コールドウォレットを搭載したブロックチェーンスマートフォン「FINNEY」。
1月29日、スイスに本社・イスラエルに開発拠点を置くSIRIN LABS(シリンラボ)は、東京で発表会を開催。ブロックチェーン機能搭載の最新スマートフォン「FINNEY」の日本発売を発表した。
発表同日より、公式サイトにて発売スタート。価格は999ドル(10万9309円)で、2月末までは特別価格899ドル(9万8368円)となっている。
スライド動作で有効になる「コールドウォレット」搭載
背面上部をスライドさせると、サブディスプレーが表示される。
「FINNEY」の特徴は、ブロックチェーン用のコールドウォレット(通常時はインターネット上からアクセスできない保存領域)を搭載していることだ。
本体上部の背面がスライド式になっており、スライドさせると2インチのタッチ対応モノクロ液晶が表示されてコールドウォレット機能がオンになり、送金などの操作ができるようになる。送金のためのパスワード入力や支払いのためのQRコードなどは2インチのディスプレーで行う。
コールドウォレットは本体OSのAndroidとは独立して動作しており、スライドしてオンのときのみ内部で有線接続されるという。
シリンラボのFounder & Co-CEOのMoshe Hogeg氏。
発表会に登壇したシリンラボのFounder & Co-CEOのMoshe Hogeg氏は、「最近のハッキングの手口はキーボードの入力を抽出してパスワードなどを盗む手口と、スクリーンショットを撮って画面の内容を入手する手口が多い。FINNEYはスマートフォン本体をハッキングしても、コールドウォレットは独立しているのでハッキングできない」と話している。
シリンラボはセキュリティー性能に特化したスマートフォンを開発しているメーカーで、2016年には「Solarin」という軍事レベルのセキュリティー性能を持つスマートフォンをリリース。「セキュリティーの性能があまりにも高すぎたため、ロシアでは発売禁止になった」(Hogeg氏)ほどだという。
そのSolarinなどで蓄積された技術が「FINNEY」にも投入されている。「Solarin」は9500ポンド(約150万円)と高価だったが、「FINNEY」は一般的なハイエンドスマートフォン程度の価格帯となっている。
ブロックチェーンスマホは仮想通貨を「日常」にできるか?
支払いなどに使用する際のQRコードも、コールドウォレットのディスプレーに表示される。
「FINNEY」を開発したきっかけとして、Hogeg氏は「6年前にビットコインを購入したのが始まり」とあげており、その際に感じた実体験を商品に反映しているという。
「開発自体は2年前にスタートしている。当時でも仮想通貨の取り引きは複雑だったので、シンプルに取り引きができるようにしたかった。
理想としてはクルマのように、ユーザーがエンジンの仕組みを理解していなくてもアクセルを踏めば走るようなシンプルさを目指して開発を進めた」
さらに、Hogeg氏は仮想通貨の現状について「投機的な利用とマネーロンダリングなどの不正メイン。仮想通貨をもっと一般の人たちに普及させるためには、もっと手軽に使えるようにする必要がある」と解説。
「スマートフォンは生活の中で重要なデバイス。朝起きて最初に触り、就寝前最後に操作する。一説には全世界で使われている歯ブラシよりもスマートフォンの数の方が多い」と、スマートフォンで安全かつ手軽に仮想通貨の取り引きが扱えるようになることを、仮想通貨自体の普及のキーポイントに上げている。
日本での販売目標2万台を実現するには?
公式サイト以外にもアマゾンやリアル店舗での販売も計画している。
今後の「FINNEY」の販売目標について、全世界で約2万台のプレオーダーを受けており、全世界での販売目標は10万台、日本でも2万台と強気だ。
一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の調査によると、2018年3月時点では現物取引で仮想通貨の取り引き利用者は約350万人、証拠金・信用・先物取引として取り引き利用者も約14万2000人と発表している。
その後の、国内における仮想通貨マーケットの冷え込みはよく指摘されるところだ。ビットコインのグローバルでの取引状況をみると、2018年3月26日時点ではそのうち約6割が日本円での取引だったのに対し、2019年1月30日時点では、全体の約6%と比率にして10分の1になっているのが現状だ。
外部の発表データをもとに、Business Insider Japan編集部が作成
いま、こうした端末の入手を考えるほど多くの仮想通貨資産を保有するユーザーが日本で何人いるかは気になるところだ。
なお、現状では自社サイトのオンライン販売のみの取り扱いだが、今後はAmazon.co.jpでの販売も予定しており、東京でのリアル店舗オープンも計画しているという。
証明書画面を確認したところ、日本国内で電波を扱う際に必須の技適(技術基準適合証明)もしっかりと取得していることが確認できた。Japanの文字の下にある技適マークがそれだ。
仮想通貨についての教育ビデオを見ると10ドル前後がもらえるサービスを用意しており、端末購入代のサポートにしたいとのこと。
(文、撮影・中山智)
中山智:海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。