国内ホテル24万室で稼働する「レンタルスマホ」、hi Japanがオンライン旅行事業に参入

handy

国内ホテル24万室に設置されている「handy」。

hi Japanは2月19日、「社名変更に伴う事業戦略に関する記者発表会」を開催。handy Japanからhi Japanへの社名変更とあわせて、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)事業への参入について2月1日に代表取締役に就任したピーター・リー氏より説明が行われた。

ピーター・リー氏

2月1日よりhi Japan 代表取締役社長に就任したピーター・リー氏。

発表会でリー氏は、これまでの同社の取り組みについて解説。ホテルなどの宿泊施設向けに、宿泊客が自由に使えるモバイル回線付きのレンタル型スマートフォン「handy」を提供してきたが、グローバルでは82カ国、約1000都市で展開。約4900のホテルで60万室にhandyが設置されており、「約2億人にリーチできる」(リー氏)という。また日本では約1700のホテルに採用されており、客室数は24万室規模になっている。「東京のホテルでは約60%の客室に採用されており、8700万人にリーチ可能」(リー氏)としている。

ホテル展開状況(グローバル)

世界82カ国でサービスを展開中。

ホテル展開状況(日本)

国内では約1700のホテルに導入されている。

また具体的な比率は明言されなかったが、handyの新モデルも順次入れ替えが進んでいるという。2018年7月に発表したソフトバンクとの提携により、使用している回線も新モデルからソフトバンクへの切り替えが進み、旧モデルは下りで約1〜5Mbpsだった回線速度は、10Mbpsを超える品質で提供できるようになってきている。

handyの新モデル

「handy」の新モデル。順次入れ替えが進んでいる。

さらにhandyと合体させて使用する「handy スマートドック」も販売を開始した。

ホテル室内の電話機として使えるだけでなく、Amazon Alexa対応でスマートスピーカーとしても利用できるというものだ。handyは基本的にリース品だが、handy スマートドックは販売形式で1台3万円程度でホテルが購入して設置する形になる。

handy スマートドック

スマートスピーカーにもなる「handy スマートドック」。

発表会にはザ・キャピトルホテル東急の総支配人 末吉孝弘氏も登壇。ザ・キャピトルホテル東急は国内で2番目にhandyを導入したホテルだ。同ホテルは外国人の宿泊客が約70%と多く、その半分が欧米、半分がアジア圏からの旅行者という比率だと説明する。

末吉氏はhandyの利用状況について、「日本人宿泊客の利用率は低いものの、海外からの宿泊客は50%から70%は手に取って使っている」と、インバウンド向けには一定の需要があると話した。特にビジネス客には、通話が無料で使えることで人気がある。

 末吉孝弘氏

ザ・キャピトルホテル東急 総支配人 末吉孝弘氏。

このように「旅ナカのスマートフォンレンタル事業」として一定の成果を上げたhi Japan(旧handy japan)。次に狙うのは「旅マエ〜旅ナカ〜旅アト」と旅行に関する入り口から出口まですべてを扱うことだ。

つまり旅行先の提案から移動、ホテル予約の段階から旅行者と接し、旅行が終わった後のSNSなどでの拡散までを担う、旅の総合プラットホーム事業ということになる。hiという社名変更は、handyという旅ナカのスマートフォンレンタル事業からの拡大を意味しているわけだ。

2019年2Qから旅の総合プラットホーム事業を開始

具体的なスケジュールとしては、2019年第2四半期にオンライン・トラベル・エージェント(OTA)のサービスをスタートする。OTAにはExpediaなどすでに世界で高いシェアを持つ先行サービスがあるが、リー氏は「OTAの売上高は旅行業界の5%にも満たない。それだけ伸びる余地はある」とし、同業他社に対する強みについては「プラットホームだけでなく、handyというハードウェアを持っており、handyを通して旅行者の嗜好などデータを集めることができる」点を挙げた。

発表会では具体的なサービス内容の紹介はなかったが、今後はホテルでレンタルされているスマートフォンだけでなく、アプリなどを使って自分のスマートフォンでもチェックインやスマートキーといった機能が利用できるようにすることも検討している。

現状ではホテルに着いてhandyを使うところがファーストコンタクトになるため、旅マエから同社のサービスをいかに使ってもらえるかが普及のポイントとなる。

スマートキー

handyをスマートキーとしても活用

旅行の手配などがめんどうなので「旅マエ〜旅ナカ〜旅アト」まで一気通貫で提供してくれるプラットホームを求める層も一定数存在するのは確かではある。

しかし日本交通公社の旅行年報2018によると、旅行の阻害要因のトップ3は「仕事などで休暇がとれない」、「家族、友人等と休日が重ならない」、「家計の制約がある」となっている。休暇日数と金銭的な問題で多くを占めており、手配のめんどうさは旅行阻害の大きな要因にはなっていない。

総合プラットホームは旅行好きには便利だが、いままで旅行をしてこなかった層を掘り起こすきっかけとしてはやや訴求力が弱い印象もある。

日本はインバウンドの市場としての魅力はあるものの、少子高齢化でアウトバウンド市場としては厳しくなっている。handyも海外からの利用率が高いことから、hiが目指す総合プラットホームも、同じくインバウンドをメインにしていくことになりそうだ。

(文、撮影・中山智)

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