SMAP解散が影響? 嵐活動中止とジャニーズに見えた「会社という苦しみ」

嵐の5人が活動休止を発表した1月27日の記者会見を見て、「ああジャニーズ事務所は、ずいぶんいろいろなことを学んだんだな」と思った。

何から学んだか、と言えばもちろん、SMAPの解散から「新しい地図」(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)設立への道だ。

嵐

日曜夜の突然の発表に、ファンだけでなく、日本中が驚いた。翌日のスポーツ紙の一面は、嵐の活動中止のニュース一色だった。

撮影:西山里緒

好評の一因はゆるーい服装

嵐の会見は、とても評判がよかった。5人の仲の良さ、ファンを大切に思う気持ち。そういうものがすごく伝わってきた、と。

確かに「休止」を言い出したリーダー大野智さんが神妙な面持ちだった以外、残りの4人は終始笑顔だった。大野さんも最後は、「ビジュアルだったり体型だったりは、キープしていきたい」と語って会場の笑いを誘った。

よい空気作りに一役買ったのが、5人のカジュアルな服装だったと思う。みんなバラバラで、一見スタイリストがついてないようにゆるーく見える。でもトーンは揃っている。スタイリストありの、考え抜かれた「ゆる見せ」。そんなところだろうか。

SMAPの5人が自分たちの進退について説明した時のことを思い出した。2016年1月、「SMAP解散」とスポーツ紙が報じたところから一転、5人揃って解散を否定した。

記者会見でなく、冠番組「SMAP×SMAP(スマスマ)」で5人それぞれが思いを語るという方法をとった。木村拓哉さんが真ん中に立ち、「前を見て、ただ前を見て」と宣言したのだが、あとの4人はひたすら暗く、ファンへとも事務所へともつかぬ「謝罪」を述べるばかりだった。

だから「公開処刑」などと評されることにもなったのだが、5人の服装も大いに関係あったと思う。全員が黒いスーツ。木村さん以外、ネクタイも暗い色。いかにもスタイリストが選んだものを揃って着せられたという感じで、5人の状況そのもののようだった。

仲介あって謝れたSMAP

嵐

嵐の活動休止発表後、早々と都内の音楽ショップに掲示されたPOP。

撮影:今村拓馬

だから私は逆に、嵐のゆるーい服装からジャニーズ事務所の「方針」を感じとった。

5人を縛ってません。彼らに任せてます。

そのことを表わすために、今回はバラバラの服で。スタイリストっぽくない方向で。そう決めたのだな、と勝手に思った。

会見では、「ジャニーさんには報告されましたか?」という質問もあった。大野さんが、

「はい。ジャニーさんは『僕が決められることでもないと思うし、みんなで決めていくものだと思う。その中で20年という年月、よく頑張った、よく頑張ってくれた。ありがとう』という言葉をいただきました」

と答えていた。

SMAPの時と、なんという違いだろう。「スマスマ」で草彅さんはこう語った。

「ジャニーさんに謝る機会を木村君が作ってくれて、今、僕らはここに立てています」

「木村君」の仲介があって、やっと謝ることができる対象だったジャニーさん。その人が嵐の大野さんには「ありがとう」と言う。なんたる違い。

自分たちの意思固めてから事務所へ

嵐

都内のアイドルショップの店頭に貼られたPOP。「20年間、ずっと5人でいてくれて本当にありがとう」とエモいコメントも。

撮影:今村拓馬

結局SMAPは「スマスマ」から1年経たずに解散、その後、木村さんと中居正広さん以外の3人が事務所を辞め、「新しい地図」となった。それが2017年9月で、大野さんがメンバーに気持ちを伝えたのが、その3カ月前の6月。まずメンバーだけで話し、事務所に伝えたのは2018年2月。そう会見で説明された。自分たちを固めてから事務所へ。SMAPの動きがあったから、というのは想像に難くない。

アイドル評論家の中森明夫さんは、嵐の活動中止について、「(SMAP解散が)終わりの始まりで、ジャニーズの生態系が崩れた」と評していた。SMAPの「あんな形での解散」が、後進のグループにも絶望を与えたと思う、と。

確かにSMAP解散で、事務所は大きくイメージダウンしたと思う。歌だけでなく、バラエティーにも進出する「SMAPモデル」を作り上げた女性マネージャーを切り捨てた。彼女のもとに3人が終結してできた「新しい地図」。3人のノビノビとした様子、各方面での活躍を見るたび、私は彼女を思い、心で小さく拍手を送っている。

将来の夢は「パン屋さん」

嵐

都内の音楽ショップに作られた嵐コーナー。「2020年まで、みんなで笑っていよう。そして、いつか笑ってまた再会 そう絶対、ね」とこちらも熱いメッセージが。

撮影:今村拓馬

2018年はタッキー&翼が解散、病気療養中の今井翼さんが退社、滝沢秀明さんが関連会社の社長になった。タッキーはジャニーさんの大のお気に入りだという。「創業社長のいる会社は、やはり社長との距離がすべてね」と思う。SMAP解散騒動以来、ジャニーズ事務所は私にとって「会社という苦しみ」を見るサンプルになっている。

嵐の活動休止にあたり、ジャニーズ事務所が細心の注意を払い、慎重に振る舞ったのも当然だと思う。さらに会社経営という観点からは、大野さんという人の難しさも感じる。

長く会社員をして、ささやかながら管理職をしていた身から、彼はすごくマネジメントが難しい人だと思う。

例えば振付師の竹中夏海さんが書いた、ジャニーズJr.時代の大野さん。他のメンバーが必死になって出演していた「8時だJ」に「自由参加だったから」という理由で一度も出演しなかった。

そして初の冠番組「真夜中の嵐」(2001年、日本テレビ系)の司会だった羽鳥慎一さんが語った大野さん。将来の夢を聞かれ、「パン屋になりたい」と答えた。他のメンバーは「紅白出場」「ゴールデンで冠番組」と答えたというが、それが普通だ。

「ジャニーズという生態系」立て直せる?

アイドルと会社員とではまるで違うことは承知しつつ、こういう人、最近、増えているなと思う。

力のある人だから、もっともっと働いてほしい。だが、何をモチベーションにしているのか、それがわからない。出世に興味のないことはわかる。収入の方が効きそうだが、それもどこまでかはっきりしない。承認欲求もあるのか、ないのか。何とも正体がつかめず、マネジメントが難しい。

アイドルのモチベーションは何なのだろう。人気のバロメーターとしての声援? 収入に直結するCDなどの売り上げ? 大野さんはそもそも、欲が薄い人のように映る。歌が好き、ダンスが好き。最近は釣りも好き、絵を描くのも好き。

そういう人が別な道を模索し始めた。その道が具体的でないとしても、引き止めるのは難しい。他のメンバーは、そう理解したろう。それを報告された事務所サイド。SMAPの轍を踏まないことを前提に、ドル箱グループを「解散」でなく「活動休止」に持っていった。

「ジャニーズの生態系が崩れた」という中森さんの見立てにのっとるなら、崩れる手前、ギリギリのラインに踏みとどまったという状況ではないだろうか。

ここから生態系を立て直せるか。

ジャニーズ事務所の「会社という苦しみ」は、まだ続いている。

矢部万紀子(やべ・まきこ):1961年生まれ。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、「AERA」や経済部、「週刊朝日」などに所属。「週刊朝日」で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長を務めた後、2011年退社。シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に退社し、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』。最新刊に『美智子さまという奇跡』。

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