撮影:西山里緒
全米を揺るがせた「ケンブリッジ・アナリティカ」スキャンダルの勃発から約1年、Facebookはユーザーの個人情報の扱いに関して、強い批判に晒されてきた。
ケンブリッジ・アナリティカ問題:2016年のアメリカ大統領選に際し、選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカが、8700万人分のFacebook利用者の個人データを不正に収集したとされる問題。選挙広告などを通じて世論誘導に関わった可能性があるとして、大きな問題に発展した。
こうした批判を受けて、Facebookは広告の透明性を確保する取り組みに力を入れる。
1月25日、マーク・ザッカーバーグ CEOはウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿し、Facebookはユーザーの個人情報を売っていないとあらためて説明した。
Facebook本国から来日した、ジョー・オズボーン氏。
撮影:西山里緒
2月13日には、Facebookのコーポレートコミュニケーションマネージャー、ジョー・オズボーン氏が来日し、報道陣向けにFacebook広告の仕組みを解説するセッションも実施した。
特に強調されたのは、政治的な広告コンテンツに関する取り組みだ。同氏によると、この1年でFacebookが実施した政治広告ポリシーの変更は、以下の3点があるという。
- 広告主の身元証明……選挙キャンペーン広告・その他の政治広告については、広告主の身元証明を求める。
- 表記……「政治広告(Political Ad)」と表記されるほか「広告主(Sponsored for by)」の名前も広告内に提示される。
- アーカイブ……政治広告を一括で保管し、検索ができるアーカイブを提供する。また、研究者やジャーナリストなどが、その政治広告を検索・分析できるようにするためのAPI(ソフトウェア機能の共有)も今後提供される予定だという。
ロイター通信の報道によると、今後数カ月間に大型選挙が控えている諸国(インド、ナイジェリア、ウクライナ、EU)を対象に、Facebookは政治広告のポリシー運用を厳格化しているという。
日本でも2013年にインターネット上での選挙活動が解禁されたが、依然として有料のインターネット広告は認められていない。その一方で、2019年は4月に統一地方選挙、7月に参議院選挙が予定されており、ネット上の政治広告のあり方にもあらためて注目が集まる可能性が高い。
窮地に立たされたFacebookだが、1月30日に発表した決算では、2018年第4四半期(10-12月期)の売上高は前年同期30%増の169億1400万ドル(1兆8769億円)、純利益は前年同期61%増の68億8000万ドル(約7635億円)。四半期あたりの純利益として過去最高を記録。相次ぐスキャンダルにも関わらず、業績は好調だ。
大型選挙が相次ぐ「選挙イヤー」に、業績だけでなく、ユーザーからの根本的な信頼を回復することができるだろうか?
(文・写真、西山里緒)