空飛ぶ車に着目する時、モルガン・スタンレーの著名アナリストが指摘

空飛ぶ自動車

初飛行テストに成功したボーイングの空飛ぶ車。2019年1月22日。

Boeing/Handout via REUTERS

  • モルガン・スタンレーの著名自動車アナリスト、アダム・ジョナス氏は「電動自動運転の垂直離着陸機」、つまり空飛ぶ車は勢いを増していると語った。
  • ジョナス氏は、投資家は空飛ぶ車の将来性に着目すべきと述べた ── だが、そうした技術進化の恩恵を受けそうな企業名はあげていない。
  • 少なくとも4車の自動車メーカーと航空宇宙企業が空飛ぶ自動運転車のテストを行った。たとえばボーイングは1月、初の飛行テストを行ったと発表している。

「自動運転車の明るい未来を信じているなら、自動運転の飛行機、つまり空飛ぶ車に目を向ける時」

こう語ったのはモルガン・スタンレーの自動車アナリスト、アダム・ジョナス(Adam Jonas)氏。飛行機よりも車についての見解知られる同氏は「Get Ready For Flying Cars」と題した顧客向け文書で近い将来、空飛ぶ車が実用化される可能性を考察した。

ジョナス氏はその可能性について以前にも投資家にアドバイスを行っているが、今回は実用化の進展について新たなタイムラインを示した。

「これは現実離れしたアイデアではない」とジョナス氏は2月1日付けの文書に記した。

「軍事用ドローンはすでに何年も前から使用されている。そして今、電動自動運転の垂直離着陸(VTOL)機が勢いを増しつつある」

実際、ボーイングやエアバスなど、少なくとも4社自動車メーカーと航空宇宙企業が空飛ぶ車のテストを行った。ボーイングは1月、初の飛行テストを行ったと発表している。

ジョナス氏は、自身の見解を裏付ける根拠をいくつかあげた。

ドローンを使った配送がすでに実地試験の段階に入ったこと。そして次にNASAが2018年末に、都市航空交通の開発を促進する取り組みを開始したこと。

さらに「航空宇宙・軍需大手がヘリコプターを使ったライドシェアリング・サービスや、より静かな電動ヘリコプターといった分野に投資している」こと。

さらにジョナス氏は、未来のライドシェアリングのコンセプトについて、より具体的で実現可能性の高いモデルを示し、空飛ぶ車は非常に魅力的な市場になると述べた。

「街で夜を楽しんだ後、20マイル(約32キロ)離れた郊外の自宅まで、配車サービスを利用するとする。平均時速25マイル(約40キロ)で走行したとして、自宅まで48分。料金は1マイル(約1.6キロ)につき1.50ドル(約170円)として30ドル(約3300円)。

配車サービスにとっては忙しい1日で、1回の勤務シフトで10回乗客を運べたとすると、ドライバーの売り上げは300ドル(約3万3000円)、1年では7万5000ドル(約840万円)となる。自動運転車なら、売り上げはそのまま企業に入ってくる。

では、大型のドローンや自動運転飛行機が時速100マイル(時速約160キロ)、1マイルにつき2.50ドル(約280円)で、乗客を20マイル(約32キロ)先まで運べばどうなるか?

スピードが速いので、顧客は自動運転車よりも高い料金を出す。50ドル(約5500円)出せば12分で帰宅できる。スピードが速い分だけ顧客を運べる回数も増え、8時間のシフトで40回の飛行も可能。

つまり、1回のシフトで2000ドル(約22万円)の売り上げになり、さらに稼働時間を増やせば、空飛ぶクルマ1台あたり1年で150万ドル(約1億7000万円)近い売り上げをあげることも不可能ではない」

未来の空飛ぶ車についてのジョナス氏の基本的なケースシナリオは、高度なテクノロジーと規制についての代表例でもある。同氏は、テクノロジーは、規制、インフラ、予算を上回ると信じている。

だがジョナス氏はより率直に、自動運転VTOL機やドローンの普及は「官僚主義や法整備の遅れによって、足を引っ張られる」と予測している。すなわち、現在のドローン市場と似た状況

それでもジョナス氏は、空飛ぶ車の全世界での市場規模は2040年までに1兆5000億ドル(約170兆円)に成長し、世界全体のGDP(国内総生産)の1.2%を占めると予測している。

ジョナス氏は空飛ぶ車の現実的な普及曲線として、下図のようなタイムラインを提示した。

空飛ぶ車は2030年までに実現するか?

空飛ぶ車の普及曲線

モルガン・スタンレーが予測した空飛ぶ車の普及曲線。

Morgan Stanley

  • 第1段階(2018〜2020年):ステルス開発/プロトタイプ開発
  • 第2段階(2020〜2025年):概念実証/規制当局の関与
  • 第3段階(2025〜2030年):インフラの計画/限定的な短距離での実用化
  • 第4段階(2030〜2040年):初期の商業展開
  • 第5段階(2040年以降):大規模な商用展開

確かに、空飛ぶ車が直面しているリスクは多い。ジョナス氏は空飛ぶ車のハードルは「技術的なものだけではなく」、規制や法律、消費者の行動などがハードルとなる可能性があると指摘した。

しかし、ジョナス氏は弱気な予測シナリオでも、空飛ぶ車は世界のGDPにおいて一定の比率を占めるようになると見ている。同氏の最も弱気な見通しでは、2040年までに市場規模は6150億ドル(約68兆8000億円)に達する。

「電動自動運転飛行機のテクノロジーは、まだ開発途上にある。だが無人飛行、安全性、効率といった分野は急速に進化している」

[原文:'Get ready for flying cars,' says Morgan Stanley's widely followed auto analyst

(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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