ファストファッションが環境汚染を加速。ミレニアル世代は脱プラスチックブランドを支持

世界中で脱プラスチックの動きが進む中、ファッション業界でもいち早く対応するブランドが出てきている。ミレニアル世代の「何を着るか」より、「なぜそれを着るのか」という嗜好にも合っている。

プラスチック再利用のコート

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“Used once.” “Worn forever.”と書かれたエバーレーン社のコートの広告。

エバーレーンの公式インスタグラムアカウントより

ニューヨークの街中に掲載された広告は、アメリカの人気ブランド、エバーレーン社の売れ筋商品のコートだ。

一見、普通のオシャレな広告に見えるかもしれないが、よく見ると、同社の特別な思いと取り組みが込められている。左側のプラスチック・ボトルにはUsed once、つまり“一度使用”、を意味する文字が並ぶ。右側のコートを着る男性にはWorn forever、“ずっと愛用“と書かれている。実はこのコート、リサイクル済みプラスチック・ボトルで作られているのだ。一度しか使われていないプラスチック・ボトルを一生着れるコートへ。そんな思いが込められた広告だ。

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リサイクル済みのプラスチックボトルがポリエステル素材になるまでの過程をHPで公開

エバーレーンの公式HPより

エバーレーンは60年間で約80億トンものプラスチックが生産され、地球を汚染していることを問題視し、環境にやさしい循環型ビジネスモデルをけん引するブランドを目指している。その取り組みの一環として、リサイクル済みのプラスチック・ボトルを原料とするコートやフリースの生産を開始。また2018年10月には、バージン・プラスチック(未使用の新しいプラスチック)のサプライチェーンでの利用を2021年までに廃止すると発表した。

同社はこれまでも、生産過程の水のリサイクル率や工場の労働環境などを公表し、「透明性」を売りにブランドを築いてきた。社会的責任を示しつつも、手ごろな価格で質の良い洋服が買えるとして、ミレニアル世代の人気ブランドへと成長した。エバーレーンの躍進には、消費者のファッションに対する意識の変化が現れている。

ベルギーの中高生は週1で温暖化反対デモ

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プラスチックボトルを利用した製品のラインアップ紹介ページ。HPをクリックしてから、世界で生産されているプラスチック・ボトルの数の集計が始まり、その多さを認識する工夫も施されている。筆者も、わずか1分で90万本も生産されていることに驚いた。

エバーレーンの公式HPより

世界経済フォーラムの調査によると、ミレニアル世代の約50%が世界規模の問題の中で「気候変動」が最も深刻だと考えている。さらにミレニアル世代より若い、1990年代後半から2000年代にかけて生まれた「ジェネレーションZ」の9割は、企業は環境問題や社会問題に対応する責任があると考えているのだ。

欧州ではまさにこの世代が中心となり、気候変動に対するデモが現在広がっている。ベルギーの中高生は1月から週に一度学校を休み、地球温暖化対策の転換を求めるデモを続けている。Facebookでの呼びかけで始まったデモの参加者は増え続け、3週目には首都ブリュッセルに3万5000人の中高生が集まった。

若者たちの行動が原動力となり、2月頭にはブリュッセルであらゆる世代の7万人が集結し、気候変動への対策を求めるデモを行った。世界の人口の半分以上がミレニアル世代とジェネレーションZ世代で構成されており、アメリカだけをみても、その世代は3500憶ドルもの購買力を持っている。政治や経済のあらゆる分野で無視できない若手世代を、ファッション業界も注視しているのだ。

英国メーガン妃も「スローファッション」愛用

メーガン妃

商品から生まれる環境負荷を毎年開示している「リフォーメショーン」のドレスを着た目メーガン妃。

英国王室のインスタグラムのアカウントより。

実は、アパレル・ファッション産業は石油業界に次いで2番目に環境汚染を生み出している産業だ。

循環型経済への移行を働きかけるエレン・マッカーサー財団によると、アパレル・ファッション産業の年間の温室効果ガスの排出量は12憶トンにものぼる。ファストファッションの台頭により2000年から2014年のわずか15年間で、洋服の生産量は倍増。15年前と比較すると、一人当たりの服の平均購入量は60%増加したが、購入後の所有期間は半減したという。大量生産と消費が加速することで、生産過程での温室効果ガスの排出や水の汚染が深刻化し、捨てられていく服により繊維廃棄物も増え、環境への負荷が進んでいる。

このような状況に、環境や資源を守り、無責任な大量生産と消費をやめようという動きが世界で広まり、ファストファッションならぬ、「スローファッション」の人気が広がっている。スローファッションとは質の良い服を長く着るという概念の元、地球環境や労働環境に配慮したファッションのことだ。

英国王室のメーガン妃も、環境にやさしい持続可能なスローファッションを積極的に取り組んでいる人のひとりだ。

2018年10月にロイヤルツアーでオーストラリアを訪れた際は、商品から生まれる環境負荷を毎年開示している「リフォーメーション」のドレスや、リサイクルプラスチックで100%作られた「ロージーズ」の靴を着用した。ハリー王子との結婚前、国際スポーツイベント「インビクタス・ゲーム」で初めて2人で公式イベントデビューをした際も、本記事冒頭で紹介したエバーレーンのバッグを持ち、話題となった。

メーガン妃の「スローファッション」愛用は、ファッション誌やSNSで注目を集め、「何を着ているか」を越え、「なぜ着ているか」という問いを人々に突き付けている。

気候変動会議にファッション業界が出席

プラスチック汚染

多くの国でプラスチックによる汚染は深刻な環境汚染として問題になっている。

Rehman Asad/Getty Images

消費者のファッションに対する意識の変化は、高級ブランドも無視できなくなっている。2018年の夏、英国を代表するブランド、バーバリーが売れ残った洋服や香水42億円分相当を廃棄・焼却していたことが、同社の年次報告で判明した。同社は最初、ブランド盗難や安く売られることを防ぐために売れ残った商品を処分し、焼却は環境に影響を与えない方法で行っていると説明した。しかし、環境保護団体や若い消費者からの強い反発を受け、最終的には売れ残り商品を焼却せず、慈善団体に寄付するという決定に追い込まれた。

2018年末に開催された国連気候変動枠組み条約会議(COP24)では、ステラ・マッカートニーやグッチなどファッション界を先導する43企業が、2030年までに温室効果ガスの排出量を30%減らすと表明し、業界として地球環境問題に取り組む姿勢が目立つ。

日本でも少しずつ広がる「スローファッション」の動き

日本で「スローファッション」志向をけん引するのは、グローバル・ブランドだ。

ユニクロは、日本を含む世界2000店舗で使うレジ袋や包装材の脱プラスチックを発表。環境に配慮した商品化を実現するため、動物系素材の調達を見直し、2020年までにモヘアの使用を禁止すると発表している。スペインのZARAも日本のレジ袋ではプラスチックと紙を両方使っていたが、今年以降、紙製に一本化するとしている。

さらに、アウトドア関連のファッションを手掛けるアパレルブランド、パタゴニアは2019年の冬、日本各地のスキー場でスキー・スノーボードウェアの修繕をするワークショップ「Worn Wear ツアー」を行うことを発表した。一つのウェアを長く着て、消費を抑えることを学ぶのが目的で、トラックの荷台を廃材などで改造した移動工房が、3月までに丸沼高原スキー場や谷川岳天神平スキー場などを巡るという。このような取り組みを行うパタゴニアのCEOの言葉は、我々に「消費」の問題を突き付けている。

「個々の消費者として、この地球のために私たちができる最善の行動は、モノを長持ちさせることです。適切な手入れと修理によって私たちの製品の寿命を伸ばすという単純な行為は、長期間にわたってモノを買う必要性を減らし、二酸化炭素の排出と廃棄物および製品を作るための水の使用量を削減します」

「何を」着るかではなく、「なぜ」着るか。 どういう消費者でありたいか、考えるだけではなく、行動しなければならない時代だ。

大倉瑶子:米系国際NGOのMercy Corpsで、官民学の洪水防災プロジェクト(Zurich Flood Resilience Alliance)のアジア統括。従業員6000人のうち唯一の日本人として、防災や気候変動の問題に取り組む。慶應義塾大学法学部卒業、テレビ朝日報道局に勤務。東日本大震災の取材を通して、防災分野に興味を持ち、ハーバード大学大学院で公共政策修士号取得。UNICEFネパール事務所、マサチューセッツ工科大学(MIT)のUrban Risk Lab、ミャンマーの防災専門NGOを経て、現職。インドネシア・ジャカルタ在住。

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