[更新]日産の業績むしばむゴーン流「系列破壊」の傷跡。再び迎えた試練の時

日産自動車グローバル本社。

ゴーン体制の負の遺産が日産自動車の業績をむしばんでいる。

撮影:庄司将晃

現役会長だったカルロス・ゴーン被告の衝撃的な逮捕劇からほぼ3カ月。大揺れの日産自動車は2019年2月12日、事件後初めてとなる四半期決算を発表した。

仏ルノー・三菱自動車との3社連合のトップとして販売台数を世界2位に押し上げ、カリスマ経営者の名をほしいままにしていたゴーン被告。しかし実際には、ゴーン体制の負の遺産が日産の業績を静かにむしばんでいる。

不振の本質的な原因は「ゴーン体制の負の遺産」

ゴーン被告。

「再建請負人」として日産のV字回復を主導したカルロス・ゴーン被告だったが、その後は精彩を欠く場面も目立った。

REUTERS/Toru Hanai

日産は2月12日、2019年3月期の連結業績予想を下方修正。本業のもうけを示す営業利益は、当初の予想から900億円少ない4500億円とした。この通りなら3期連続の営業減益となる厳しい状況だ。同時に売上高と純利益の予想も引き下げた。

売上高の半分ほどを稼ぎ出す北米地域の要、アメリカ市場に全体として息切れの兆しが見えるなか、日産車の販売も苦戦。世界最大の自動車市場である中国なども含め、世界経済の減速感は強まっている。原材料高に加え、新興国の通貨安も円建ての利益を押し下げた。

これらの外的な要因によって、事業環境が厳しさを増しているのは確かだ。しかし、逆風のなかでもトヨタ自動車の2018年4~12月期は前年同期比で営業増益となるなど健闘している。

日産の業績不振の本質的な原因は、ゴーン体制の負の遺産だ ——。

自動車業界担当アナリストとして30年以上のキャリアを持つ、SBI証券の遠藤功治・企業調査部長はそんな見方を示す。

部品メーカーとの関係が変質、消えたロングセラー車

日産自動車の決算会見

2019年2月12日、決算発表会見に臨む日産の西川廣人社長。

撮影:庄司将晃


「20年近く続いたゴーン体制は、最初の5年とその後の15年で全く意義が異なります」(遠藤氏)

経営危機に陥った日産に1999年、資本提携先のルノーから「再建請負人」として送り込まれたゴーン氏。村山工場(東京)などの閉鎖、2万1000人にのぼる人員削減、「系列破壊」とも言われた親密部品メーカーとの取引慣行見直し、といった大改革を断行した。

過去のしがらみにとらわれないドライな決断によって「V字回復」を実現したサクセスストーリーは、日本の企業文化にも大きな影響を与えた。

「ゴーン氏による改革がなければ、日産という会社は今の形では存在していなかったでしょう。最初の5年間のパフォーマンスは非常に良かった」(遠藤氏)

その後も経営者としての名声が失われることはなかったが、実際には3回連続で経営計画の目標が未達に終わるなど、精彩を欠く場面も目立つようになっていた。

3社連合の販売台数をとにかく増やし、スケールメリットによって部品の調達コストを下げて利益を積み上げる。そんなゴーン流の戦略は、数字を見る限り、それほどうまくいっているとは言いがたい。

例えば、最近の自動車事業の営業利益率(2018年4~12月期)はトヨタが8.2%だったが、日産は1.7%。日産などの3社連合とトヨタの世界販売はいずれも年1000万台ほどでほぼ同じなのに、利益率では大差がついている。

日産がとくにアメリカで、値引きの元手として販売店に奨励金を配る販売テコ入れ策に頼りがちなことも、利益を圧迫する要因だと言われてきた。

「国内外で息長く売れるヒット車をほとんど生み出せなくなったのが問題です。『技術の日産』と言われ、スカイラインを始めとするヒット車を次々に出していたかつての姿とは様変わりです。

ゴーン流の『系列破壊』は短期的には業績アップに大きな効果がありましたが、長い目で見れば失敗でした。

新車は5年先を見通して開発するのがふつうです。日産は部品メーカーとの間で中長期的な関係を築きにくくなり、系列会社と密接に協力して原価低減や新技術開発を進めたトヨタとの間で大きな差がついてしまいました」(遠藤氏)

後継者不在、3社連合の行方に暗雲

日産とルノーのロゴ。

ゴーン被告個人の強い求心力があってこそ機能していた日産・ルノー・三菱の3社連合。今後も関係を維持できるかどうか予断を許さない状況に陥っている。

REUTERS/Christian Hartmann

日産で新車の完成検査を巡る不正が相次いだ背景にも、コストカット最優先のゴーン流経営があったと指摘される。

自動車業界が「100年に1度の変革期」にあるなか、自動運転や電気自動車、MaaS(Mobility as a Serviceの略。カーシェアなど車を所有せず、使いたい時だけお金を払って利用するサービス)といった新分野においても、総じてみれば海外勢などに後れをとりがちだ、という見方も目立つ。

日産などの3社連合はゴーン被告個人の強い求心力があってこそ機能していた。十分な実力と実績がある自身の後継者を育ててこなかったため、ゴーン被告がいなくなったとたんに、3社が関係を維持できるかどうか予断を許さない状況に陥った。

かつて「救世主」だったゴーン被告の退場とともに、日産は再び試練の時を迎えている。

編集部より:2018年4~12月期決算の内容を加え、記事は2019年2月12日17:20に更新しました。

(文・庄司将晃)

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