ソニーモバイルの新しいハイエンドモデルの名称は「Xperia 1」。
出典:ソニーモバイル
- ソニーモバイルは同社製スマホ「Xperia」のラインナップを更新
- ハイエンドの「Xperia 1」は超縦長の4K有機ELおよびトリプルレンズカメラを搭載
- Xperia 1は日本でも2019年夏発売予定だが、価格はかなり高価になるのではないと予想される
ソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、ソニーモバイル)は2月25日、スペイン・バルセロナで開催中のモバイル業界最大の展示会「MWC19 Barcelona」において、同社のフラッグシップ機「Xperia 1」などを発表した。
Xperia 1の発売は2019年初夏以降となっており、同社のリリースによると「日本を含む国・地域にて導入」となっている。
スマートフォンの2018年出荷台数シェア。ソニーモバイルは国内第3位となった。
出典:MM総研「2018年国内携帯電話端末出荷概況」
MM総研が2月7日に発表した国内携帯電話端末出荷概況によると、ソニーモバイルのスマートフォンの出荷台数は2018年で国内3位のシェアとなる約299万5000台で、前年比30.6%減。
さらに、ソニーが2月1日に発表した2018年度第3四半期連結業績でも、日本・ヨーロッパ・東アジアと全域でスマートフォンの売り上げが落ちている状況が続いていることが明らかになっている。
今回の新型Xperiaの発表は、ソニーのモバイル部門の「起死回生」の1つの手段となるのか、期待と不安が入り交じったものだったわけだ。
ソニーの「一番の」技術を1台に凝縮
現在販売されているXperiaの最上位機種と呼ばれるモデルのスペックを比較。
作成:Business Insider Japan
そんな周囲の思惑に合わせるように、ソニーモバイルはXperiaシリーズのラインアップを大幅に更新。フラッグシップモデルを従来の「XZシリーズ」から「1シリーズ」に変更した。
Xperia 1は、まさにソニーらしさの塊のようなスマートフォンに仕上がっている。
Xperia 1の有機ELディスプレーは、同社によると「スマートフォンとしては、世界初の4K有機ELディスプレー搭載」。
出典:ソニーモバイル
ディスプレーには縦横比21対9の4K解像度(3840×1644ドット)有機ELを搭載。「CinemaWide(シネマワイド)」という呼び名のとおり、映画館のスクリーンと近いため、さまざまな映像コンテンツをより魅力的に楽しめるとしている。
Xperia 1のクリエイターモードが適用されるサービスの例として、会場ではネットフリックスが挙げられたが、ソニーがBRABIAで取り組んでいる「Netflix画質モード」とは異なる方式である点は注意。
出典:ソニーモバイル
ディスプレーはソニーのテレビブランド「BRAVIA(ブラビア)」の技術を利用しているが、新しい色モードである「クリエイターモード」では、同社の放送・業務用モニター技術を採用。映画やテレビ番組などの撮影現場で使われているモニターの色に寄せることで、より映像クリエイターが実現したい色を再現し、豊かな映像体験が可能になるという。
トリプルレンズカメラを搭載するXperia 1。
出典:ソニーモバイル
また、Xperia史上初の要素としては、背面カメラをトリプルレンズ構成としている点が挙げられる。
Xperia 1の背面トリプルカメラは本体上側から、通常時に使えるF1.6の明るいレンズ、ポートレートや光学2倍ズーム時に使う望遠レンズ、風景などを撮る時に使える超広角レンズの構成となっている。
ソニーが同社のデジタル一眼カメラ「α(アルファ)」の一部機種で搭載する「瞳AF」を、スマートフォンとして世界で初めて搭載する。
Xperiaシリーズでは、2018年4月に発表された「Xperia XZ2 Premium」でデュアルレンズ構成を採用したが、XZ2 Premiumは一方がカラー、もう一方がモノクロセンサーで、2つのセンサーの撮影結果を合成し、暗所でもノイズの少ない撮影が可能としていた。
しかし、Xperia 1のトリプルレンズカメラはそれぞれが1200万画素のカラーセンサーで、撮影するシーンに応じて使い分ける方式をとっている。そのため、XZ2 Premiumで初搭載となった画像処理プロセッサー「AUBE(オーブ)」は、Xperia 1では非搭載となっている。
不安要素はやはり「価格」
Xperiaのラインアップ。情報は2019年2月25日時点のもの。
作成:Business Insider Japan
このように、スマートフォンとしては世界初の4K有機EL搭載、トリプルレンズカメラ搭載など、他社のハイエンドスマートフォンのスペックに勝るとも劣らない特徴をもつXperia 1だが、気になるのは価格だ。
ソニーモバイル広報は、Xperia 1の価格について「現時点で未定」としている。ただ、前述のXperia XZ2 Premiumは4K液晶かつデュアルレンズ搭載で、日本ではNTTドコモの場合、約11万3000円とかなり高価な本体価格設定となっており、Xperia 1もスペックからそれに近い価格になるのではないかと予想される。
しかし、Xperiaの国内での売れ筋は10万円以上するPremiumモデルではなく、それ以下のハイエンド機またはコンパクト機、またはそれらの型落ち品だ。
ただでさえ、分離プランによる携帯料金値下げの動きの中、端末自体の割引の減少が危惧される中、仮にXperia 1の国内モデルが10万円以上する場合、その高価な価格設定が一般ユーザーに受け入れられるとはあまり考えにくい。
新型ミドルレンジは、現時点で日本展開なし
ミドルレンジモデルの新型となる「Xperia 10」。
出典:ソニーモバイル
そうなってくると、期待したくなるのはミドルレンジモデルの投入だ。ソニーモバイルはXperia 1と同時に、「Xperia 10」「Xperia 10 Plus」という2機種のミドルレンジモデルを発表している。
Xperia 10/10 PlusはXperia 1のように4K解像度の有機ELなどは搭載していないが、同じく21対9の液晶、デュアルレンズ構成で約1300万画素のメインセンサーと500万画素の深度センサーの背面カメラを搭載。
画面サイズが6インチのXperia 10は349ユーロ(約4万4000円)、6.5インチの10 Plusは429ユーロ(約5万4000円)とXperia 10と比べて抑えめの価格設定となっている。
防水防じん性能がない、画面解像度が低いなど全体のスペックがやや抑えめのXperia 10。
出典:ソニーモバイル
しかし、Xperia 10シリーズの実質従来機とも言えるXperia XAシリーズは一度も日本では発売したことはなく、実際今回もソニーモバイル広報はXperia 10/10 Plusの発売予定について「現時点では、ヨーロッパなど一部地域限定」としている。
冒頭のような厳しい状況下で、ハイエンドモデルだけの状態で日本市場でのシェア奪還は狙えるのか。ソニーモバイルやその新製品を取り扱うだろう通信キャリアの戦略に期待したい。
(文・小林優多郎)