KCNA via REUTERS
- ベトナムのハノイで開催される2回目の米朝首脳会談に出席するため、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は2日半をかけて列車で移動している。
- これほど時間のかかる移動手段を使った理由について、専門家は北朝鮮が中国に過度に依存しているわけではないことを示そうとしているのかもしれないと指摘する。
- シンガポールで開催された初めての米朝首脳会談では、金正恩委員長が中国の航空機を使用したことで、北朝鮮には自らの力で飛行機を飛ばす能力がないと指摘されていた。
- こうした見方は、金正恩委員長にとって受け入れがたいものだったようだ。
2月27日、28日にベトナムのハノイで開催される2回目の米朝首脳会談に出席するため、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は2000マイル(約3200キロメートル)、2日半の列車の旅を選んだ —— これは中国に飛行機を借りたくなかった金正恩委員長の面目を保つための選択だったようだ。
金委員長は23日、平壌の駅から専用列車に乗車。首脳会談の前日(26日)にハノイに到着する予定だ。
AP通信は、金委員長の乗った専用列車が23日夜、北朝鮮と国境を接する中国遼寧省丹東市に入ったと報じている。中国南東部を通ってハノイを目指すようだ。
専用列車は25日に湖南省衡陽市を通過したと、韓国の聯合ニュースは伝えている。
平壌からハノイまでの大まかなルート。その距離は約2000マイル(約3200キロメートル)だ。
Google Maps/INSIDER
INSIDERの計算によると、平壌からハノイまでの距離は少なくとも2000マイルはある。
移動の詳細は明らかになっていないが、ベトナム当局の話として、ニューヨーク・タイムズは24日(現地時間)、金委員長は中国とベトナムの国境で専用列車を降り、ハノイまで車で移動すると報じた。車での距離距離は少なくとも105マイル(約170キロメートル)だという。
2日半に及ぶ骨の折れる列車の旅で金委員長は、間違いなく中国の都市と田舎の素晴らしい景色を堪能できるだろう。だが、専門家は列車移動の理由を観光というよりプライドの問題だろうと指摘している。
2018年3月、北京で撮影された金委員長の専用列車。
Jason Lee
金委員長は2018年、シンガポールで開催された初めての米朝首脳会談に出席するため、中国政府から中国国際航空のボーイング747をチャーターした。
北朝鮮が持っている、40年前にソ連で作られたイリューシン62(IL-62)を使うのは危ないと判断されたためだ。
2018年6月、中国国際航空の飛行機でシンガポールのチャンギ国際空港に到着した金正恩委員長。
Ministry of Communications and Information of Singapore via AP
金委員長が中国の飛行機を使用したことは、北朝鮮がいかに中国に依存しているかを示しているかのようだった。
そして、金委員長はこうした見方を嫌がったと、中国人民大学の北朝鮮の専門家Cheng Xiaohe氏はニューヨーク・タイムズに語った。
「シンガポールの空港でやったように、彼は中国の国旗が描かれた中国の飛行機の前で手を振って、中国への強い依存を世界に見せたくなかったのだ」と、Cheng氏は指摘した。
「列車での移動は、迫られた選択だ」
会談後、どういった手段で北朝鮮に戻るかは明らかになっていない。
ハノイにある韓国料理店に掲げられたバナーは、金委員長とトランプ大統領を歓迎している。2回目の米朝首脳会談は27日、28日に行われる予定だ。
Reuters/Kham
アメリカのトランプ大統領は今回の首脳会談について、2018年の1回目の会談のフォローアップだと位置づけている。初めての米朝首脳会談では、金委員長が非核化に向けた曖昧な約束をした。この点について、北朝鮮側にほとんど進捗は見られない。
アメリカの情報機関や北朝鮮の専門家たちは、北朝鮮が核兵器を手放すことはないだろうと警告した。1月に情報機関が公表した報告書は、北朝鮮の指導者は核兵器を「体制の存続に欠かせない」ものだと見なしていると指摘している。
トランプ大統領は繰り返し、北朝鮮問題の新たな進展に向けた望みを引き下げていて、24日に開催されたガバナーズ・ボール(Governors' Ball)では、北朝鮮の非核化は「急がない」と述べた。
「わたしは急いでいない。誰も急がせたくない」と、トランプ大統領は言った。「実験が嫌なだけだ。実験が行われない限り、我々は満足だ」
その上で、トランプ大統領は、北朝鮮に対する制裁は当分続くだろうと付け加えた。中国は数カ月にわたって、北朝鮮に対する制裁を緩和するよう国連に求めている。
(翻訳、編集:山口佳美)