BBCのインタビューに応じたシャミマ・ベガムさん(2019年2月18日)。最近出産した子どもとともに、イギリスへ帰りたいと話した。
BBC News/YouTube
- 過激派組織「イスラミックステート(IS)」に参加するため、ロンドンを去ったシャミマ・ベガムさん(19歳)は、イギリスへ帰りたいと訴えていた。
- イギリス政府は、シャミマさんを国の安全保障上の脅威だとし、2月19日(現地時間)には、彼女の市民権をはく奪すると家族に伝えた。
- シャミマさんは、自分は別の国の国民ではないと話していて、市民権のはく奪はシャミマさんを事実上の無国籍状態にする可能性がある。
- ガーディアンによると、イギリス内務省はシャミマさんの両親に対し、親がバングラデシュ出身なのだから、娘もそこで市民権を申請できるだろうと伝えたという。
- しかしシャミマさんの親も近親者も、彼女がこれまでバングラデシュに行ったことは一度もないと話している。
イギリス政府は、過激派組織「IS」に参加するため、ロンドン東部の自宅を後にしたシャミマ・ベガムさんの市民権をはく奪した —— これによって、シャミマさんは一度も行ったことがないと言うバングラデシュに送られる可能性がある。
シャミマさんがロンドン東部のベスナル・グリーンにある自宅を後にしたのは2015年。ISの支配地域の中心、シリアのラッカへ向かった。彼女はそこでオランダ出身のISの戦闘員と結婚している。
しかしISが崩壊し、19歳になったシャミマさんは難民キャンプへ逃れ、イギリス政府に対し、2月16日に生まれた息子と自分を帰国させてほしいと訴えた。
これに対し、イギリス政府は19日、シャミマさんの市民権をはく奪するとした。代わりに両親の出身地バングラデシュに照会してみたらどうかと伝えたと報じられている。
2015年、ISに参加するため、ロンドン東部のベスナル・グリーンを後にしたシャミマさん。
London Metropolitan Police
イギリス内務省は19日、シャミマさんの市民権をはく奪すると、彼女の両親に書簡で伝えた。
ITVニュースが入手し、報じたこの書簡では、イギリス政府は「シャミマ・ベガムのイギリスの市民権をはく奪する」ことに決めたと本人に伝えるよう、母親に求めている。
その後、シャミマさんもメッセージを受け取ったと認めた。
シャミマさんはどこへ行くのか?
内務省は国籍法の下、「イギリスの重大な利益に深刻な悪影響を及ぼす」行動を取ったとみなされる人物の市民権をはく奪することが認められている。
イギリス政府は、シャミマさんが国の安全保障上の脅威になり得ると主張している。ただ、シャミマさんは、自分が危険をもたらすことはないとしている。
「(イギリスに)帰国して、ISなどに参加するよう誘うつもりはない」
シャミマさんは18日、ITVニュースに語った。
「わたしが何かを勧めるとすれば、行かないこと。彼らの動画で見るのとは違うこともあるから」
それでも、シャミマさんはテロリスト集団に参加したことを後悔してはいないと言う。
シリアのバグズ近郊で座り込む女性たち(2019年2月12日)。バグズは、ISの最後のとりでだと考えられている。
Rodi Said/Reuters
ガーディアンの報道によると、イギリスのサジド・ジャヴィド内務大臣はシャミマさんの両親への書簡の中で、親がバングラデシュ出身なのだから娘にもバングラデシュで市民権を申請する資格があるだろうと述べている。
しかし、シャミマさんはBBCに対し、自分はバングラデシュのパスポートも持っていないし、今まで一度も行ったことがないと語った。
テレグラフによると、ベガム家の代理人タスニム・アクンジー弁護士は、シャミマさんは二重国籍を取得していないと話している。
「胸が張り裂けそう」
バグズ近郊に立つシリア民主軍のメンバー(2019年2月11日)。ここ2、3週間で数千人が村を後にしたという。
Rodi Said/Reuters
シャミマさんは内務省からの書簡について、「読むと胸が張り裂けそう」で「受け入れがたい」と話している。
彼女はITVニュースに対し、「読むと胸が張り裂けそう。バグズで家族と話したとき、わたしがイギリスに帰るのはもっと簡単なことのように聞かされていた。受け入れがたい」と語った。
その上で「何と言っていいか分からない」と言い、「そこまでじゃないけど、ちょっとショックだった。腹立たしいし、イライラする。わたしとわたしの息子に対して、不当だと思う」と加えた。
アクンジー弁護士は19日、声明文の中で、シャミマさんの家族は内務省の決定に「落胆した」と言い、「この決定に異議を申し立てるあらゆる法的手段を検討している」と述べた。
アクンジー氏はテレビ番組『Good Morning Britain』で、イギリス政府にはシャミマさんの子どもをイギリスに帰国させる「道徳的な」義務があると語っている。同氏は「罪のない子どもがいる。彼女の赤ちゃんだ。あの子を安全に帰国させることは、全ての道徳的な国が果たすべき義務だ」と述べた。
アメリカが支援するクルド人勢力の爆撃にISがもがき苦しむ中、ここ2、3週間で数千人がバグズ、そしてISそのものを見捨てている。
(翻訳、編集:山口佳美)