Strelka Institute/Flickr
- アメリカのテネシー州に拠点を置く保険会社ユーナム・グループ(Unum Group)では、アメリカ国内で働く従業員は使わなかった有給休暇を学生ローンの返済支援と交換することができる。
- ユーナムの従業員には、年間少なくとも28日の有給休暇が与えられる。このうち最大で5日を放棄し、学生ローン返済のために現金として受け取ることができる。
- 企業の大小に関係なく、アメリカでは学生ローンの返済を従業員への特典とする企業が増えていて、調査の結果、従業員の経済的な安定は全体的な健康や仕事のパフォーマンスに結びついていることが分かった。
大学を卒業した人の中には学生ローンの返済に苦労していて、有給休暇を買い上げてくれるなら「ぜひ」と思う人も多いだろう。
アメリカのテネシー州に拠点を置くフォーチュン500の保険会社ユーナム・グループは最近、新たな学生債務救済プログラムを発表した。このプログラムは、従業員が最大で5日の有給休暇を放棄する代わりに学生ローン返済のための現金を受け取ることができるというもの。
同社では、入社1年目には年間28日の有給休暇が従業員に与えられる。アメリカでは15日が平均だと、ブルームバーグは報じている。
報道によると、ユーナムの従業員は平均で3万2000ドル(約350万円)、月350ドル(約3万9000円)の学生ローンを抱えているといい、フィデリティ・インベストメンツが運営するこの新たなプログラムでは、放棄した休暇を従業員の課税前の時給で換算する。
年収6万ドル(約660万円)の従業員なら、標準的な8時間労働の日給は約230ドル(約2万5000円)、1年で1150ドル(約13万円)になる。従業員は2020年1月から、2019年に使わなかった有給休暇を現金化できるようになる。
ユーナムでは2年前に従業員の学生ローン負債に関するデータを匿名で集めるツールを導入したと、同社のグローバル・ファイナンシャル・ウェルビーイング担当のアソシエート・バイス・プレジデント、カール・ギャニオン(Carl Gagnon)氏はBusiness Insiderに語った。「そこから、我々はアメリカの従業員の約30%が学生ローン負債 —— 自分の教育もしくは子どもの教育のために —— を抱えていると推定した」とギャニオン氏は言う。
学生ローンに関する情報サイト「Student Loan Hero」の教育ローン担当のバイス・プレジデント、ケビン・ウォーカー(Kevin Walker)氏は、ユーナムの取り組みについて「従業員の学生ローン返済のために、企業にできることがあるというのは素晴らしいことだ」とBusiness Insiderに語った。
「4000万人以上のアメリカ人が現在、約1兆5000億ドル(約170兆円)の学生ローンを抱えている。従業員の教育への投資が彼らの生産性向上に役立っていると雇用主が認識することは理にかなっている」と、ウォーカー氏は言う。
Business Insiderが以前報じたように、IBMからフィットネス・スタートアップのPelotonまで、アメリカでは企業の規模の大小に関係なく、従業員に学生ローンの返済特典を提供する企業が増えている。
調査の結果、従業員の経済的な安定は全体的な健康や仕事のパフォーマンスに結びついていることも分かっている。2017年のオリバー・ワイマン(Oliver Wyman)氏の研究によると、学士号以上を持つ3000以上の世帯を調査した結果、約3分の1に学生ローンの借り入れがあり、雇用される側も返済を手助けしてくれる企業を好ましいと考えていた。
同調査では、従業員の45%が学生ローンの返済が最も望ましい特典だと回答していて、退職積立金や健康保険を上回った。2つの仕事のどちらかを選ばなければならないときには、90%の従業員が学生ローンの返済に貢献する特典の有無がオファーを受けるかどうかの決断に影響すると答えた。
(翻訳、編集:山口佳美)