女性への「通販商品送りつけ被害」実態。キーワードは「セクハラ・山口県」

政治家や弁護士などが頼んでいない通販商品を着払いで送り届けられるケースが相次いでいる。2019年2月7日、被害にあった7人の女性たちが東京で記者会見を行った。

実態を見ると、「女性」「性暴力」「山口県」など、共通するキーワードが浮かび上がってきた。

性差別や性暴力で発信し始めてから

送りつけ

女性たちが販売元に問い合わせて入手した商品の送り状には、山口県の消印が。

撮影:竹下郁子

最も早くから被害にあっていたのは、弁護士の太田啓子さんだ。2017年7月から2018年12月までの間に5回ほど、勤務する法律事務所宛てに注文していない美容ドリンクや化粧品などが代引きで送られてきたという。

「性差別や性暴力について発信したり、メディアに出るようになったのは、ちょうどその頃です。憲法について考える『憲法カフェ』などの取り組みは2013〜14年頃から続けていましたが、こうした被害はありませんでした。

Twitterでも改憲や政権の批判をするより、ジェンダーについて投稿する方が多くのバッシングがきます。女性が性差別について物言うとやっぱり嫌な思いをするんだなと」(太田さん)

太田啓子

弁護士の太田啓子さん。

撮影:竹下郁子

Business Insider Japanの以前の記事でも報じた北九州市議の村上さとこさんは、2018年6月にブラジャー16点が送られてきて以降、美容ドリンクやサプリメントなどこれまでに10件以上も被害にあっている。

関連記事:女性政治家が晒されたここまでのネットハラスメント —— なぜTwitter社はネトハラを放置するのか

「同時多発的に女性たちが同じような被害にあっていることが今回初めて分かりました。卑劣で許せない行為です。被害が今後も続いたり、他の人にも広がることを危惧しています」(村上さん)

送りつけ

北原みのりさん(左)、村上さとこさん(中央)、濱田すみれさん(右)。

撮影:竹下郁子

生後7カ月の長男を連れて議会の本会議に出席しようとして厳重注意処分を受けた熊本市議会の緒方夕佳議員は、約4000円の美容ジェルが自宅兼事務所に届いたという。家族が受け取り、間違って代金を支払ってしまったそうだ。

その後も2回にわたって同様の被害にあっている。初めて送りつけがあったのは2018年10月。前月の9月には議会でのどあめをなめたことが議会の品位を軽んじたとして懲罰動議にまで発展した。

「のどあめのことがきっかけで送りつけが始まったのではないかと推測しています。村上議員へのブラジャーなどからも明らかなように、これは女性への性的嫌がらせです」(緒方さん)

緒方夕佳議員

熊本市議会議員の緒方夕佳さん。

撮影:竹下郁子

女性の人権やジェンダー平等について活動しているアジア女性資料センターの濱田すみれさんは、「こういう活動をしていると普段から嫌がらせの電話やメールをたくさん受ける」と言う。

今回の送りつけのきっかけは、財務省・前事務次官のセクハラ問題で、麻生大臣が「セクハラ罪っていう罪はない」などと発言したことを受けた街頭行動で、濱田さんがスピーチしたことが原因だと考えている。

というのも、濱田さんが商品の販売元から取り寄せた注文ハガキには(旧字体の「濱」ではなく)「浜田」と書かれていたが、街頭行動を報じた新聞にも同様に「浜田」と書かれていたからだ。

弁護士の猿田佐世さんも「普段は外交問題に取り組んでいて女性問題についての発信はしていなかった」そうだが、「フェミニズムという名前がつくシンポジウムに初めて登壇したのが1月で、その宣伝が始まったのが2018年12月です。その頃から送りつけが始まった」そうだ。

7人の多くに共通していたのは、性差別や性被害、ジェンダーにまつわる発言がきっかけで送りつけが始まったのではないかということだ。

彼女たちの他にも、塩村文夏・元東京都議や女性弁護士2人が同様の送りつけ被害にあっているという。

注文ハガキの消印は山口県

送りつけ

北九州市議の村上さんに送りつけられた商品の注文ハガキ。消印はすべて山口県だったという。

撮影:竹下郁子

共通点は他にもある。それぞれが送りつけられた商品の販売元に問い合わせて注文ハガキを送ってもらったところ、作家の北原みのりさんを除く全員、「山口県」の消印があったのだ。

さらに、注文ハガキの筆跡も似ているものが複数見られたという。

村上さとこ議員についてはすべて山口県の消印で、「山口県内でWOWOWを視聴している人だけに配っているチラシからの注文もあった 」(村上さん)そうだ。

村上さんは2018年6月に偽計業務妨害容疑で警察に被害届けを提出しているが、あとの6人は法的措置はとっていない。

作家の北原みのりさんは「被害額が少なかったですし、声を上げることで相手を喜ばせてしまうのではないかと思い、黙ることを選択してしまった」と振り返った。

「村上さんのことを知って、送りつけられている物がブラジャーや健康食品で、私と一緒だった。犯人は同じ人、同じグループではないかと。

物言う女性に対する攻撃は、本当に多くの女性が味わっていると思います。脅迫、年齢、容姿に関することなど女性ならではの差別表現がたくさんくる 。送りつけも同様の言論封殺なんじゃないかと。声を上げる村上さんを一人にしたくないと思ったんです」(北原さん)

太田弁護士は今回の会見について、「被害を可視化したかった。黙らない選択肢もあるという姿を見せて、連帯できると示したい」と語った。同様の被害にあっている人からの問い合わせや相談はokuritsuke@gmail.comで受け付けるという。

(文・竹下郁子)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中