オリラジ中田敦彦がLDHのHIROを目指す理由「パクっても干されてると言われても先頭を走る」

中田敦彦

オリエンタルラジオの中田敦彦(36)。慶応大学在学中に藤森慎吾とコンビを組み、M-1グランプリ準決勝に。リズム芸「武勇伝」で話題になる。

撮影:今村拓馬

たびたび発言が炎上し、芸能界を“干された”とも噂されているオリエンタルラジオの中田敦彦。

中田は著書『僕たちはどう伝えるか 人生を成功させるプレゼンの力』のイベントで、明言した。

「僕が目指しているのはLDHのHIROさんです」

HIROはEXILEのメンバーでありながら所属事務所であるLDHの社長を兼務、パフォーマー卒業後もLDH WORLDのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして活躍している。LDHは三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEやE-girlsなどの人気グループが所属する他、飲食店、アパレル、ダンススクールなど幅広く事業を展開していることで有名だ。

中田が目指すのも「衣食、そして楽曲や笑いなどのエンターテインメントをつなげて一つの世界観をつくり上げる」ことだ。

実は今、中田のビジネスの手腕に大きな注目が集まっている。

元ローソン社長らとビジネスコンテストで審査

中田敦彦

ピッチコンテストでベンチャー社長らに鋭く突っ込む中田。

撮影:今村拓馬

「5分という短いピッチ*の中に社会的なテーマや技術革新、ビジョン、ユーモアも交えて、さらにマネタイズもしようなんて、この総合格闘技はすごい」

中田敦彦が壇上から語りかけると、会場に集まった約600人の参加者から笑いが起きた。隣には元ローソン社長の玉塚元一(現デジタルハーツホールディングス社長)、グロービス・キャピタル・パートナーズのマネージング・パートナー仮屋薗聡一ら。

※ピッチ:ビジネスのアイデアコンテストなどで審査員の前に登壇して行うプレゼンテーションのこと

中田が審査員を務めた「Morning Pitch Special Edition」の会場。チャンスをつかみたい若者たちの熱気に溢れていた。

撮影:今村拓馬

中田はこの日(2019年1月11日)、デロイト トーマツ ベンチャーサポートと野村証券が共催したビジネスピッチコンテストに審査員として呼ばれていた。当日配られたパンフレットの肩書きは「お笑いタレント・実業家」。大会が終わると、中田の元には名刺交換を求めるスーツ姿の男女が長い列をつくっていた。

アパレル、カフェ、オンラインサロン、大学で講師も

中田敦彦

青学で担当しているプレゼンの授業は最終的には大会を開き、優勝者の夢を中田と協力企業のリクルートでかなえるサポートをするという。

出典:中田敦彦オフィシャルブログ

中田は吉本興業に所属したまま、活動の幅を広げてきた。お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」、前出のダンス&ボーカルユニット「RADIO FISH」などのタレント業のほか、2018年にはRADIO FISHの弟分ユニット「FAUST」をプロデュースし、アパレルブランド「幸福洗脳」を立ち上げた。

力を入れているオンラインサロンは、月額1000円のファンクラブ的な「UNITED」と、中田から直接プレゼンの指導が受けられるなど、ビジネス塾的な要素が強い「​PROGRESS」の2つのコースを用意している。

“インテリ芸人”らしく、青山学院大学・経営学部のゼミではプレゼンをテーマにした授業も担当中。今後は「禅徳寺珈琲」というカフェをオープンする予定で、すでにコーヒー豆が購入できるウエブページは作成済み。地方創生にも興味があるそうで、これまで暮らしたことのある大阪府と山口県でプロジェクトを準備中だ。

中でもいま最も熱中しているのが、アパレルブランドの「幸福洗脳」だという。

Tシャツだけでラジオのギャラ半年分

幸福洗脳

幸福洗脳のオフィシャルサイト。

出典:幸福洗脳ホームページ

中田が「幸福洗脳」を立ち上げたのは2018年10月。真っ黒のTシャツに「幸福洗脳」という白い文字だけが入ったTシャツを1万円でネットで販売したのが始まりだ。初日の売り上げ枚数はなんとゼロ。

「僕は幸福洗脳のことを『着るタトゥー』と呼んでて。だってこんなに人を痛めつける、日常に支障をきたすデザインってないでしょ。でも、こういう売れづらそうな物を高値で売ることが物語として面白いと思ったんです」(中田)

中田の仮説は当たった。

幸福洗脳

幸福洗脳の実店舗。東京・乃木坂の閑静な住宅地にある。

撮影:竹下郁子

売れない悔しさを、翌日から始まった自身のラジオ番組「中田敦彦のオールナイトニッポンPremium」でぶちまけると、面白がったリスナーやファンたちによる購入が相次ぎ、売り上げはあっという間に「ラジオのギャラ半年分を超えた」(中田)。

11月にはその収益をつぎ込み東京・乃木坂に実店舗をオープン。さらに2019年3月には東京・銀座の百貨店、阪急メンズ東京への出店も予定している。オファーはもちろん向こうからだ。

「僕がビジネスをやる上で常に考えているのは、今までやってきたことをどういかせば優位性と革新性が高まるか、その事業は社会的テーマに取り組んでいるかです」(中田)

アパレル業界、もっと言えば小売業が抱える社会課題に気づいたのは、ブランドを立ち上げた後だった。

激安メガ盛りの人生に光を

渋谷

今、「幸福洗脳」で働きたい、コラボしたいという若者たちがあとを絶たないという。

shutterstock

ハードな男性向けの物をつくりたいのに自身でブランド化できず、雑貨屋に雇われて女性向けの物をつくっているシルバーアクセサリーの職人や、日本の高級ブランドでパタンナーとして働いた経験を持ちつつも自身のブランド立ち上げに苦戦しているパタンナー。

いい靴を高く売りたいと激安の靴の製造会社から、少し価格帯の高いメーカーに転職したものの、結局中国製品の卸売りをすることになり葛藤している会社員など、全員が“物を高く売ることができずに苦しんでいる”という共通点があった。

中田敦彦

撮影:今村拓馬

タレントとしてさまざまな場所にロケに行く中で、「激安」や「メガ盛り」の店が増えていると感じていたが、彼らとの出会いによって、より問題意識が鮮明になったという。

「薄利多売でギリギリの利益でやるしかないという状況に虚無感と徒労感を覚えている人は多いんじゃないかなって。だってみんな本当は自分の価値を高く評価して欲しいでしょう。

僕が幸福洗脳で伝えたいのは、変えなきゃいけないのは価格設定じゃなくて売り方だよということ。高い価格を貫くことで、激安メガ盛りの人生を生きてる人たちに光を当てたい。『自分を安く売らないで』と 」(中田)

セール

「激安メガ盛り」で働いている人たちを変えたい、という(写真はイメージです)。

GettyImages/Marco Ferrarin

幸福洗脳ではキャップは2万2800円、スカルのアクセサリーは8〜13万円で販売している。「誰でも買えるクロムハーツ」を目指し、「手が出ないほどではないがちょっと高い」価格設定を守っていきたいという。

拡散力はあるけどコンテンツのなかった僕のところに、コンテンツは持っているのに拡散力やストーリーに乗せることができず売れないという悩みを抱えた人たちが集まってきた

彼らは何が問題なのかを知りたかったし、僕は彼らと共に働くことで、ただ大騒ぎしてわけのわからない物を売りつけるヤツから、本当にクオリティーの高い物を売る人になれる。win-winのマッチングが始まったんです。こんなこと最初は全く予想してなくって、ビジネスって面白いなと思いましたね」(中田)

ターゲットは「死にたい男たち」

幸福洗脳

幸福洗脳で販売されているスカル型リング。

出典:幸福洗脳ホームページ

そもそも自称「ファッションに疎い」中田がアパレルに参入しようと思ったのは、2018年9月まで約6年半レギュラー出演していた「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)がきっかけだ。女性たちがファッションコーディネートを競うコーナーを見ながらつくづく思っていたことがある。

「女性と男性ってファッションにおけるスタンスが違いすぎるなと。ママ友とのお茶会とかデートとか女性はTPOで服を選ぶけど、男は一切そういうのないんです。 ガンダムが好きだからガンダムのTシャツを着るし、長渕が好きだから長渕と同じジーパンをはく。男にとってのファッションはイデオロギーを表現する手段なんですよ。

でもみんなそれに気づいてない。ここに気づいたことに僕の優位性と革新性があるという仮説を立てて、さらに非常に狭い男性にターゲットを絞ったブランドにしようと」(中田)

女子

女性のファッションも自己表現の一つだけどなぁ…と思ったのは内緒(写真はイメージです)。

shutterstock

目指すはファッション界の「ラーメン二郎」だ。過去に同店に妻を連れて行き「二度と嫌だ」と憤慨されたことがある。

「二郎を食べたい男性が何をかっこいいと思ってるかわかりますか? 完食することなんです。そんなバカな世界あります? これも僕の仮説なんですけど、男は“死にたい生き物”なんですよ。Go to death。なんでかというと、ハーレーダビッドソンに乗ってショートホープを吸ってラーメン二郎を食うから。強い酒も好きですよね、ウイスキーとか。全部からだによくなさそうなんですよ。こういう“日常に支障をきたす物をかっこいいと思ってる男性に刺さるブランド”にしたいんです 」(中田)

漢字ロゴ、色は黒しか使わない、寒くて硬いレザー素材やスカルのデザインなどがそれだという。

乃木坂ファンも高齢ラジオリスナーも囲い込め

中田敦彦

撮影:今村拓馬

初めは話題性で飛びついた人も、だんだんこの世界観に染まって中毒性を帯びていくところがブランドの進化だと考えています。『もうこの服以外着れない』という強烈な信者、ファンが出てくれば後は自然に広がっていくはず」(中田)

実際、乃木坂の実店舗では「ああ、かっこいい」とため息をつきながら商品を見る中年や中高生の集団が出てきたという。幸福洗脳の客層はラジオとリンクしている。ビジネスの話を逐一報告している「中田敦彦のオールナイトニッポンPremium」のリスナーは20〜50代、乃木坂46と共に担当する「らじらー!」は中高生。乃木坂のファンが乃木神社に参拝した帰りにショップに立ち寄ることも多いそうだ。

幸福洗脳

幸福洗脳実店舗のインスタ映えスポット。店員の「T」はデビュー時からの中田ファンだ。

撮影:竹下郁子

当初、実店舗を出すことは「服飾業界に詳しい人みんなに止められた」(中田)そうだ。今はオンラインでの販売が主流で、実店舗はコストがかかるだけでリスクだというのが理由だった。

中田が実店舗で追求するのは、ここでしか得られない体験だ。インスタ「映える」内装はもちろん、特に注力しているのが店員と客の会話だ。

ラジオ

shutterstock/Forest Run

流行とか着心地とかじゃなく『男はイデオロギーで服を着る』という仮説に基づいたブランドなんだから、そこをまずは褒めようとスタッフに言ってます。中田の意思に賛同してる=ラジオを聞いて来る人が多いので、店員は絶対にラジオを聞いてないとダメ。ラジオは一人で聞く孤独のメディアだから深いんですけど、リスナー同士が出会った時の高揚感は必ずある。それを提供しようと」(中田)

後発でもパクリまくれば少しは進める

#FR2

中田が幸福洗脳の参考にしたと公言しているブランド「#FR2」のホームページ。

出典:#FR2ホームページ

と、ここまで書いたが、読者に知っておいて欲しいのは、幸福洗脳が海外でも人気のブランド「#FR2」にとてもよく似ていることだ。商品コンセプトや下着姿の女性を使った広告、そして実店舗での販売などで#FR2の戦略を参考にしたと中田自身が公言しており、#FR2の石川涼代表も「それはそれで嬉しい」とSNSに記している。

中田は他にもオンラインサロンの運営などでキングコングの西野亮廣を「丸パクリ」していると宣言している。

パクリ元をしっかり言うことでギリ許されることってあるじゃないですか。ちゃんとリスペクトしてますよと。#FR2すごい!人気だしカッコイイから真似するんだというと先方の宣伝にもなりますが、これをこっそりやってると『ちょっと待ってくれ』となっちゃうでしょ。

この『はっきりパクると言った方がいい』というのもキングコング西野さんが言ってたことなんですけど。どのジャンルにも先行者がいるけど、彼らをパクリまくることで後発の僕も何かしら進むことはできるだろうと」(中田)

幸福洗脳

一方、こちらが幸福洗脳のホームページ。

出典:幸福洗脳ホームページ

LDHのHIROを目指す中田が次に取り組むのが「禅徳寺珈琲」というコーヒーショップだ。架空の山奥で修行僧たちが厳しい鍛錬の合間に飲むコーヒーという設定らしい。これは中田が東京を中心に展開するコーヒーショップ「猿田彦珈琲」を訪れたときに「ええ〜イイ〜やりた〜〜い」と思ったのが始まりだったという。

いいなと思ったら『俺にもできないか?』と常に考えるようにしてるんです。三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのR.Y.U.S.E.I.を見て強烈にやりたいと思ったのがPERFECT HUMANになったし、アパレルだってSupremeを超えたいと思ってたら幸福洗脳という謎の物ができてるわけです。だから猿田彦珈琲を目指してやり続けてたら何かにはなる。結局パクりきれなくて自分の変態性が出てくるでしょ、それを恐れず出していけばいいと思ってます」(中田)

「干されて」ないと辻褄合わない

中田敦彦オフィシャルブログ

現状を逆手にとり、「自分のことを一番嫌いなウエブライターが、自分について一番詳しくリサーチして書いた」体裁の記事にしたところ、アクセス数が20倍になったそうだ。

出典:中田敦彦オフィシャルブログ

大胆な仮説に基づく構想と、ローンチまでのスピード感。走りながら転ぶところもすべて見せて客にも参加してもらうのが、中田のビジネススタイルだ。

インタビューやブログ、SNSなどでの発言がたびたび炎上してきた中田。幸福洗脳のTシャツやオンラインサロンは「教祖ビジネス」と揶揄され、2018年に「ビビット」(TBS系)や「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)というレギュラー番組を終えたこともあり、芸能界から「干された」とも言われている。

中田敦彦

撮影:今村拓馬

「気持ちはわかります。テレビを干されたという理由でもないと、僕がビジネスをやることの辻褄が合わないんでしょう。テレビだけが芸能人の仕事の場だった時代があまりにも長かったから。

芸能人だって仕事の選択肢の一つに過ぎないし、質だってピンキリですよ。でもこの論調こそビジネスチャンス。これまでだって漫才の大会でリズムネタやっ「て、ネタ番組で歌ってといつも『何なの?』と言われてきた。

僕みたいなのが誰もいないから先頭走れるんです。あっ、先頭っていうのも足が速くてかっこいい感じじゃなくて、ただルート外れてるだけなので。ルート外れたら誰でも先頭になれるし大したことじゃないんだけど、でもちゃんと生きて帰ってくるっていうね。こんな感じで続けていきたいんですよね」(中田)

(敬称略)

(文・竹下郁子)


※本記事は、Business Insider Japan編集部とLINE NEWSの共同企画です。フルバージョンの記事はLINE NEWSでご覧いただけます。

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