メルカリ
決算説明会は、メルカリ社長兼COOの小泉文明氏(左)と、長澤啓 執行役員CFOの2名が質疑に応えた。
メルカリは2月7日、メルカリの会計年度の第2四半期決算を公表した。
売上高の推移は堅調で、前年同期比で45%増の132億円。一方で、米国版メルカリへの継続投資や、いまだ開発フェーズを脱していない決済事業「メルペイ」のコストが重く、営業損益は第2四半期だけで11億円、上期累計で最終損益44億7500万円の赤字が続く。
この四半期の売上高は132億円。そのうち、国内事業が122億円と大半を占める。メルペイの状況は「開発中」のままだ。
季節要因で「ちょっとできすぎ」な国内版メルカリの現状
国内の流通総額は昨年比で48.7%と大きな成長を続けている。今後は、アパレル依存からカーパーツなどを含めた男性向け商品の強化、さらには「新聞広告」のような多様な手段を使って、メルカリを認知していないユーザーの開拓を進めるという。
これまでもメルカリ幹部は、躊躇(ちゅうちょ)なく投資のアクセルを踏み、まず流通金額の規模を大きくし、その後、回収するというのがメルカリの基本的なビジネスの作り方だと公言してきた。
決算会見に登壇したメルカリ社長兼COOの小泉文明氏はあらためて、そうした企業文化とともに、冷静に赤字を続ける姿勢で「一定のバーンレート(赤字発生)とコストの投資の比率を保ちながら、引き続き成長を加速していきたい」と説明。「(アメリカでの成功は)私たちの事業のミッションでもあるので必ず成功させたい」と、改めてアクセルを踏み続ける意思を示した。
会見の冒頭に挨拶をする小泉氏。
今回の四半期決算にあたる10月〜12月は、C2Cアプリにとっては季節要因でとりわけ「好調」になる、いわばハイシーズン。これは冬物アパレルが活発に取引される時期であるためで、例年、この時期に流通総額をジャンプさせ次の成長のベースとしてきた。
メルカリの知名度が上がりサービスとしても成熟してくるにつれて、流通総額の「ジャンプ」の幅(率)は鈍化してきはいるものの、直近10月〜12月の流通総額(前年同期比48.7%増)、月間ユーザー数(MAU、同28.2%増)を挙げ、「私たちもできすぎた数字、かなりいい数字だと把握している」(小泉氏)と、想定以上の好調な推移だったとした。今後も、これまでどおり過度な広告依存はせず、成長させていく方針と言う。
買収した「カーチューン」との連携も開始。データベースは基本的に共通で、カーチューン上で決済しようとするとメルカリに飛ばされる仕組み。同じ商品はメルカリ上にも出品されている。
なお、メルカリは2月4日から、カスタム自動車SNS「カーチューン」(2018年10月におよそ15億円で買収と報道)と連携し、中古パーツの流通も開始している。流通総額へのポジティブ影響については、まだ連携開始後3日しか経たないこともあり、言及は控えた。
小泉社長が語る「ヨーロッパ撤退」の背景、米国版メルカリ事業の状況
左が米国版メルカリアプリ。右が日本版メルカリアプリ。配色も、機能もまったく違う別のアプリとして、市場に合わせた開発を進めている。(2018年6月撮影)
メルカリの収支状況を語る際には、常にアメリカ事業の状況に注目が集まる。国内事業だけであれば黒字だが、戦略事業(米国版メルカリ、メルペイなど)によって赤字になっているからだ。この状況は第2四半期も継続している。
アメリカ事業の状況。流通総額は着実に増えているが、目指す先はまだまだ遠い。
具体的には、第2四半期単体で、国内メルカリ事業の営業利益は30億円。一方、メルカリ全体の営業損益は11億円。その差額である「41億円」の大半が、第2四半期における米国版メルカリとメルペイを合計した今期の損失相当ということになる。それぞれの比率は公開していないが、「ほぼ前四半期と同レベルの営業損失、投資額」(長澤啓 執行役員CFO)として、コントロールされた赤字であることを強調した。
アメリカ事業の目標値はいま「月間の流通総額1億ドル」をターゲットに改善を進め、今期はようやく前年同期比で69.3%増の8700万ドル(約95億5900万円)、当面の目標までもう一歩というところまできた。
メルカリのUS CEOを務めるジョン・ラーゲリン氏。シリコンバレー級人材の採用と改善に力を注ぐ。(2018年6月撮影)
とはいえ、その規模は国内の同期の流通総額実績1289億円を3で割ると、単純計算で1カ月あたり429億円。つまり、アメリカ事業の規模は日本事業の2割強の水準と計算できる。昨年に比べて流通総額の改善は進んでいるとはいえ、「1億ドル」は単なる通過点にすぎないはずだ。
アメリカ事業の大幅な成長が求められるなか、2018年12月18日には、100%子会社であるもう1つの海外事業、Mercari Europeなどの解散を発表した。これについては質疑の中で、UKを続けることは可能だったとしつつも、
「お金も人材も、経営陣のマインドも、1カ国(負担が)増えれば、そのぶんUSの成功確率を下げる可能性はゼロではない。いまは最大限USを成功させることにフォーカスしたい。(そのため)苦渋の決断だったが、一度UKについては撤退するという決断をした」(小泉氏)
と、意思決定の経緯を語った。
「メルカリ経済圏」拡大のキー「メルペイ」、登場はもう少し先
merpay
メルペイ事業については、まだお披露目にはしばらく時間がかかりそうだ。
PayPayやLINE Payなど先行する陣営が存在感を示すなかで、メルペイのスタート時期に関する質疑のやり取りにも、特にサービスインを慎重に進めている様子がうかがえる。
「メルペイのローンチ(開始)については、金融サービスということもあり、ネットサービスの常識のように、とりあえず出してみて、バグが出たら修正して直していこうという考えでは、少し金融サービスの事業者としての責任を果たせないと考えている。
慎重にきちんとシステムの安定性や社内の体制を準備した上で出していきたい。もうしばらくお待ちいただければ」(小泉氏)
一方で、「メルペイの強み」については、加盟店の広さを競合と競うのではなく、本質的には「入金」部分にあるとした。
「(他社のペイメントでは、この図の)“入金”のところに売り上げという概念がない。ある意味、給料をもらったとき、ユーザーがそれをクレジットカードで払うか現金で払うか、モバイルペイメントにするか、という話(給料の陣取り合戦)だと思っている。
(一方で)私たちは、今四半期でいうと400億円がユーザーの"お財布に入っているという状況。お給料とは違う“エクストラなお金”がアカウントに入ってくる。これがいろいろな加盟店で使われることで、(給料以外の収入源を使える)モバイル決済として習慣化され、私たちのサービスとして成り立っていく、ということを考えている」(同)
国内事業は好調で、規模拡大の打ち手もさまざまに持っているメルカリ。
堅調なコア事業があるからこそ、堂々とした赤字を続けられるということはあるが、アメリカ事業の重みは、まだしばらくの間は軽くなることはなさそうだ。
(文、写真・伊藤有)