北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。
KCNA via AP
- アメリカの国家情報長官は1月29日(現地時間)、アメリカがリードする国際秩序に対するさまざまな脅威について、上院の情報特別委員会で報告した。
- 情報コミュニティーは、アメリカにとって最大の脅威は、選挙への介入やサイバー攻撃、スパイ行為だと結論付けている。
- 他にも、なかなか進まない北朝鮮の非核化や過激派組織「IS(イスラミックステート)」復興の可能性などもトランプ大統領のこれまでの発言に反し、脅威と見なしている。
- また、トランプ政権の孤立主義の傾向が、アメリカの同盟国や友好国をロシアや中国に近付かざるを得なくしているかもしれないという。
アメリカの国家情報長官と各情報機関のトップらは1月29日、最新の『世界の脅威評価(Worldwide Threat Assessment)』の内容を上院の情報特別委員会に報告した。この年次報告書は、アメリカにとって重要な世界の脅威をまとめたものだ。
中でも、中国とロシアによるサイバー攻撃の脅威と同盟国の喪失は、第二次世界大戦後の国際秩序に対する重大な脅威として強調されている。また報告書は、北朝鮮の非核化に対するコミットメントや、ISの"敗北"に関するホワイトハウスの声明と明らかに矛盾している。
サイバー攻撃、スパイ行為、選挙への介入
「我々は、全ての敵対国ならびに戦略的競争相手がアメリカの政策に影響を及ぼすべく、サイバー空間でのスパイ行為、攻撃、影響力の強化および一体化を進めていくと見込んでいる」と、報告書は述べている。
2016年の大統領選へのロシアの介入を認めたダン・コーツ(Dan Coats)国家情報長官は、海外の集団が2018年の中間選挙にも影響を及ぼそうとしていたと述べた —— そして上院での報告の冒頭で、2020年の大統領選が情報コミュニティーにとっての最優先事項だと強調した。
「我々は、海外のアクターたちが2020年の大統領選を自らの利益を増やすチャンスと見るだろうと考えている」と、コーツ長官は述べた。「過去の選挙における試みやそこから得た経験など互いに情報交換しながら、彼らがその能力に磨きをかけ、新たな戦術を追加してくると我々は見ている」
北朝鮮は非核化を引き延ばしている
報告書はまた、なかなか進まない北朝鮮の非核化にも触れている —— これは金正恩委員長との和平を模索しているトランプ政権が認めたがらないことだ。
報告書には「(情報コミュニティ―は北朝鮮が)その大量破壊兵器や運搬システム、製造能力の全てを完全に放棄する可能性は、依然として低いと評価している」と書かれている。
北朝鮮は核実験を1年以上行っていないが、指導部は、体制の存続のためには核能力が極めて重要だとの考えを持ち続けていると、報告書は指摘する。ホワイトハウスは1月、平壌で進捗が滞っていることを認めた。
ISは支配地域を大きく失った、だが敗北してはいない
道路の真ん中に打ち捨てられたISの看板(イラク、カラコシュ)。
Chris McGrath/Getty Images
トランプ大統領は、自らの政権がISに致命的な打撃を与えたと主張しているが、大統領に仕える情報コミュニティーは依然としてこのテロリスト組織をアメリカの脅威と見なしている。
報告書はイラクやシリアにISの戦闘員が数千人規模で残っていると指摘し、支配地域を拡大する可能性は低いものの、東半球で国際的なネットワークを築いているという。長期的には、ISはソーシャル・ネットワークの力を使って不安定を引き出し、アメリカに対する「国外からの攻撃を追求する」だろうと、報告している。
ヨーロッパにおける同盟国の喪失
報告書には「アメリカの同盟国や友好国の一部は、アメリカの安全や貿易に関する政策が変化しているとの認識から、ワシントンから距離を置き、新たな二国間、多国間連携によりオープンになっている」とある。
はっきりとは書かれていないが、報告書は、トランプ政権が繰り返してきた"反NATO"の姿勢が同盟国をアメリカから遠ざけているかもしれないと示唆している —— そしてトランプ大統領が追い払ったパートナーシップを、ロシアや中国が受け入れたがっていると警告している。
(翻訳、編集:山口佳美)