのを聞くと、どうやってこの全てをまかない、国を破たんさせずにいられるのか? と疑問に思う」と、シュルツ氏は同紙に語った。
同氏はこれを「この国に対する国内最大の脅威」と呼び、以前から懸念を示していた —— これもまた、2017年の減税後、財政赤字をほとんど気にしなくなったトランプ大統領や共和党と一線を画している(この減税によって、今後10年で国の借金はさらに1兆8000億ドル増える見込みだ)。
シュルツ氏は2018年にスターバックスを去ったが、今も同社の株式を3770万株以上 —— 全体の約3% —— 持っている。2018年のシュルツ氏のスターバックスでの給料は1ドルだったが、株を含め、会社から受け取った報酬総額は3010万ドルだった。
エクイティ・リサーチ・プラットフォームのSentieoは1月28日朝、スターバックスに対するボイコットの呼びかけはツイッターで加速しているものの、同社に対する過去のボイコットに比べればまだ小規模だとレポートした。
しかし、ボイコットは売り上げに相当の打撃を与えなくても、成果を出すことができる。
例えば、Sentieoによると、アメリカで客に対する人種差別が疑われた問題や「赤いカップ」論争をめぐってスターバックスをボイコットする動きが広がったときも、株価や世界全体の既存店売り上げに大きな影響はなかった。ただ、2018年には人種差別があったのではないかと同チェーンに対する反発が強まり、店内やトイレの利用に関するポリシーの変更と従業員の再教育のため、スターバックスはアメリカの店舗を数時間閉店することになった。
民主党支持者によるスターバックスに対するボイコットは、同社の売り上げには大した影響を及ぼさないかもしれない。だが、スターバックスの評判を傷つけることはできる —— そして、もしかしたらシュルツ氏に立候補を思いとどまらせるかもしれない。
(翻訳、編集:山口佳美)