国内伸び悩むフルグラ、救世主は爆買い中国人。春節の京都で新商品アピール

舞妓さん

カルビーは春節期間の2月6日、京都・建仁寺でフルグラ新商品のPRイベントを開いた。

春節(旧正月)に入り、京都・祇園では中国語での会話が普段にも増して聞こえてくる。にぎやかな花見小路の突き当たりに建つ建仁寺では2月6日、カルビーのフルグラ新商品PRイベントが開かれた。

お茶のお点前を披露し、興味を持って近づいた旅行者にフルグラのサンプルや、抹茶ドリンクを提供。茶種を中国から持ち帰り、日本で茶の普及に寄与した栄西が建立した建仁寺を会場に選んだのは、新商品が抹茶味であり、そのターゲットが中国人だからだ。

知らぬ間に中国で人気に

抹茶味

フルグラの抹茶味は2018年末に中国、2019年1月には日本で発売された。

フルグラがこの数年、中国人の間でバカ売れしていることをご存知だろうか。小林製薬の“神薬”や象印、タイガーのステンレスボトルと並び、爆買い銘柄の一角に食い込んでもう数年になる。

カルビーが“異変”に気付いたのは、2015年ごろだったという。

執行役員でフルグラ事業本部の藤原かおり本部長は、「全国のあちこちから、中国人が大量にフルグラを買っているという情報が寄せられました。最初は台湾で火がついたとの話もありますが、はっきりしていません。意図せずしてブームが起きたのです」と当時を振り返る。

藤原さん

藤原さん(左から5番目)がフルグラを担当し始めた2012年以降、売り上げは右肩上がりで伸びている。。

カルビー提供

爆買いされた理由について、藤原さんは「ドラッグストアの目立つ位置に置かれていたことが大きいと思います。中国や台湾の旅行者はドラッグストアによく立ち寄るので、最初は他の商品を買うついでにフルグラにも目が行ったのではないでしょうか」と分析した。

当時、中国にフルグラを運び込んでいたのは、旅行者や転売を目的とした個人・業者だった。棚ぼたで手に入れた中国需要の開拓にカルビーが取り掛かったのは2017年。7月に中国EC最大手アリババのプラットフォームで販売を開始。同年11月以降は京東商城(JD.com)など他のECやリアル店舗にも販路を広げた。

カルビーが2月5日に発表した2018年度第3四半期(4〜12月)の決算によると、フルグラの売上高は前年同期比11.2%増の約223億円。国内は同5%減ったが、中華圏をメーンとする海外が同157.2%伸びて52億円となり、全体の数字を押し上げた。

2017年6月にまではゼロだった海外売上高が、今や全体の4分の1を占めるまでに成長している。

スナック菓子とすみ分けできる優等生

舞妓さん2

イベントには舞妓姿の女性も登場。外国人旅行者の人気を集めた。

「カルビーの社名の由来はカルシウムとビタミンB1なんですよ。フルグラは、健康に役立ちたいという当社の理念にも一致する商品です」(藤原さん)

藤原さんによると、1991年に「フルーツグラノーラ」という名前で発売された同商品の売り上げは、2011年まで年30億円前後で推移。しかし、松本晃会長(当時)は「シリアルの市場規模はアメリカでは1.2兆円あるのに、日本では250億円しかない。これほど差があるのはおかしい」とその成長力を強く信じ、商品名を認知しやすい「フルグラ」に変えると同時に、マーケティングを強化した。

藤原さんは、「フルグラは企業イメージにも貢献するし、スナック菓子とすみ分けができるので、既存の商品シェアを侵食することもありません。会社にとってもメリットの多い商品です」と強調する。

働く女性を主なターゲットに、「手軽で栄養価が高い時短朝食」というイメージが徐々に浸透し、フルグラの売り上げは2012年から右肩上がりで伸びていった。

だが、快進撃を続けてきたフルグラは、日本での成長が踊り場を迎えている。2017年度の売り上げは0.6%増。直近の2018年度第3四半期はマイナスに落ち込んだ。

国内が伸び悩む中で、中国市場への期待感は一掃高まっているものの、実際には「国内の対応に手いっぱいで、中国は手があまり回っていなかった」(藤原さん)状態。攻めの一手を打つため、フルグラ事業部は2018年6月、マーケティング経験が長い丁明さんを中国事業担当者として外部から採用した。

京都タワーも抹茶色に

京都タワー

6日の夜は京都タワーも抹茶色に。

建仁寺で旅行者に振る舞われたフルグラ抹茶味は、今年1月21日に日本でも発売されたが、メインターゲットは中国だ。2018年12月に中国のスーパーなど店頭で発売。さらに、売り上げの大きい中国ECでの取り扱いを3月に控えている。

丁さんは「中国でフルグラ人気が起きたのは、元をたどれば日本でヒットしたからです。新フレーバーの抹茶味も、日本で受けているという雰囲気を中国に伝えたい」とイベントの狙いを話す。

イベントでは用意したサンプル300セットが数時間でなくなった。とはいえ、そこで商品を手に取った中国人は、全体の市場から見ればほんの一握り。夜はクライマックスとして、京都タワーを抹茶色にライトアップしたが、その意味に気づいた人もいないだろう。

丁さんは、「もちろん今日サンプルを受け取ったから明日買うという動きにならないのは分かっています。実は京都タワーのライトアップも含め、イベントの様子を編集して、ECでの発売直前にSNSで拡散するのがもう一つの目的です」と説明した。

中国女性認知度48%、購入経験は1%

丁さん

中国人旅行者に商品を説明する丁さん(左)。2018年6月にカルビーに入社した。

カルビーはフルグラの売り上げを中期的に500億円に増やす目標を掲げる。2018年8月には、中国出荷用のフルグラ工場を京都で稼働開始した。抹茶味は、京都産のシンボル的な商品でもある。

藤原さんは、「京都工場はフル操業したら、出荷額ベースで約120億円の生産能力があります。中国での売り上げを倍増させることを前提とした投資で、大きな覚悟と決意によるものです」と話す。

カルビーの調査によると、中国人女性のフルグラの認知度は48%にも上るという。だが、6日のイベントでは、通りかかった中国人が試食品を手に、「これ何?」「食べ物?」とスタッフに質問する姿が目立った。

丁さんは、「フルグラの赤いパッケージの認知度は高いのですが、購入したことがあると答えた人は1%しかいなかったんです」と説明した。女性認知度48%と購入経験1%の落差は大きいが、「買ってくれるかもしれないお客さんがそれだけいると考えたら、何でもやってみようと思います」と話した。

(文・写真、浦上早苗)

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