楽天と中国EC大手の京東集団(JD.com)は2月21日、ドローンとUGV(無人走行車両)による無人配送ソリューションでの提携を記者発表した。
京東が中国での配送にすでに運用しているドローンとUGVを、楽天が日本で活用していく。
記者会見に出席した楽天の安藤公二常務執行役員(左から2人目)と京東集団の肖軍副総裁(同3人目)
京東のドローンは最大積載量5キロ、最長飛行距離16キロ、最大飛行時間は40分で、本格的な物流ニーズに対応できる。
楽天は離島での船の発着時間に左右されないような配送、山間地域の輸送コスト削減などをドローン配送で実現したいという。
また、無人配送車は最大積載量50キロ、最大走行速度は時速15キロ。楽天は、「専用アプリから注文を受けると、スタッフが荷物を積んで配送先を指定する。到着するとピンコードを入力し、ドアを開けて荷物を受け取る」という使い方を想定している。
京東はEC事業に必要な物流網を自社構築しているのが大きな特徴で、無人倉庫やロボットによる仕分けなど、最新技術を活用した物流効率化に巨大な投資を行ってきた。
国土が広い中国では、交通網の発達していない地域も多く、EC市場とともに配送需要が拡大する中で、「(目的地への)最後の1マイル」配送が長らく課題だった。京東は農村や辺境地域への配達の解決策として、2015年12月にドローン事業プロジェクトを始動。地方政府などと提携し、ドローン配送実績を積み上げている。また、京東の無人配送車は一部都市の大学キャンパスなどで運用されている。
京東が中国で蓄積した経験を日本で活用
ドローン配送は、離島や山間地域での運用を想定する。
一方、楽天もドローン配送の実証実験を繰り返してきた。2016年春、千葉県のゴルフ場で、日本初のドローン配送サービスを一般に提供。2017年には福島県南相馬市で、ローソンとドローン配送サービスを共同実施した。
今回、京東と提携した理由について、楽天の安藤公二常務執行役員は、「京東は自社のドローンとUGVを持ち、実際の運用経験も豊富。楽天は日本での運用経験と、ドローン専用のショッピングアプリを持っており、両社の提携で、さなざまな展開が期待できる」と説明した。
また、京東集団の肖軍(しょう・ぐん)副総裁兼X事業部総裁は、「当社はすでに中国で多くのイノベーションを実現し、配送需要に応えてきた。自社の技術や商品を世界のより多くの国に広げたい。楽天とは事業内容が似ており、自国で影響力のあるEC事業者という点も同じだ。お互いの強みや資源を生かせると期待している」と述べた。
記者会見では、無人配送車のデモンストレーションも行われた。
安藤常務執行役員は今後の展開について、「UGVは日本では公道を走れないので、しばらくは私有地などの特定エリアで経験を積み、将来的には家への配送を目指す。ドローンも現状は運用の制限が多いが、地元の自治体と連携しながら、年内に具体的な利用例を案内したい」と述べた。
楽天のこれまでの実証実験はエリアや期間を限定したものだったが、今年はオペレーションスタッフ育成や送料の設計など、定期運航を視野に体制構築を進める計画だ。
(写真・文、浦上早苗)