freee CEOの佐々木大輔氏(中央)、執行役員の武地健太氏(左)、CTO 横路隆氏。
クラウド会計ソフトのfreeeは1月30日、全国253の信用金庫とAPI(ソフトウェア機能の共有)連携することを発表した。スモールビジネスの業務効率化へ向けて、他社とも連携した大規模な「オープンプラットフォーム」をつくる —— 。会見で、佐々木大輔CEOは、日本企業の99.7%を占める中小企業支援を核とする、今後の展望を語った。
関連記事:北陸の90歳がfreeeを使う。スモールビジネス支援にかける創業者・佐々木の想い
99.7%の企業の生産性をあげる
登壇する佐々木氏。日本の企業のうち、99.7%が中小企業だという。
「これは、単純に連携先が増えるということではありません。『誰もが強くスマートにビジネスを展開できる』そんなfreeeの構想の、大きな大きな一歩になる」
会見で、佐々木CEOは力強くそう語った。
日本企業のうち99.7%が中小企業、だが、IT化の遅れなどからその生産性は大企業と比べると2分の1というデータもある(中小企業白書2018年版より)。そんな日本のビジネスの大きな課題を解決するためにアクセルを踏む。
その第一弾が、全国253の信用金庫とのAPI連携だ。
佐々木氏によると、「クラウド会計ソフトfreee(会計freee)」の法人ユーザーでは、信用金庫の口座数がもっとも多い。
実は、生産性の問題に直面しているのは、99.7%を占める中小企業だ。
aijiro / shutterstock
しかしこれまでは、ユーザーが信用金庫の利用明細を自らダウンロードし「会計freee」に取り込まなければ、自動仕訳などのわかりやすい利用明細を見ることができなかった。
信用金庫のオンラインバンキングのID・パスワードを会計freeeに保存することで、データを自動で取り込む方法もあったが、「特に高齢者の方だと、心理的な抵抗感も持ちやすい」(佐々木氏)。
今回のAPI連携によって「会計freee」と信用金庫のネットバンキングの利用明細が、ID・パスワードをfreeeに預ける必要なく自動的に連携する。「会計freee」から直接、信用金庫の利用明細をわかりやすい形で見られるようになる。
「今までのやり方だと、ユーザーが『freeeとの連携がうまくいかないんだけど』ということを銀行(信用金庫)側に質問されることもあり、銀行側が『どうしよう!?』となることもあった。今後は公式に連携されるため、そのような心配もなくなる」(佐々木氏)
中小企業のための「App Store」へ
連携アプリには農業従事者のためのサービスなども。
さらに今回、請求・支払いや勤怠、決済、ECなどのさまざまな外部サービスとfreeeのサービスを連携できる「freeeアプリストア」の開始も発表した。
ビジネスを始めたい人にとって必要なサービスをカテゴリーごとに選ぶことができ、数回のクリックで簡単に利用開始できる、という仕組みだ。
導入企業が利用できるサービスは、人事・労務をIT化するサービス「SmartHR」、クラウド勤怠管理サービス「KING OF TIME」などのほか、ネットショップ「Base」、クレジット決済サービス「Square」など多岐にわたる。
「今後はアプリの幅も広げていき、中小企業のためのApp Storeのようになれたら」と担当者は語る。
2018年、65億円の追加増資を実施し、調達総額を約161億円に拡大したfreee。「誰もが簡単にビジネスをできる社会」を描き出し、これから生まれるであろうイノベーションの影の立役者となれるのか。
(文・写真、西山里緒)