ミレニアルやジェネレーションZは、上の世代に比べてアルコールを飲まない。
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- ノンアルコールのビールやカクテルの売り上げが爆発的に伸びている。
- ミレニアルやジェネレーションZといった若い世代が上の世代に比べてアルコールを飲まないのは、酒に酔って自制心をなくし、その様子をスナップチャットやインスタグラム、フェイスブックでシェアされるのを恐れているせいでもある。
- 警察や行政がソーシャルメディアの監視を強化する中、"常に見られている"という意識がアルコールの売り上げに影響している。
ノンアルコールのビールやカクテルの売り上げが爆発的に伸びている。
アメリカでは過去5年、ビール全般の売り上げがほぼ横ばいである一方、ノンアルコール・ビールの売り上げは平均3.9%増となっている。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。ノンアルコール・ビールはビール業界の中で最も急速に成長しているセグメントだと、ニュースサイトのアクシオス(Axios)は2018年のグローバルデータ(GlobalData)のレポートを引用して報じている。
ノンアルコールのカクテルも好調だ。コカ・コーラは2019年に入って、「Bar None」というコンセプトを立ち上げている。
ノンアルコール飲料の成長には、いくつかの理由がある。ビール大手は、中東諸国といったアルコールが法律上も宗教上も禁じられている地域で売り上げを伸ばそうとしている。
そして、世界中のミレニアルやジェネレーションZの若者たちは、上の世代の若い頃に比べて、アルコールを飲まない。ベレンベルク(Berenberg)の2018年のレポートによると、調査に回答した10代および20代前半の若者たちは、ミレニアルに比べて1人あたり20%以上アルコールを飲まないことが分かった —— ミレニアルは、ベビーブーマーやジェネレーションZよりもアルコールを飲まない世代だ。
消費者のアルコール離れには、いくつかの理由がある。若い世代の健康に対する意識の高さとアルコールよりもマリファナを好む志向もその1つだ。しかし、市場調査会社ミンテル(Mintel)によると、もう1つの理由として、ソーシャルメディアによって"常に見られている"状況の中で、自分のイメージをコントロールしたいと若者が考えていることが挙げられる。
同社のグローバル・フード・アンド・ドリンク、アナリスト、ジョニー・フォーサイス(Jonny Forsyth)氏は「コントロールは今日、アルコールを飲む若者にとって重要な合言葉になっている」と2017年に指摘している。
フォーサイス氏は「これまでの世代と違い、彼らの夜遊びは一生残るであろう写真や動画、ソーシャルメディアへの投稿を通じて記録されている」と言い、「つまり、飲み過ぎは避けるべき多くの事柄の1つ」なのだと続けた。
ソーシャルメディアで"常に見られている"という若い世代の認識は正しい。
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カリフォルニア州にあるメディア・サイコロジー・リサーチ・センター(Media Psychology Research Center)のディレクター、パメラ・ラトリッジ(Pamela Rutledge)氏も2018年、Viceのフードメディア『Munchies』で同様のコメントをしている。
「ソーシャルメディアが生まれる前は、恥ずかしい行動は噂話にはなっても、見える形で記録されることはなかった。つまり自身の恥ずかしい行動にさほど真剣に向き合う必要はなかった」とラトリッジ氏は言う。
同氏は「ソーシャルメディアが人々の行動のアカウンタビリティーを高めた」と言い、「一時的というより永続的なソーシャルメディアで、人々は自身の公的なイメージをコントロールしたいと考えている。恥ずかしい瞬間はもはや貴重な瞬間ではなく、それが投稿されれば、被るダメージをコントロールできないまま、あらゆる人たちに見られるということだ」と続けた。
言い換えれば、若い世代のアルコール離れは、彼らが当たり前のこととして受け入れているソーシャルメディアで"常に見られている"という認識のおかげでもある。
フリーランスのライター、マヤ・コソフ(Maya Kosoff)氏は、「インターネットとともに育ってきたわたしたちは、ネットに上げたものは基本的に永続的で、誰かに見られることは避けられないと分かっている」とワシントン・ポストで書いている。コソフ氏は「わたしたちはそれを習得し、いつか誰かにどこかでジャッジされるかもしれないという認識の下で、自分の行動やイメージを作り上げている」とも述べている。
そして、ソーシャルメディアで"常に見られている"という若い世代の認識は正しい。
プロパブリカ・イリノイ(ProPublica)とWBEZシカゴ(WBEZ Chicago)は先週、シカゴ警察が公立学校と協力し、生徒のギャング関連の行動の可能性を調査、分析するシステムを運用していると報じた。
また、アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union: ACLU)も、ボストン警察がイスラム教徒を含む特定の集団を不当に狙ったソーシャルメディアのモニタリング・プログラムを使っていると批判した。
そして、中国ではそれぞれの行動に基づいて市民を格付けする「社会信用システム」でソーシャルメディアが重要な役割を果たしそうだ。
(翻訳、編集:山口佳美)