「バルセロナからウーバー撤退」現地在住者が見た、タクシードライバーたちの戦い

Uberストライキの運転手たち

2018年に引き続き2019年1月バルセロナの大通りを占拠してストを行うタクシー運転手達。地中海性気候とは言え、今回は流石に寒そうだ。

Albert Gea/Reuters

2018年7月下旬、Uber(ウーバー)やCabify(キャビファイ、楽天が出資)といった大手タクシー配車サービスを対象に1週間あまり続いたスペイン・バルセロナでのタクシーのストライキについて取り上げた。

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ストライキは2019年1月下旬にも1週間ほど行われ、バルセロナ市民も度重なるストに「今回もどれだけ続けるつもりか」と冷ややかに見守る向きも多かったが、バルセロナ市議会が規制関連法令を可決。先週UberもCabifyもバルセロナから撤退を表明し、タクシー組合側が勝利した。

配車サービスやアプリそのものを法的に規制しようとしているわけではない

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既にバルセロナ市内で使用不可になったUberアプリ(左)。Googleマップ上でも以前は配車サービス間で価格比較できたが今はタクシー組合提携アプリmytaxiのみ(右)。

バルセロナ市が可決した法案は、タクシー配車アプリの仕組みそのものを規制しようとしているわけではない。

以前から地元タクシー組合はmytaxiというアプリと提携しており、mytaxiでのタクシーの配車・支払は今も可能だ。バルセロナ市が規制したのは、タクシーのライセンスとは別に、現状UberやCabifyなどのサービスに付与されているVTC(Vehículos de Turismo con Conductor:運転手付き観光車両)というライセンス枠に対してのみ。

VTC枠の場合、利用の15分前までに予約を申し込まなければならず、しかも「利用者は配車される車のGPS情報を知ることができない」というハードルが設定され(つまり利用者は待ち時間がわからない)、新規参入サービスにとって、とても厳しい規制になっている。

世界最大級の通信系イベント「MWC 2019」直前にストをぶつけた理由

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Shutterstock

今回のストライキは、2月25日から2月28日に開催されるMWC 2019 Barcelona(旧Mobile World Congress) のちょうど1カ月前を狙って行われた模様だ。Uberなどでは1カ月前から配車予約が開始されるが、新たな法令を受けてMWC関連の予約が始まる前のタイミングで、2月からのサービス継続を断念せざるを得なかったようだ(そうしなければ大量の予約キャンセルを抱えてしまうことになる)。

日本からもさまざまな企業が出展・参加するこの世界最大級のモバイル関連イベントには、主催者のGSMAによると 、2019年は世界中から来場者10万7000人、出展社数2400社以上を見込んでいるという。

もちろんタクシー業界にとっては大変な書き入れどきになるが、その半面、この時期にタクシーが揃ってストライキを行ったら、交通事情もスペイン語もわからない出張者たちで市内は大混乱になるだろう。皮肉なことにモバイル技術の展示のため多くの人が訪れるMWCが、逆にモバイルアプリを活用したサービスであるUberやCabifyの撤退に大きな影響を与える機会になったことになる。

またこのMWCの忙しい時期を狙って、タクシーだけでなく電車など公共交通機関もストライキを行うので、市民も毎年少なからず影響を受ける(2019年は地下鉄と空港の保安検査場でストライキ実施の情報が出ている)。また出張者を狙って、スペイン中からスリや売春婦が集まるのもこの時期だ。

「規制緩和変えた」巧妙なストライキ

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バルセロナ Urgell地区の大通りに立ち、独立運動に関わった政治家を解放するように訴えている市民団体。写真を取っていいかと聞いたら、「そんなこと聞かなくても当たり前のことだろ!」と軽く怒られた(2019年2月4日撮影)。

2018年は観光客がバルセロナに殺到する8月のバケーション時期直前を狙って、タクシー運転手らは1週間あまりのストライキを行っていた。1週間ストライキをするということはその間の収入も途絶えるわけで、タクシー運転手たちの負担も大きく、それだけ覚悟を持っているということ。

ともあれ、時期を選び効果的に実力行使を行った結果、それまで規制緩和に傾きつつあった政府に再考を促し、UberやCabifyを撤退させるまでに至った。バルセロナでは年中、何らかのストライキが行われていて地元住民も馴れていることもあるが、ストライキ中でも通院などで止むを得ない場合にはタクシーの配車を行ったり、ストライキについて地元社会に理解してもらえるように配慮も怠っていない。

昨夏の記事でも触れたが、家族連れでストライキに参加している運転手たちもいる。こういった地域社会の理解もあって、時に行き過ぎる感もあるが、うまく結束してストライキを行えているのではないだろうか。

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さまざま工夫を凝らして日常生活空間内に政治的メッセージを散りばめようとする草の根的な運動が盛んだ。バルセロナの人たちは、世間に自分の意見を晒すことをほとんど怖れない。

Cabifyのバルセロナ撤退は、楽天にも影響するか

三木谷

MWC2018にスピーカーとして登壇していた楽天・三木谷氏(写真は2018年にサンフランシスコで開催されたRakuten Optimism Conference でのもの。左はLyftの共同創業者John Zimmer氏)。

Rakuten

Cabifyはラテンアメリカ諸国やイベリア半島(スペイン・ポルトガル)を主にサービスを展開しているが、海外の報道では楽天から数億ユーロ規模の大型出資を受けているとされる。ラテンアメリカ諸国ではEasyという既存のタクシー組合と共存する形のアプリを提供していて、バルセロナでも同様の提案を行ったが一蹴され、議会に法案を通されてしまった。

バルセロナだけでなく、国ではデンマーク、ハンガリー、ブルガリア、トルコ、都市ではロンドン、ブルノ(チェコ)など国際的に展開しようとするタクシー配車サービスを禁止、あるいは規制を設けている国や都市も増えている。こういったオンライン配車サービスの新規参入に対して法律による規制緩和・整備を待つ向きもあるが、必ずしも新規サービス側に有利に法改正が行われるとは限らない。

(文、写真・類家利直)

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