スマートフォンを使いすぎ、という自覚はあるが、具体的にどんなことにどのぐらいスマートフォンを使っているかは意外と知らない。
撮影:今村拓馬
「オンライン疲れ」「スマホ中毒」
このような単語は、現代を生きるほとんどの人が、活動中の時間の大部分をスマートフォンを通じて、インターネットに触れて不健康に過ごしていると指摘されるトピックのキーワードだ。
しかし、ネットメディアの記者をしている筆者自身もそうだが、スマートフォンやタブレットを利用している時間には「原稿を書いている時間」「事実関係のチェックをしている時間」「SNSなどでネタを探している時間」など、業務も含まれている。
「スマホ依存から脱却しよう」という言葉に対して、ややモヤッとした感情が生まれるのは、「スマートフォンなどを触っている時間が必ずしも非生産的な時間ではない」からだろうと思う。
一方で、仕事の合間につい、別のことを調べてしまうだとか、通知に届いたゲームアプリのキャンペーンをタップしてしまうことがないかと問われればそれもまた、堂々と反論できないのも事実だ(あくまでも筆者は)。
iOS 12の「スクリーンタイム」を使ってみた
iOS 12以降を搭載するiPhone/iPadでは「スクリーンタイム」機能を使うと自分の利用状況を可視化できる。
では、実際どのぐらい自分はスマートフォンやタブレットを使っているのか知りたい。そんな気持ちで活用してみたのがiOS標準の管理機能だ。
例えば、アップルのiOSデバイスの場合は「スクリーンタイム」という機能が搭載されている。スクリーンタイムは、iOS 12以降を適用していれば、最新のiPhoneでなくても利用できる。
スクリーンタイムは設定アプリの一項目として表示できる。
「端末を持ち上げた回数」「アプリ別の通知の回数」も把握できるので、自分がどのぐらいスマートフォンを手に取っているか、どんなアプリに呼び出されているかなどもわかる。
スクリーンタイムでは、その日1日のアプリの利用時間および通知の回数、端末を持ち上げた回数をチェックできる。加えて、各情報の過去7日間分の合計値も確認できるため、平日と休日と使い方の違いなどが可視化される。
筆者は当初、「スマートフォンに利用状況を監視されているみたいでイヤだ」「せっかくスマートフォンを使っているのに、わざわざ機能を制限する機能をオンにするなんておかしい」と思っていた。とくに前者については、スクリーンタイムを紹介した編集部内の別の記者からも漏れ聞こえてきた。
アプリごともしくはアプリのジャンルごとに、利用時間を設定できる。また時間は、一括もしくは曜日毎に設定できるので、土日だけ少なくしようといった使い方も可能。
設定した時間の5分前になると通知が届く。
アプリが設定した利用制限時間に達すると、画面が白くなり砂時計のアイコンが表示される。だが、制限自体を即時解除することも延期することもできる。
スクリーンタイムは、もちろんいつでもオフにできる。また、前述のようなダッシュボード的な機能に加え、アプリ毎やスマートフォンの機能全般を制限する機能もある。例えばアプリの利用時間が設定した1日の上限に達してしまっても画面上には「今日は制限を無視」「15分後に再通知」といった選択肢が表示される。実際に使ってみると、「明日は気をつけよう」というユルい感覚で利用できるので、「制限されている」というイメージは思いのほかなかった。
似たような機能はAndroidやATOKなども提供されている
グーグルが一部のAndroid端末に提供している「Digital Wellbeing」。
なお、アップル以外にもスクリーンタイムに似た機能は存在する。グーグルは、利用状況の確認・機能を制限する「Digital Wellbeing」(デジタル・ウェルビーイング)という機能を最新OSであるAndroid 9を搭載したPixelおよびAndroid Oneシリーズに対して提供している。
また、OSではないが、文字入力ソフトの「ATOK」 (ジャストシステム)も月初に「ATOK マンスリーレポート」という形でひと月分の文字入力数のサマリーを表示したり、打ち間違えが多発した際に休憩を促すといった機能を提供している(Windows/Mac向けのみ)。
文字入力からPCの利用度がわかる「ATOK マンスリーレポート」。
各ハードウェアやサービスを提供するインターネット企業の中では「ユーザーとインターネットとの距離感」は常に考えられている課題と言えるだろう。
具体的なアクションをするための材料に
毎週届くスクリーンタイムの週間レポート。利用時間を気にするきっかけになるかもしれない。
筆者の場合はAndroidのスマートフォン(Pixel 3)を使っている時間が平均約6時間、タブレット(iPad Pro)を使っている時間が平均約1時間。1日約7時間はスマートフォンかタブレットを使っているという計算になる。
2018年12月にMMD研究所が発表した「2018年版:スマートフォン利用者実態調査」によると、1日にどのぐらいスマートフォンを利用するかという質問について、「2時間以上3時間未満」と答えるユーザーが全体の24.1%と最も多く、次に多いのは「3時間以上4時間未満」と答えるユーザーで18.5%という結果が出ている。
冒頭の通り、仕事の内容によってはこの時間をそのまま自分の使い方と比べる必要はないが、ひとつの目安にはなるかもしれない。
スマートフォンの中毒性は確かに高いかもしれないが、使い方を工夫することはできる(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
ちなみに、筆者がよく使うアプリにはスマートフォンでもタブレットでも常に「Twitter」「Slack」「Chrome」が入っていた。プライベートの時間を増やしたければ、週末などはTwitterやSlackを見る頻度を少し減らしてみるよう努力すべきで、見聞を広げるためには電子書籍などをもっと読むべきかなと少し考えるようになった。
正直、デジタル化・モバイル化がある程度進んだ現代において、スマートフォンから完全に距離を置くというのは難しいだろう。けれども、今回のように自分の具体的な利用状況を把握し、対策することで、より健康的なデジタルライフを目指せるのではないだろうか。
(文、撮影・小林優多郎)