ファミリーマートの店頭から無印良品が消える。
1月28日にひっそりと、無印良品の公式サイトで発表された「1月28日(月)を持ちましてファミリーマートでの取り扱いを終了させていただきます。永らくのご愛顧ありがとうございました」というコメントが注目を集めている。
無印良品のファミマ向け商品ページ。原稿執筆時点の1月30日夜時点では表示ができない状態になっている。同社広報によると、内容の一部修正のためで、後日改修されるとのこと。
ファミリーマートを展開するユニー・ファミリーマートホールディングス広報によると、ファミマ店頭で無印良品の商品を取り扱いはじめたのは、1980年代初頭から。40年近くという、長期の取引ということになる。
販売終了の決定的な要因について、同広報は商品の販売低迷が一因にあると説明する。
(取り扱い終了の)詳細な経緯は控えさせていただくが、(無印良品の)商品の売り上げが低迷していたのは事実。(そうした背景から)ファミリーマートとして取り扱い終了を決定した。
一方の良品計画も、申し出はファミリーマート側からであると認めた。
取り扱いの終了は、ファミリーマート側からの決定を受けてのもの。1月28日で商品供給を終了し、今後は流通在庫が無くなり次第、販売終了する。
実際に、店頭によっては無印良品の取り扱いをかなり縮小している店舗もあるように感じる。渋谷のある店舗では、目立たない一角の小さな棚がそのスペースになっていた。
実は良品計画は2018年10月に公表した上期決算で、国内事業が伸び悩んだ原因の一つとして、ファミリーマートへの商品供給が前期比53.8%と大幅減になったことを挙げている。両社の間でどういう会話があったのかは不明だが、販売低迷の認識が昨日今日に始まったものでないことは確かだ。
上記の広報コメントだけを見ると、無印良品の商品の問題かと見る人もいそうだが、そう単純な話ではない、と語るのは業界に詳しいコンビニジャーナリストの吉岡秀子氏だ。
背景には、平成を通して変化してきたコンビニ業界の立ち位置の変化にあるという。
「正直に言うと、今回の件がニュースになったこと自体が、逆に驚きでした。コンビニ業界の動向を知る人から見れば、これはある意味、時代の変化による既定路線だと感じます。
いま、コンビニ業界は全国的に、出先の“緊急買い”的な存在から、生活に密着したふだん使いの店へと進化していますから。
この前提で見ると、今回のニュースの背景には大きく2つの理由があると思います。
1つは、これまで地味な存在だった雑貨や文房具というジャンルが、「コンビニで生活必需品を買う」スタイルが定着したことで、リピート率の高い売れ筋になってきたことです。セブン-イレブンと(グループ会社の)ロフトが組んでPB(プライベートブランド)商品をつくったことが好例で、「ここにしかない」付加価値の高いモノを作れば“文具も売れるようになってきた”のです。コンビニ各社が雑貨、文具の品ぞろえに、これまで以上に注力するのは自然なことでしょう。
2つめは、 顧客の囲い込みのためにファミリーマートがPBのブランディングをしようという過渡期にあることです。例えば近年、「お母さん食堂」というお惣菜ブランドを始めるなどして、生活の食卓を応援する店へとシフトし始めてきた。主婦や単身者向けのお惣菜や賞味期限の長いロングライフのおかずが増えて、ビジネスパーソン御用達の文具は棚の面積を減らしている現状があります。
無印良品が店頭から消えるのを寂しく思う人が多いのは理解できるのですが、厳しい言い方をすると、無印は直営店やネットでも買えますから、それを買うためだけにファミマに来ていた人は、そこまで多くなかったかもしれない。店の品揃えを変えるのは、企業じゃなく消費者なんだ、と改めて感じさせられます。
今回のニュースを総括するなら、時代が平成から新元号に変わるのに合わせて、コンビニも変わる、という象徴的な変化です。私の目には、コンビニ3社の中で最も尖っていたファミリーマートが、今後、お惣菜や文具、雑貨といった多様な分野でブランディングを進めるんだ、という宣言のように見えます」
(文、写真・伊藤有)