「絶好調」でも手放しに喜べないソニー決算を読み解く ── スマホ需要減速の余波は

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ソニー決算

ソニーは2月1日、東京・品川の本社内で2018年度 第3四半期連結業績の発表会を開催した。

2月1日、ソニーは2018年度 第3四半期連結業績を発表した。

事前には増収が予想されていたが、売上高は2兆4018億円で前年同期比2705億円の減収。ただし営業利益については3770億円と、前年同期比で262億円(7%)の増益。

2018年度3期分の連結業績では、営業利益は8115億円、純利益は8284億円と、前年同期比で63%の増益。2018年度通期の純利益予測についても、8350億円と、2018年10月見通しからさらに1300億円上積みしている。

2018年度第3四半期の業績

2018年度第3四半期の業績。前年同期比で売上高は10%下げているものの、純利益は1331億円の増加。

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2018年度連結業績見通し。2018年10月の予測から売上高こそ下方修正しているものの、税引前利益・当期純利益ともに過去最高の水準とされる。

数字的に見れば、2期連続の過去最高益となり、「絶好調」と言える。

では、その内実に不安はないのか。その点を検証したい。

ゲーム事業はライフサイクル後期ながら「持続的な収益」

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PS4が累計実売台数9160万台を突破したことを知らせる公式ブログ。2018年末商戦は値下げ効果もあって実売560万台を記録した。

撮影:伊藤有

2018年10月の見通しに対し、第3四半期の結果にはいくつか変更点がある。

まず、第3四半期は2705億円の減収になったことだ。理由は、金融とモバイルコミュニケーション分野での不振による。

一方で2018年度通期の純利益予測については、10月の予想から上積みしている。

この上積みと金融分野での減収は、一時的な要因に伴う部分が大きい。純利益の増加はアメリカでの税負担の減少によるもの。金融事業での減収は、ソニー生命保険での特別勘定の運用損益悪化に伴うものだ。

それ以外は、モバイルコミュニケーションを除き、基本的には好調といっていい。

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各セグメント別の業績。一時要因による増減はあるものの、モバイルを除くと大きなマイナスは少ない。

好調の主因であるゲームは726億円の大幅増収ながら123億円の減益。これは、年末にPlayStation 4(PS4)を値下げ販売するキャンペーンを打った結果で、販売台数を累計9160万台(2018年12月末現在)まで伸ばすことに成功した。販売開始から6年目を迎え、ハードウエアのライフサイクルとしては後期になっているが、ソフトウエアおよびネットワークサービスからの収益は増えている。

特にネットワークサービスについては、「月間アクティブユーザーが9000万人を超えた」(ソニー・十時裕樹CFO)状況。収益基盤安定のためには必要な施策であった、と判断できる。長期化したPS4のビジネスを、次のプラットフォームにどうつなげていくかが課題となる。

十時裕樹CFO

ソニーの十時裕樹CFO。

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ゲーム事業の業績。年末商戦におけるPS4の値引きキャンペーンにより、売り上げは上がったが収益は落ちた。販売台数増加に伴うソフトおよびネットワーク事業収入の増加に期待してのものだ。

ただ、同じゲームでも、音楽事業に計上されているスマホ向けゲーム「Fate/Grand Order」の収益については、そろそろひと段落、という印象が出てきた。

「上期は比較的好調だったが、第3四半期は前年同期比を下回っている。ただし、ユーザーの数は減っておらず、一人あたりの課金ボリュームが減っている状況。ただし、我々はユーザーエンゲージメントの継続が重要と考えている。一時期に売り上げを高めるのではなく、ライフタイムで考えたい」と十時CFOは説明する。

課金額に陰りは出てきたものの、ファンの離脱を防ぎ、長く安定的なビジネスを狙うフェーズなのだろう。

半導体はスマホ市場減速で数%減を覚悟、巻き返しは成功するか

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判断が難しいのは半導体分野だ。

ハイエンド・スマートフォン向けのイメージセンサーを中心にソニーの稼ぎ頭となっている領域だが、同時に今後に暗雲も垂れ込めている。

2019年、スマートフォン市場はさらなる減速が予想されている。中国市場の冷え込み、需要の一巡による先進国市場の伸び悩み、ハードウエア高価格化の悪影響もあり、ハイエンド・スマートフォン向けについては減少する、と見られているからだ。

今回も、2018年度通期での見通しについて、売上高を400億円、営業利益について100億円下方修正している。十時CFOも「市場の状況には素早く対応する必要があり、楽観はしていない」と話す。

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イメージセンサーを中心とした半導体事業については若干の下方修正。スマートフォン需要減速の傾向を受けてのものだ。

「各社いろいろな見方があるが、スマートフォンの出荷台数は5%程度下がる可能性が高い。(需要減速については)10月時点で予想よりもさらに前倒しで起きていると想定している。19年度の予測については、こうしたポジティブな要素とネガティブな要素を、慎重に見極めようとしている」(十時CFO)

とはいいつつ、十時CFOは「弊社のイメージセンサーは競争力がある」と自信も見せる。スマートフォンにおけるカメラの「多眼化」や、より大きなサイズのセンサーへの需要の高まり、「ミドルクラススマホ」への高性能センサー搭載ニーズの増加から、現状では、ソニーはセンサーへの投資や生産体制を大きく変える予定はない、という。

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ソニーはイメージセンサーについて、生産ライン最適化とR&Dの両方に積極的投資を行う姿勢を崩していない。

一方で、携帯電話向けイメージセンサーの供給過多による収益悪化については、ソニーは過去にも苦しめられた経験を持つ。「慎重に見極める」という言葉を十時CFOが繰り返す裏には、そうした反省に基づく部分が大きいだろう。

なお、新しい市場として期待される自動車向けのイメージセンサー供給については、「自動運転のレベル3・4が広がる2020年代のうちにナンバー1になれれば」と語る。スマホ向けとは製品開発サイクルの違いも大きく、長期的な体制で臨む。

モバイル803億円の減収、「織り込み済み」といわれるが……?

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撮影:伊藤有

ソニーの事業の中で、相変わらず元気がないのが「モバイル」だ。今期についても、前年同期比で803億円の大幅減収となっている。日本・欧州・東アジアと全域でスマートフォンの売り上げが落ちている状況だ。

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スマートフォンを中心としたモバイル事業はいまだ不振。前年比で大幅減収が続く。

だが、十時CFOは「2018年10月の予想からかけ離れたものではない」と言う。

ソニーはモバイル事業について、2020年に「損益のブレイクイーブン」をする、と公言している。現状についても、この計画の中で織り込み済みの減収、ということのようだ。「2019年度には、2017年度比で、50%程度までオペレーション費用を削減する計画で、こちらも目標通り進展している」(十時CFO)とする。

だが、ソニーの事業の中で、モバイルだけがはっきりと振るわないのは、どうにも見栄えが悪い。全社的に余裕がある中でのターンアラウンド(方向転換)、ということになるのだろうが、「モバイルのターンアラウンド」は、もう何年にも渡るソニーの課題だ。

そこについて、「計画通りである」という言葉を超えた、数字として、製品などの実績としてわかりやすいものが求められているのではないか。株主にとっても、消費者にとっても、そろそろ明確な答えが欲しい。

(文、写真・西田宗千佳)


西田宗千佳:フリージャーナリスト。得意ジャンルはパソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主な著書に『ポケモンGOは終わらない』『ソニー復興の劇薬』『ネットフリックスの時代』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』など。

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