道路の真ん中に打ち捨てられたISの看板(イラク、カラコシュ)。
Chris McGrath/Getty Images
- 過激派組織「IS(イスラミックステート)」は、シリアで以前持っていた勢力の多くを6カ月で奪還することができるだろうと、アメリカ国防総省の最新レポートは指摘した。
- 同レポートは、ISにシリア東部の以前の支配地域を取り戻させないためには、継続的な軍事プレゼンスが必要だという。
- アメリカのトランプ大統領は2018年12月、シリアの米軍2200人の撤退を指示した。
- 2月3日(現地時間)には、トランプ大統領はISが「支配地域の99%」を失い、「近い将来、100%と発表することになるだろう」と述べた。
- 2月4日に公表されたレポートは、ISの封じ込めはイラク及びシリア政府の責任だとしている。
アメリカ国防総省の最新レポートによると、過激派組織「IS」は最短6カ月でシリアで再結集し、かつての支配地域の一部を奪還する可能性があるという。
同省が2月4日に公表したレポートは、ISがいかにシリア国内で依然として活動的か、対抗する継続的な軍事プレゼンスがなければ、ISはいかにしてその勢力を取り戻す可能性があるかをまとめたものだ。
レポートには、米中央軍司令部が「ISは依然としてイラクとシリア両国で活動的な反乱組織の1つだ」と警告したと書かれている。
ISは「シリアで6カ月から12カ月以内に復活し、一部支配地域を奪還する可能性がある」と同レポートは指摘する。
ただ、どのくらいの地域がリスクにさらされているか、具体的には明かしていない。
国防総省のこのレポートは、トランプ大統領がTV番組で、近い将来、ISから支配地域を「100%」奪い返すだろうと発言した翌日に公表された。
レポートには、シリアで米軍を率いている高官たちは、ISの残党を「戦闘経験が豊富」で「鍛錬された」「統制のとれた」者たちだと述べているとある。
ISを一掃するには、現地の軍隊がカギになるという。
アメリカ国防総省。
AP Photo/Charles Dharapak
イラク及びシリア政府が行動しなければ、「ISに将来の復活と一部地域を支配するためのチャンスを与える可能性が非常に高い」と、レポートは指摘している。
また、現在進行中の撤退プロセスの中で、ISが米軍を攻撃する可能性もあると警告する。
アメリカのトランプ大統領は2018年12月19日、その4年前の2014年8月に始まった「生来の決意作戦(Operation Inherent Resolve)」のため、シリアに駐留している2200人の米兵を撤退させると発表した。
ツイッターに投稿された動画の中で、大統領は「我々はISに勝った。彼らを徹底的に打ちのめした」と語った。
米軍の撤退は、フランスのマクロン大統領を含め、一部同盟国から批判された。
イラクのファルージャの街中をパレードするISの戦闘員(2014年3月)。
AP
トランプ大統領のこの決定は、一部の共和党議員をも怒らせた。共和党のリンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員は、大統領の判断を「オバマが犯したような、大きなミス」と批判した。
フロリダ州選出のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員は「重大な過ち」と呼び、イリノイ州選出のアダム・キンジンガー(Adam Kinzinger)下院議員はワシントン・ポストに対し、「歴史はこれを最もバカげた戦略的行動と見なすだろう」と語った。
2月3日に放送されたCBSの『フェイス・ザ・ネーション(Face the Nation)』のインタビューで、トランプ大統領は今後の動き次第で、米軍をシリアに再配備する可能性を示唆した。だが、現時点では撤退を進めると述べた。
また、トランプ大統領はISの支配地域の99%を取り戻したとし、「我々は近い将来、100%と発表することになるだろう」と付け加えた。
(翻訳、編集:山口佳美)