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- ジョージ・ソロス氏は、ヨーロッパの右派政党の台頭に気を付けないと、欧州連合(EU)はソビエト連邦のようにすぐにも崩壊する可能性があると指摘した。
- ソロス氏は2月12日(現地時間)のガーディアンへの寄稿で、EUは「気付かないうちに危険な状況へ向かっている」と述べ、ドイツやイタリア、イギリスといった一部の大国の政治に懸念を示した。
- ビリオネアの投資家ソロス氏は、EUに対して前にも似たような警告を発している。だが、同氏は5月の欧州議会議員選挙がEUの未来を脅かすと主張している。
- 「EUを支持する多数派」が結集しないと、「団結したヨーロッパという夢が21世紀の悪夢となりかねない」とソロス氏は言う。
ビリオネアの投資家ジョージ・ソロス氏は、欧州連合(EU)は5月の選挙の前に反EU勢力と戦わなければ、「気付かないうちに危険な状況へと向かい」、ソビエト連邦のように崩壊する可能性があると指摘した。
2月12日、イギリスのガーディアンに掲載された寄稿記事の中でソロス氏は、EU市民はもっとヨーロッパ各地で反EUを掲げる政党が突き付ける脅威に注意を払う必要があると言い、「EU設立に至った価値を守るため」に「EUを支持する眠れる多数派」は目を覚まし、結集しなければならないと述べた。
「そうでなければ」と、ソロス氏は言う。「団結したヨーロッパという夢が21世紀の悪夢となりかねない」
ソロス氏は同じような警告を前にも発している。同氏は2018年5月、EUは「実存的危機」の真っただ中にあり、アメリカのトランプ大統領の影響も手伝って、終焉を迎えるかもしれないと述べた。
しかし、同氏は今回、5月の欧州議会議員選挙を前に、ドイツやイギリス、イタリアといったEUの中でも大国の一部で反EU勢力が台頭、より差し迫った脅威になっていると指摘した。
EU市民は「手遅れになる前に目を覚ます」必要があると、ソロス氏は言う。
「そうでなければ、EUは1991年のソビエト連邦がたどった道を行くことになるだろう」と述べた。
ハンガリー系アメリカ人のソロス氏は、これまで慈善事業に300億ドル(約3兆3000億円)以上を投じ、リベラルな思想を公に支持していることで、右派の標的にされてきた。
寄稿記事の中で同氏は、5月の選挙では、「大半のヨーロッパ各国の旧態依然とした政党システムを含め」いくつかの理由から反EUを掲げる候補者に「競争上の優位性」があると言う。
「時代遅れの政党システムが、EU設立に至った価値を守りたい人々の妨げになる一方で、こうした価値を何か根本的に違うものと取り換えたい人々の助けとなっている」とソロス氏は指摘する。
その上で「わたしたちの大半が、未来を今と同じかそうでもないかで捉えがちだが、必ずしもそうである必要はない」と言う。
ソロス氏は、ドイツの「持続不可能な」連立に触れ、一定の改革がなされないなら、ドイツはEUを離脱すべきだと主張する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭に懸念を示した。
また、2016年に国民投票でEU離脱を決めたイギリスについては、2大政党は「内部分裂している」としつつ、「時代遅れの政党構造が国民の意思の適当な表現を妨げている」と述べた。
ソロス氏はイギリスのEU離脱 —— いわゆるブレグジット —— に反対で、EU残留に向けた計画案を発表した反ブレグジットのグループを支援している。
イタリアについては、ソロス氏はイタリアを含む複数の国に多くの難民が押し寄せた際、EUがその危機対応で「致命的なミス」を犯し、民主党が「混乱」に陥ったことで、EUを支持する市民には「投票する政党がない」と言う。イタリアでは現在、反EUを掲げるポピュリスト政党の「5つ星運動」と「同盟」が連立政権を構成している。
ソロス氏は、EUを支持する政党が「自身の利益よりもヨーロッパの利益を優先させれば」EUを救うことができるだろうと言う。
「EUを根本的に改革するために、EUを守ると主張することはまだできる」とソロス氏は言う。「だが、それにはEU内の方針転換が必要になるだろう」と語った。
(翻訳、編集:山口佳美)