モルガン・スタンレー辞めアフリカで起業。29歳「新しいエリート」が目指すビジネスと新しい社会貢献

外資系投資銀行での経験を経たのち、学生時代に芽生えた思いを胸にアフリカで起業した若き日本人。沈みゆく日本経済と、世界の成長のラストフロンティアとして期待されるアフリカ経済の橋渡しをしたいと語る、その想いとは。

共同創業者加賀野井氏とカウンターパートらとの集合写真。

中東で一緒に働いていた加賀野井薫氏(共同創業者)と、現地のカウンターパートらと。右から2番目が武藤氏。

「大企業がさらに大きくなるために、20代の貴重な自分の時間と能力と費やしていた。それよりも小さな規模の会社の大きな成長に携わり、同時に国際社会が抱える医療、教育、食料等の根本的な問題の解決に寄与することに時間を使いたいと思った」

新卒で就職したモルガン・スタンレー時代に抱いた思いをこう振り返るのは、Double Feather Partners Inc.代表取締役の武藤康平(29)だ。彼は、アメリカのボーディングスクール(全寮制の高校)を経て、筑波大学を卒業。モルガン・スタンレーでは日本企業の海外展開や海外企業買収に伴う資金調達といった、いわゆるクロスボーダー案件を担当していた。

その後、後の共同創業者となる加賀野井薫氏に誘われて中東国際機関傘下のPE投資部門に転職した。中東和平問題で頓挫したプロジェクトの中から投資可能な案件を見つけ、民間投資ファンドと民間企業だけで執行するというチームに所属。

イスラエルやパレスチナを中心に活動するなか、大手日系企業が進めていたアフリカ企業の買収で、買収先ポートフォリオ企業の経営を担当してほしいという話が個別に舞い込んだ。

これを期に独立し、同時にルワンダに拠点を移した。

ビジネスを通して社会課題解決に挑みたい

アフリカの街並み。

「社会問題をビジネスで解決する」というのが会社のミッションだ。

ルワンダ移住後は、アフリカの中小企業やスタートアップに対して財務や事業戦略の構築を週末のボランティアで手伝っていた武藤。徐々に現地経営者からの相談が増えて来たため、チームを編成してコーポレートアドバイザリー会社Double Feather Partners Inc.を立ち上げた。

同社は、有望なアフリカ現地のスタートアップや中堅企業の事業戦略や資金調達の手伝いと、アフリカへの事業拡大に関心がある日本や欧米企業に対する投資候補先の紹介、デューデリジェンス(企業の収益性やリスクなど総合的かつ詳細に調査して、企業の資産価値を適正に評価する手続き)や投資・買収実行の手続き、そして投資・買収先の事業拡大・企業価値拡大を担う。

本社は東京だが、ケニアのナイロビ、ルワンダのキガリにも拠点を持ち、2019年中には南アフリカのヨハネスブルグとナイジェリアのラゴスにも拠点を増やす予定だ。武藤はルワンダに居住拠点を持ちつつ、2週間から1カ月ごとに別の国に渡航して、アフリカを中心に日本、欧州、中東など世界中を移動する生活を送っている。

彼の経歴や働き方をみると、一見、今の仕事は前職の投資銀行におけるアドバイザリー業務の延長線のようにも思えるが、「社会問題をビジネスで解決する」というのが会社のミッション。「ビジネスを通して困難な社会問題解決に挑みたいという情熱がある人と働きたい」と武藤は言う。

アフリカに新しい「エコシステム」をつくる

アフリカの住宅街。

アフリカでは都市部を除き、基本的なインフラサービスが欠けている場合が多い。

武藤が注力するのはアフリカのインフォーマルセクター(政府の記録や統計に載らない非公式な経済活動)における課題解決。

アフリカでは都市部を除き、銀行、保険、医療など基本的なインフラサービスが整ってない場合が多い。より多くの人々がこうしたインフラにアクセスできれば、より多くの選択肢を得ることができる。結果的に国や地域の経済成長に大きく寄与しうるというのが彼の考えだ。

こうした課題解決のために、現地では非営利組織なども多く活動しているし、自ら事業を立ち上げて課題解決に挑む日本人起業家もいる。しかしほとんどは、共通課題に取り組んでいても個別に動いている場合が多いのだ。

対して武藤らのアプローチはある社会課題を設定し、解決に必要な技術や人材などを集約させ、関連する企業やNGOなどが連携するようなエコシステムを構築するというやり方だ。技術や人材があるキープレーヤーであるスタートアップや中堅企業を見極め、アドバイザリーとして携わり、資金調達の手伝いをすることで、彼らの取り組みを拡大させることに注力している。

日本企業にもリターンをもたらす

ルワンダの地元コミュニティーの人々との写真。

ルワンダの地元コミュニティーの人々と。アフリカでもっと多くの人が生活インフラを使えれば、経済成長にも貢献できると考えている。

一方、日本に対する想いもあるようだ。

アメリカ留学時代に感じた日本人としてのアイデンティティの意識、そして日本が国際社会でどうやって潜在力を生かしていくのか、ということについては、アフリカビジネスへの想いとも重なる。

「アフリカの課題解決に、日本企業の技術をもっと生かしたい」(武藤)

例えば、日本の技術をアフリカの社会問題解決に応用し、現地の雇用を生み出すと同時に、スタートアップに資本参画することで、技術移転だけでなく日本企業にも経済的なリターンをもたらすことができるという。

「次のステップとしては、資金調達をして投資ファンドを作る予定です。社内でも関連事業を増やしシナジーのある現地企業は積極的に買収や資本連携して、志を共にする仲間を増やしていき、事業体としても大きくしていきたい」(武藤)

アフリカ各地にいるクライアント、そして同じ絵を描く仲間や投資家と一緒に世界各国を飛び回るライフスタイル。必要な情報や欲しいデータが入手しづらいアフリカ市場で、一次情報のネットワークに入り込み、五感で判断し、新しいアイデアを生みだす。そしてグローバル企業で身につけた知識を武器に、自分にしか価値を出せない部分に注力して働く。

まさにグローバルなミレニアル世代の新しいエリートの姿かもしれない。 (敬称略)

MAKI NAKATA(マキ・ナカタ):Maki & Mpho LLC共同創業者・代表。南アフリカ人デザイナーの柄と日本のモノづくり要素を融合したインテリア・ファッション雑貨ブランドMAKI MPHO(マキムポ)の企画・販売事業と、世界の時事問題をアフリカ視点から発信するメディア事業を手がける。アフリカ・欧州中心に、世界のクリエイティブ起業家の動向を追い、協業や取材も。コンサルティング会社、大手ブランド会社を経て起業。国際基督教大学教養学部学士、米フレッチャー法律外交大学院国際経営修士。

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